第三百四十話 空と黒騎士④
「これは……人間、ですか?」
「どうみても人間の男。それも老人ねぇ」
と、言ってくるのは時雨と氷菓である。
彼女達の言う通り、目の前で倒れているのはどうみても怪人ではない。
「く、空……これってその、どういうこと?」
と、言ってくる胡桃。
けれど、空だってそれは正直わからない。
故に空は予想の範囲内で、彼女へと言う。
「わからない。完全に人間の形をした怪人……という解釈もできるけど」
「けど、なによ?」
「僕の直感なんだけど、雰囲気からして人間としか思えないんだよね」
だが、そうなるとおかしな点がある。
この老人の身体能力は、どう考えても異常だ。
なんせ、怪人を超える勢いのものだったのだから。
異能で身体能力を強化していた。
とも考えることは、もちろんできる。
しかし。
(この人が人間だとしたら、あの分身能力が異能に違いない。となると、身体能力を強化する異能を持っていたとは考えにくいんだよね……つまり)
この老人の身体能力は素ということになる。
素でレベル3に匹敵するほどの身体能力を持っている人間。
そんなの居るわけがない。
(ダメだ、考えても考えても思考がループするだけで、答えが――)
「うぅ……っ」
と、空の思考遮り聞こえてくる声。
件の老人が目覚めたのだ。




