第三百三十四話 空と怪人島攻略②
「ちょっと、空! 今ので怪人何体目よ!?」
と、怪人を倒した傍から言ってくるのは胡桃である。
空はそんな彼女へと言う。
「えっと、十二体目かな? すごい量だよね!」
「あぁもう! なんで空ってば、そんなに余裕そうな顔なのよ!」
「え、でも胡桃もまだまだ余裕でしょ? それに、僕は怪人を倒せば倒すほど、レベルが上げられるっていうメリットもあるし……それにさ」
「それになによ? まさか『怪人を倒す度に人々の為になってるのが実感できてうれしい』とか、テンプレートなこと言うんじゃないでしょうね!」
「…………」
「…………」
「お二人とも……見つめ合っているところ悪いのですが、まだまだ余裕のようでしたら先に進みたいのですが」
と、会話に混ざって来るのは時雨である。
見れば時雨と、その傍にいる氷菓もまだまだ余裕そうである。
(でも、こんな短期間にこうまで怪人が出てくるって、少し不安だな)
これはもちろん、空達のことではない。
他のヒーロー達のことだ。
(驕るわけじゃないけど、この班の戦闘能力はどう考えても他のチームより上。だからこそ、こうまで怪人を圧倒できていると考えられる)
では、他のチームは?
レベルもなし。
勇者ブーストもなし。
常人を逸した異能力者もいない。
(この量の怪人は、ヒーロー協会も想定外なんじゃないかな?)
偶然、空達のチームの方に怪人が集中していることも、十分あり得る。
なんせ。
「疲れてはいないけど、足が痛くなってきたわ!」
胡桃が結構デカい声で定期的に騒ぐからである。
けれど、むしろこれはいいことだ。
(怪人がこっちに集中してくれれば、他のヒーローの負担が減るからね。まぁなんにせよ、今は他のチームのことを信じて、自分達の役割を果たすしかないか)
空はそんな事を考えつつ。
「拳技 《穿》!」
真下の地面へ向け、技能を放つのだった。




