第三百三十三話 空と怪人島攻略
時は役割分担から数十分後。
現在、空達は作戦通り島の奥地へ向け歩みを進めていた。
「氷菓さん、十一時の方向に太めの木が三本並んでるのわかりますか? あの左端に怪人が一体隠れてます。多分、待ち伏せしてる気で油断してると思うんで――」
「デカいのを頭上から一撃……でいいかしらぁ?」
と、件の木の方へ手を掲げながら言ってくる氷菓。
空がそんな彼女に頷いた直後。
電柱の二倍ほどある巨大な氷柱が、先に指示した位置へと突き刺さる。
同時。
「gyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyっ!」
聞こえてくるのは怪人の奇声。
けれど、怪人は絶命していなかった。
攻撃されたことで、一気に頭にきたに違いない。
怪人は氷菓の攻撃で身体をおおよそ半分抉られているにもかかわらず、空達への方へと突進してくる。
「胡桃!」
「わかってるんだから! 防いでよね、《イージス》!」
と、胡桃の言葉と共に空達の周囲に張られたのは不可視の盾。
そして、突進してきた怪人は無様にもそれに真正面からぶち当たり、露骨に怯む。
となれば、あとは――。
「ナイスです、梓さん……では、次はわたしが」
と、最強と称される異能 《プロヴィデンス》を発動する時雨。
次の瞬間。
現れた光の粒子が、怪人を繭のように包み込み、一気に収縮する。
「不意打ちから受けた致命傷。盾で防がれて出てきた隙……そこにわたしの異能を叩き込まれては、さすがの怪人もこの程度ですか」
時雨の言う通りである。
異能 《プロヴィデンス》が解除された後――怪人が居た場所には、もはやその肉片すらも残っていなかったのだった。




