第三百三十章 空と怪人島への道中②
「梓胡桃、あれ大丈夫なのかしらぁ?」
「同感ですね……あのまま戦わせるのは危険な気がします」
と、予想通りのことを言ってくるのは氷菓と時雨である。
特に後者、ヒーローコスフル装備の時雨は空へと更に言葉を続けてくる。
「梓さん自身も危険ですし、それをフォローするわたし達にも危険が及ぶ可能性があります……どうしますか?」
「どうするって?」
「不本意ですが、わたし達の役割を違うチームに代わってもらうか……ということです」
「それは――」
「それはそうですよ。他のチームにも迷惑がかかりますが、この場合は仕方ないです。ですけど、その程度の迷惑で梓さんとわたし達の安全が――」
「違うよ、僕が言いたのはそういうことじゃない」
「?」
と、首を傾げている時雨。
空はチラっと胡桃を見たのち、時雨へと言う。
「胡桃なら大丈夫だよ。きっと、島に上陸する頃には気合いで持ち直すよ」
「兄さん……根拠がまったく感じられないのですが」
「根拠か、えっと」
胡桃はいざって時は、なんだかんだで頑張る女の子だ。
怪人と初めて戦った時も、震える身体で空をサポートしてくれた。
(とか言っても、時雨は納得しないだろうな)
となれば、ややずるいがすることは一つ。
空は時雨の頭を撫でながら言う。
「僕を信じて欲しい、胡桃なら絶対に大丈夫」
「に、兄さん……」
と、何やらもじもじし始める時雨。
メット越しとはいえ、なでなでの効果は絶大に違いない。
あとは氷菓に納得してもらうだけ――。
「空、はい」
と、噂をすればとばかりに聞こえてくるのは氷菓の声である。
見れば、彼女は空の方へと頭を差し出している。
「えっと……」
「どうしたのかしらぁ? 私のことも撫でなさいな、ほら」
と、何とも偉そうな氷菓。
空はここまで偉そうに、頭を撫でろと言ってくる女性を見たことがない。
(でもまぁ、よくわからないけど、それで氷菓さんが納得してくれるならいいか)
空は一人そう考え、氷菓の頭をなでなでする。
それと同時。
島への上陸がもうすぐ始まるというアラーム。
それが揚陸艇内に鳴り響くのだった。




