第三百二十九話 空と怪人島への道中
時は特殊任務実行日、場所は揚陸艇。
現在、天使班は絶賛島へと向かっていた。
「う……ぅう」
と、揚陸艇の隅っこで蹲っているのは胡桃である。
空はそんな彼女の背中をさすりながら、なるべく優しい声をかける。
「大丈夫? あんまり吐きそうなら、いっそ吐いちゃった方が楽になるよ?」
「あ、あんたバカじゃないの!? は、吐けるわけないでしょ! あたしは女の子なのよ!? それがこんな……うぷっ」
「あぁほら、急に騒ぐから」
「うぅ……どうして、このあたしがこんな目に」
「よしよし、船酔いってきついよね。わかるよ、僕も小さい頃になったから」
と、空は続けて胡桃の背をさすりながら、とあることを考える。
それは。
(《断空》で吐き気って収まるのかな? どうなんだろう……でも、不用意に使って変な後遺症でたら嫌だし、使わない方がいいよね)
むしろ、この場合は回復魔法が有効に違いない。
こういう時に、リーシャが居ればどんなにいいことか。
「空、ちょっとこっちにきなさぁい」
と、空の方へ手招きしているのは氷菓である。
よく見れば、時雨も並んで小さく手招きしている。
(この状況、言いたいことはわかるけど……まぁ、胡桃の代わりに答えておいたほうがいいよね)
空はそんなことを考えながら、二人の方へと歩いて行くのだった。




