第三百二十八話 怪人の姫君②
「……やめて」
と、怪人二人の前に現れたのは声からもわかる通り、間違いなく少女である。
しかし、外見からは少女であることはわからない。
理由は簡単である。
少女の身体は、顔を含め黒い騎士甲冑で覆われているのだ――その騎士甲冑は所々赤い血管がはしっているのと、時折脈を打っていることから生きていることが分かる。
さて、そんな少女に二人の怪人はというと。
「ノイン様……あ~、こいつが悪いんですよ」
「の、ののの、ノイン様……お、お、俺は悪いことしてない……こ、こいつの方が悪い」
と、ノインと呼ばれた少女。
二人の怪人はノインに、彼女の悪口を言ったのがバレたと理解したに違いない。
彼等は互いに罪を擦り付け始める。
一方、それを見ていたノインはというと。
呆れきったため息一つ、怪人たちへと言う。
「あんた達の役割……なに?」
「ここの防衛です」
「て、敵が来たらここを、まま、ま、守るの仕事」
と、そんな怪人の言葉を聞いてノインは一度だけ頷く。
そして。
「私の人選ミス……あんた達じゃ、有事の際に防衛できない」
その直後。
怪人たちが何かを言う前にそれは起きた。
「《グングニル》……」
ノインがそう言ったのとほぼ同時。
二人の怪人が串刺しになり、瞬時に絶命したのだ――地面から生える不可視の槍によって。
ノインはそんな様子を見ながら、誰にともなく言うのだった。
「掃除……しないと」




