第三百二十四話 空と断空③
『少し離れて様子を窺おう。あれがもし、シャーリィへの怒りを忘れた『普通のゴブリン』なら、わざわざ離れている僕らまで攻撃してこないはずだ』
と、空が言ってから時は数分後。
結論から言うと。
「クー! ゴブリンがどっかいった!」
シャーリィの言う通りである。
と言うことは、同時にわかったことが一つ。
「クウ様、やはり《断空》の能力は悪心を斬るということでよいのでしょうか?」
と、ひょこりと首を傾げているリーシャ。
空はそんな彼女へと言う。
「そういう力もあると思うけど、まだ断定はできないかな」
「あの……申し訳ありません、つまりどういうことでしょうか?」
「確かに心も斬れるみたいだけど、他にも斬れるものがあるかもっていうこと。心――というか、今僕はゴブリンの『怒りの感情』斬ったのはわかるよね?」
「はい。だから、ゴブリンはあぁしてどこかに行ってしまったんですよね?」
「そう。感情は斬れないものだから斬れた……そう考えると、他にも斬れないものはたくさんある――例えば記憶とか」
「!」
どうやらリーシャも気が付いたに違いない。
剣技《断空》は『剣で斬れないものを斬れる』という技能。
仮に、剣で干渉できない全てを斬ることができるとしたら?
当然、技能なので空の力量次第なのだろうが。
値段相応どころか、値段以上の買い物である。
(考えようによっては、この技能は僕が持っている技能の中で最強なんじゃないかな)
なんにせよ、これで技能の取得とその試しは終わった。
あとは特殊任務を無事にこなすだけである。




