第三百二十三話 空と断空②
「剣技 《断空》!」
技は確実にゴブリンに当たった。
さぁ、結果は。
空ははやる気持ちを抑えつつ、ゆっくりと後ろを振り返る。
するとそこに居たのは。
無傷のゴブリンだ。
しかし、そのゴブリンは先ほどまでと挙動が違った。
「……? ……?」
と、ゴブリンは『自分が何をしていたのかわからない』といった様子なのだ。
まるで行動の源であった『怒り』が消えてしまったかのように。
「クー! これって成功したのか?」
と、たたっと寄って来るのはシャーリィである。
空はそんな彼女へと言う。
「わからない。でも、手ごたえというか……今までと違って『何かを斬った』ような感覚とうか、《断空》を使った時に引っかかりがあったんだ」
「じゃあ、シャーリィが近づいて試してみる!」
「いや、ちょっと待って」
「そうです! 仮にゴブリンのシャーリィさんへの怒りが消えていても、ゴブリンは魔物です! 不用意に近づくのは危険です!」
と、空が言いたいことを先に言ってくれるリーシャ。
もっとも、今のシャーリィならばゴブリン程度からダメージは受けないに違いない。
けれど。
(でも、より安全な手段の方がいいよね)
故に、空はシャーリィとリーシャへと言うのだった。
「少し離れて様子を窺おう。あれがもし、シャーリィへの怒りを忘れた『普通のゴブリン』なら、わざわざ離れている僕らまで攻撃してこないはずだ」




