第三百二十話 空と断空は何を斬る?②
「大きなお屋敷が四軒ほどたつくらいでしょうか」
と、言ってくるリーシャ。
彼女は少し困った顔で、空へと続けて言ってくる。
「お店の人からは『これはいいものだから、これでも安い』と言われました。ですから、きっといい買い物のはずなんです!」
「…………」
「それなのに、どうしてこの技能は何も斬れないのでしょうか?」
「…………」
「不思議です……クウ様は何かわかりますか?」
「え、あぁ。まぁ……多分、理由ならわかるかな」
「さすがクウ様です! わたしは全く理由がわからないのに、クウ様は理由がわかるのですね! 尊いお方……やはりクウ様は勇者様なのですね」
と、お祈りモードに入るリーシャ。
言えない――これは詐欺かもしれないなんて言えるわけがない。
(あれ、でもちょっと待てよ)
この技能を買った場所は、怪しい店でも怪しい人からでもない。
エクセリオンのセントラルマーケット――かなり有名な場所で買ったのだ。
有名だから詐欺ではないという考えも、それはそれで危険だが。
(いくら何でも、そんなところで堂々と詐欺するかな?)
もしも、この技能の値段が正当なものだとしたら?
もしも、空がこの技能の使い方を理解できていないだけだとしたら?
可能性は充分にある。
となると、『斬れない物』とは何なのだろうか。
空は考えるのだった。




