第三百二話 空とムカデと英雄の一撃②
「《一閃》!」
言って、空は真下の巨大ムカデ目がけ、全身全霊の一撃を放つ。
直後。
先ほどまで凄まじい速度で突進してきていた巨大ムカデ。
奴はびたりと止まる。
…………。
………………。
……………………。
そして、そんなしばしの静寂の後。
巨大ムカデは頭から両断され、ゆっくりと地面に倒れていくのだった。
ようするに。
「ぶっつけ本番だったけど……なんとか、なった」
空の《一閃》はアルハザードのほどの威力――破壊光線をだすほどではなかった。
しかし、アニメでよくある真空の刃くらいは出せたに違いない。
先の巨大ムカデがいい証拠だ。
「まぁ、それよりも……」
現在、空にはおおきな問題があった。
それは。
「さすがにこの高さから落っこちたら、死ぬよね?」
空が居るのは、以前として高層ビルに値するほどの上空。
いくらレベル4に勇者の力があっても――。
「でも地面をぶち抜く衝撃にも耐えられたんだから、案外なんとかなるかな」
一瞬、空はそんなことを考えるが、すぐに頭を振る。
さすがにそんなギャンブル染みたことに命をかけるわけにはいかない。
正直、空の身体はすでに限界が近い。
けれど。
「もうひと頑張りするしかない、よね」
空は一人呟き、魔法で作り出していた片手剣を消滅させる。
そして、右手に魔力を集中させるのだった。




