第三話 空と狐娘
「っ……はぁ」
空はゴブリンとの戦いを終え、思わずその場にへたり込む。
(ゲームだとゴブリンって雑魚だし、主人公たちはどんどん倒してるけど……現実は全然違うな)
小柄なのにすごい力だった。
冒険者になっておらず、レベルの概念を得ていない一般人......
要するに力の増強をされていない者なら、絶対に勝てないに違いない。
冒険者。
その存在がこの世界で必須であり、花形なのにも納得がいくというものだ。
空がそんなことを考えていたその時
「ご主人様! 怪我はないか!」
と、そんな声と共に駆け寄って来る一人の少女。
モフモフとした狐耳と狐尻尾。狐色ミディアムロングの髪。
そして、短めのスカートと、胸の辺りだけを隠した露出の多い白基調の服。
そんな特徴的外見の少女の名は――。
「シャーリィさんのおかげで、なんとかなりました。ありがとうございます」
「むぅ……ご主人様、また敬語」
と、シャーリィは頬をぷくっとさせて言ってくる。
「シャーリィには敬語使わなくていい! シャーリィはご主人様の奴隷、奴隷には敬語を使わない!」
「そ、そう言われても……」
「それに敬語は嫌いだ! 冷たい感じがする!」
「うーん……」
空はデフォルトが敬語なので、難しいところである。
けれど。
「シャーリィがそう言うなら、気をつけるよ」
「うん、気をつけるといい!」
と、満足そうなシャーリィ。
空はそんな彼女へと言う。
「でも、シャーリィも僕の呼び方戻ってるよね?」
「?」
「『ご主人様』じゃなくて――」
「クー!」
「そう。あと、僕は確かにキミを奴隷商から助けたけど、お礼に僕の奴隷になることは――」
「シャーリィはクーが好きだ! 狐娘族は受けた恩は返す! だからシャーリィはクーと一緒に居たいんだ!」
などなど、シャーリィはまるで聞く気がない。
けれど、これは散々話しても意味のないことだったので、もう今更である。
「じゃあそろそろ帰ろうか?」
「冒険者ギルドのクエストカウンターで、依頼の報告だな!」
と、ふりふりと尻尾を振るシャーリィ。
空はそんな彼女と共に、帰路に就くのだった。