第二百七十六話 空と猫パンチ
「おまえ、やってくれたわね……この私に恥をかかせるなんて」
なんとも恨めしそうな氷菓の声。
彼女が空に向け手を払った瞬間だった。
空めがけ、大量の氷柱が地面を這うように押し寄せて来たのは。
「ちょっ!?」
これはさすがに直撃したらまずい。
空はすぐさま魔法 《ブラックスミス》で片手剣を作り出す。
そして。
「剣技 《七閃》!」
剣技 《一閃》の最上位技能。
高速の斬撃を七つ同時に繰り出すという、地球上では到底不可能と思われる絶技。
それは発動すると同時――。
空の視界に入っている全ての氷柱を、瞬時に切り刻む。
想像以上の結果だ。
けれど、今は決して喜んでいられる場合ではない。
なんせ。
「おまえぇええええええええええ!」
氷菓のお怒りモードが限界を突破しそうなのだから。
さて、そんな彼女はだんだん床に足を打ち下ろしながら、空へと続けてくる。
「私に反抗するなんてどういうつもり!?」
「いや、どういうつもりも何もですね……っていうか、足でだんだんする度に異能発動するのやめてくださいよ! 倉庫の中がどんどんすごいことになってますよ!」
「全部おまえのせいでしょう!?」
氷菓はまるで空の言い分を聞いてくれない。
空がそんな彼女を落ち着けるまで、数十分を要したのだった。




