第二百七十一話 空と氷菓と猫探し
「~♪」
と、先ほどから鼻歌交じりにスキップしているのは氷菓である。
彼女は空と二人行動が決まってから、ずっとこの調子だ。
さて、時は二手に分かれてからちょうど一時間後。
現在、空達はちょうど公園へとやってきていた。
「っていうか、氷菓さんも探してくださいよ! さっきからスキップしたり、踊ったりしてばっかりで、何もしてないじゃないですか!」
「おまえ、この私を止める気? ワースト風情がいい度胸ね」
と、空へと向きなおり言ってくる氷菓。
彼女は「ふふ」っと、絶賛悪役のような笑みで、空へと続けてくる。
「ねぇ、いったでしょ? 私はおまえに恋しているの……そんな私が、おまえと二人きり……嬉しくならないわけがないでしょう?」
「いや、でも今は大事な任務中で――」
「あぁ、空……おまえはどうして空なのかしら」
「…………」
ダメだこれ。
氷菓は全く使いものにならない。
ここまでくると、最初からやる気がなかったとしか考えられない。
「はぁ……」
空はため息一つ、氷菓を完全無視。
一人で捜索を――。
「はいはい、わかりましたぁ」
と、ぶすっとした様子で言ってくるのは氷菓である。
彼女は近くのベンチに腰掛けると、空へとつまらなそうに言ってくる。
「こういう乙女な態度で迫っても、おまえは反応してくれないわけね? まったく……私ほどの美人が迫っているのに、無視するなんて贅沢なやつね、おまえ」
「いや、関係ありませんって。今は任務中だから、真面目にやって欲しいなって思っただけです。それと氷菓さん、恋してる云々って絶対に冗談ですよね?」
「さてどうかしらぁ」
と、いたずらっぽい様子の視線を向けてくる氷菓。
彼女は「なにはともあれ」と一言、空へと言葉を続けてくるのだった。
「猫の居場所ならもう見つけたわぁ……これで私のこと、かまってくれるのよね?」




