第二百六十九話 空と天使班は任務を受けてみる③
「兄さん……この任務などどうでしょうか?」
と、言ってくる時雨。
彼女が指さしている任務は――。
●迷い猫探し
二日前から猫が見当たらない。すでに他ヒーローが捜索に当たっているが、状況はあまりよくない。対象はまだ幼い飼い猫のため、生命にかかわると判断される。手が空いているヒーロー、および捜索系の異能を持つ者は、率先してこの任務を受けてもらいたい。
「うん、猫が心配だ、早く探しに行かないと!」
「いや、そうではなく……いや、それもそうなんですが」
と、何故か困った様子の時雨。
彼女はチラリと氷菓を見たのち、空へと言ってくる。
「彼女が言っていた通り、チュートリアル的なものに最適かと思います。こういうと非情に聞こえますが、わたし達に対するリスクは低いですから……もっとも、だからといって手を抜くことはありえませんが」
「いいと思うよ、それに時雨は猫が好きだしね」
「はい……ですが最近は、猫より狐に興味がありまして」
「狐? そういえば、この前も狐の動画をずっと見てたけど」
「狐はいいですよ、兄さん……モフモフとした尻尾、その先端から生える美しい白い毛。さらに、ピコピコ動く狐耳から生えるふぁさっとした毛……癒されます」
「…………」
知らない間に、時雨が狐愛好者になっていた。
それはともかく、こうして天使班の最初の任務が決定したのだった。




