第二百六十六話 空と時雨と胡桃の戦い②
「まったく……うるさい人ですね」
と、空に未だ抱かれている時雨。
彼女は心なしかドヤっとした様子で、胡桃へと言う。
「羨ましいなら羨ましいと言ったらどうですか? 梓さんも『わたしも兄さんに抱きしめられたい』と、そう言えばいいじゃないですか」
「なっ!? べ、別にあたしは――」
「ヘタレですね」
「!?」
「知っていますよ。いつも兄さんにヘタレだのバカだの言っていますけど……わたしから言わせれば、それらは全部ブーメランです」
「な、ななな、なっ!?」
「恥ずかしがっているうちは、わたしや氷菓さんの敵ではないですね……いえ、あなたの恋愛偏差値はシャーリィさん以下と言っても過言ではないです」
「い、いくらなんでもそれはないんだからね!」
二人が言っていることはよくわからない。
しかし、空にも一つだけ理解できたことがある。
それは――。
(なんだかわからないけど、シャーリィがものすごくバカにされている気がする)
シャーリィは少し天然なだけで、決してバカではない。
むしろ頼れる面だらけだ。
と、空がそんな事を考えている間も胡桃と時雨の言い合いは続いたのだった。
なお、これは余談だが……二人の言い争いは、空が風呂から出たあとも継続中だった。




