第二百六十五話 空と時雨と胡桃の戦い
「兄さん……もう少しだけ、このままでいさせてください」
何やら照れた様子で言ってくる時雨。
彼女は別に嫌がっている様子はなく、もはやもぞもぞ身体を動かしてすらいない。
されるがまま状態というやつだ。
(えと、別に嫌ではないのかな? それにもう少し続けて欲しいってことは、しっかり疲れをとる効果もあったってことだよね?)
ならば続けない手はない。
普段頑張ってくれている時雨。
空は彼女の疲れを取りたいのだか――。
「な、なななな、な!」
突如聞こえてくるそんな声。
見れば、風呂場の入り口にパジャマ姿胡桃が立っていた。
彼女はぷるぷる震えながら、空へと言ってくる。
「こ、この変態! シスコン! あんたなにやってんのよ!」
「え、なにって……見ての通りだけど? というか、お風呂もういいの? じゃあ次は僕が入っちゃうね」
「じゃあ次は僕が入っちゃうね……じゃないわよ!」
胡桃はずがずが空の方までやってくる。
そして、彼女はすびしっと時雨を指さしながら、空へと続けてくる。
「あたしとあんたの部屋でなによこれ! しかもベッドの上で妹とイチャコラしてるって、どういうことなのよ!」
「?」
「何言ってるのかわからない、みたいな顔やめなさいよね! なに!? あたしがお風呂に入っている間に、妹を連れ込んで背徳プレイでもしてたってわけ!?」
「ごめん……何言ってるか本当にわからないんだけど」
「ごまかしても無駄なんだからね! 時雨がこんなに頬を染めてる時点で、そういうことしてたのは、誰が見ても明らか……この変態シスコン男! どうしてよ……どうしてあたしにしないで、他の奴にするのよ! よりもよって実のいも――」
「まったく……うるさい人ですね」
と、その時。
胡桃の言葉はそんな時雨の言葉に、見事に遮られるのだった。




