第二百六十三話 空と時雨は水入らず?②
「突然すみません……」
と、部屋に入って来る時雨。
彼女はとことこ空の前まで歩いて来ると、続けて言ってくる。
「座ってもいいですか?」
「うん、もちろん問題ないよ。なにか話でも――」
「では、お言葉に甘えて」
ぼすっと座ってくる時雨。
さて、さきほど空の言葉が途切れたのには理由がある。
それは。
「あのさ……時雨、どうして僕の膝の上に座ってるのかな? ベッドはまだスペース空いてるから、隣とかに座った方が時雨も座りやすいんじゃ……」
「いえ、ここでけっこうです」
むふぅっと、身体をぐりぐり空へ押し付けてくる時雨。
子猫にマーキングされている気分である。
それにしても、時雨がここまで露骨に甘えてくるのはかなり珍しい。
空の記憶が正しければ、空の年齢が十五を超えてからは、あまりない。
と、空はそんなことを考えながら、時雨へと言う。
「なにかあったの?」
「別にたいした理由じゃないですよ」
「そうかな? 時雨がこういうことする時って、だいたい何かあったときだよね?」
「…………」
時雨はこてんっと、空の胸に頭を預けてくると、ポツリと言ってくるのだった。
「兄さんはわたしのこと、なんでも知っているんですね……」




