第二百六十二話 空と時雨は水入らず?
時はヒーローボードの説明から数時間後。
現在の時刻は夜、場所は空の部屋。
「空、先にお風呂入っちゃっていい?」
と、聞こえてくるのは胡桃の声である。
空はベッドの上からテレビ番組を見ながら、そんな彼女へと言う。
「ん、大丈夫だよ。まだ入る予定はないから、ゆっくりしてきて」
「じゃあ一番風呂はもらうんだからね! ……あ、あのさ、空」
「どうしたの? タオル切らしてた?」
「え、えとそうじゃなくて……よかったらその、一緒に――や、やっぱりなんでもない!」
「え、何? 気になるから言って欲しいだけど」
「う、うっさい! 空のバカ! 甲斐性なし! ヘタレ! 察しなさいよバカ!」
言って、風呂場へ駆けていく胡桃。
ボロクソである。
しかもバカって二回言われた。
…………。
………………。
……………………。
これはあれだ。
全く意味がわからない。
どうして空は今、罵倒されたのだろうか。
胡桃はやはり、空のことが嫌いなのだろうか。
「うーん、最近は仲良くできてると思ったんだけどな。自分で言うのもあれだけど、少し好意みたいのも感じてたし」
やはり全部空の勘違い。
先の行動を見るに、やはりそう考えた方が――。
「兄さん……入っていいですか?」
と、その時。
扉の向こうから時雨のそんな声が聞こえてくる。
(この声、時雨か……こんな時間にどうしたんだろう?)
まぁ断る理由もない。
空は時雨を快く招きいれるのだった。




