第二百六十一話 空とプロヒーローの説明③
「え、つまり……プロヒーローと全く同じ任務を受けるんですか? じゃあ偶然ばったり、プロヒーローと会ったりなんてことも」
「はい、実に物分かりがいいですね……兄さんと同じで偉いです」
と、生徒の質問に答える時雨。
彼女は他に質問がないのを確かめたのち、さらに説明を続ける。
「とまぁ、正直な話をしますと……今日、わたしが皆さんに伝えたいのは、このヒーローボードの使い方とか、そういう類の問題ではありません。みなさんは『ヒーロー志望の生徒』です……いちいち説明しなくても、ヒーローボードのことなど知っているでしょう」
たしかにその通りだ。
この世の中、ヒーローもののゲームやアニメ。
コミックやラノベは大量生産されている。
空がヒーローボードの『緊急任務』と『通常任務』の違いを知っていたのが正にだが。
もはやそんな事は常識に近い……ヒーロー学校の生徒ならなおさらだ。
よって時雨は最低限の説明をしたに違いない。
そして、これから本当に伝えたいことを言うに違いない。
すなわち。
「わたしが知って欲しかったのは……このヒーローボードに掲載されるのが本物の事件だということです。授業でもなければゲームでもありません……油断すれば死にますし、あなた達のせいで死人がでることもあります」
と、時雨は最初に異能でお口チャックした生徒の方へ向く。
彼女は手を軽く動かし、異能を解除すると。
「わたしの一連の話を聞いて、まだ騒ぎますか?」
時雨の言葉に対し、先の生徒たちは申し訳なさそうに黙りこむのだった。




