第二百五十七話 空は妹の権限に驚いてみる
「残念ながら却下ですよ、兄さん……マッスルさんはNGです」
と、言ってくる時雨。
それにしても、どうして彼女はこんな思わせぶりな笑みを浮かべているのか。
(まさか、時雨もマッスルさんのこと好きじゃないのかな……一般女性に嫌われているだけでなく、女性ヒーローにも嫌われてるなんて酷すぎる)
常に筋肉を見せつけ、筋肉で敵を倒す。
そして、ボロボロになっても守るために立ち続けるマッスル。
そんな彼は最高にかっこいいと思う。
「兄さん……その表情からするに、何か勘違いしてますね」
と、空の考えを断ち切るように言ってくる時雨。
彼女は机に置かれたコップにお茶を注ぎながら、空へと続けてくる。
「そもそもわたしにヒーローの好き嫌いはありませんよ。役目を果たしているのなら、それで結構です……兄さん、お茶です……どうぞ」
「ん、ありがとう。でもさ時雨、だったらどうしてマッスルさんがダメなの?」
「わたしの言い方が悪かったようですね、すみません……厳密にいうとヒーロー全員NGです」
「……え?」
つまり、時雨は空に学生ヒーローやるなと言っているのだろうか。
だとしたら、全校集会でこちらにアイコンタクトしてきたのは何だったのか。
上げて落とすとは、我が妹ながら酷すぎる!
空が一人そんな事を考え、呆然としていると。
ずずっとお茶飲んだ時雨。
「おほん……兄さんだけでなく、ここに居る全員よく聞いてください」
彼女はやたらと悪戯っぽい表情を浮かべ、とんでもない発言をしてくるのだった。
「今日この瞬間より、皆さんの担当ヒーローはわたしになりました」




