第二百五十六話 空とグループ完成③
「会議中に普通のトーンで二人だけの会話は禁止です」
と、ぷくっと頬を膨らませて言ってくる氷菓。
氷菓が普段しない、まるで小動物のような仕草。
空はそれをみて、「かわいいところもあるんだな」などと考えていると。
「兄さん……あれは演技ですよ。女を舐めてはいけません」
ボソボソと、耳打ちしてくる時雨。
彼女は「ところで」と一言、言葉を続ける。
「なんの会議をしていたんですか? 議題は? この場で議題に上げることなど、今日はなかったと思いますけど」
「グループ決めをしたのよ! あと、どのヒーローの元に付きたいかの多数決ね!」
と、誰よりも早く答えたのは、未だ空にくっついている胡桃である。
彼女は何故か「むふぅ~」と自慢げな様子だ。
なんでもいいから、そろそろ離れて欲しい。
色々当たっているのもそうだが、だんだん熱くなってきた。
「梓さんはそろそろ離れましょうか……兄さんが嫌がっていますよ」
さすがは時雨。
嫌がっているまではいかないが、ほぼ空の気持ちを代弁してくれる。
そんな彼女は「まったく……」と一言、気だるげな様子で続ける。
「議題は学生ヒーローの件ですよね? グループは決まったんですか?」
「えぇもちろん、決まったわぁ……おまえが来ないうちに全て、完璧にねぇ」
「あたしと、一色先輩、それと……くーう、一緒に組もうね♪」
答えるのは氷菓と胡桃である。
と来れば、あとは空の番である。
「まだ第一希望しか決まってないけど、ヒーローは筋肉ヒーロー『マッスル』さんを希望していて――」
「残念ながら却下ですよ、兄さん……マッスルさんはNGです」
時雨は「ふっ」と思わせぶりな笑みを浮かべ、言ってくるのであった。




