第二百五十話 空とヒーローの方策③
「簡潔にいうと……あなた達にはプロヒーローとして活動できる権利が与えられます」
そんな時雨の言葉。
彼女のそれからの発言をまとめると、こんな感じだった。
●プロヒーローの人数が警察所属、自衛隊所属合わせても世界的規模で足りていない。
●この学校以外の養成学校にも怪人の襲撃があった。つまり、怪人はヒーローの卵を意図的に狙っていると考えられる。
●養成学校の生徒により実戦的な経験を積ませ、プロヒーローとして活動できる権利を与えれば、前者二つを戦力の意味でも自衛の意味でも解決できるに違いない。
●ただし、正式な出動要請を受けた際、学生ヒーローはプロヒーロー一名同伴込のフォーマンセルになる必要がある。
●学生ヒーローの一連の方策への参加は希望者のみとする。希望しないものへのペナルティは全くなく、従来通りの生活が可能。
●学生ヒーローが怪人と偶発的に遭遇した際、ヒーロー行為は許可される。しかし、六人以下でのその行為は決して推奨されるものではない。
●学生ヒーローのみで、怪人を意図的に探し討伐する行為は、非合法ヒーロー活動とする。
という感じであった。
他の生徒がどう感じているかはわからない。
けれど、空にとってはこの方策――。
(すごい! 時雨が前言ってたやつはこれのことだったんだ! これなら、異世界で得た力を使って、制限なく怪人から人を助けることができる! それに怪人を倒してレベルアップの件もこれなら!)
人が目の前で襲われていても、ショッピングモールの時の様に躊躇する必要はない。
空は思わず一人ガッツポーズをしてしまう。
(卒業するまでは表立った活動はダメだって思ってたけど、この方策があれば僕も――!)
と、そこで空は時雨がじっとこちらを見ているのに気が付く。
空にはわかる――彼女はこう言っているに違いない。
『どうですか……兄さん。満足してもらえましたか?』
空はそんな彼女にしっかりとうなずく。
頷かないわけがない。
こんなに素晴らしい報告を、空へもたらしてくれた天使なのだから。
「えー静粛に、それでは最後にもう一度ワシから話がある」
と、そこで再び前へ出てくる校長。
彼はある意味で、時雨よりも爆弾発言をするのだった。
「学校が襲われたという事態も踏まえ、今年度の学祭は無期延期とする」
直後、ブーイングの嵐が巻き起こったのは言うまでもない。




