第二百四十九話 空とヒーローの方策②
「どうもプロヒーローの『エンジェル』です。校長先生のお話にあった通り、今日は大事な説明があってやってきました」
と、壇上から言ってくるのはエンジェルこと時雨。
彼女はヒーローコスチュームを見に纏っていることから、完全に仕事モードに違いない。
「わぁすげぇ、ヒーローコス来てる時雨ちゃん生で初めて見た!」
「な! 天使ちゃんといつも一緒に勉強してるって、俺達ってすごくね?」
「時雨ちゃん俺だ! 結婚してくれ!」
がやがや。
がやがやがや。
なんだかけしから声が聞こえてきた気がする。
とりあえず言った奴は、少しマークしておこう。
と、空がそんな事を考えている間にも、壇上の時雨は話し出す。
「はぁ……静かににしてください。ヒーローを生で見ただけでこのざま、プロヒーローを目指す者として恥ずかしくないんですか?」
途端静まり返る校庭。
それも当然だ――なんせ、時雨は周囲に異能による光の粒子を展開し始めたのだから。
まぁただの威嚇に違いないが。
「では、静かになってところで本題に入ります。以前、この学校が怪人に狙われた様に、最近怪人が徒党を組み、組織的に動き始めているのは知っていますね?」
時雨の言う通り、最近それはニュースなどでも問題視されている。
そのせいで、ヒーローだけでは対応できなくなってきているのだ。
おまけに――。
「おまけに怪人の出現頻度自体も、凄まじい増加を見せています……そこで数日前、新たな方策がうちだされました」
と、時雨はそこで言葉を区切り、じっと確実に空の方を見てくる。
まるで「お待たせしました」とでも言っているかのように。
(なんだ? 僕に関係あることなのかな……まさか、先日のショッピングモールの件の続き? いやでも、こんな全校集会という場でそのことを追求してくるはずが)
けれど、時雨は空が次にバケツを被ったとき、敵になるだのと言っていた。
ならば、彼女はここで空の息の根を止める気ではないか。
『あ、あの時被ったのはバケツじゃない! 紙袋だ!』
という言い訳はあるにはあるが、言ったら確実に酷い事になる。
などと、空が考えていると。
「簡潔にいうと……あなた達にはプロヒーローとして活動できる権利が与えられます」
時雨はそんな爆弾発言をしてくるのだった。




