第二百四十七話 空と胡桃は強さについて考えてみる③
それではお言葉に甘えて。
空は胡桃から袋を受け取り、それを開封する。
するとそこには。
「なるほど、これが胡桃の僕への気持ちってことか……」
「そ、そうよ! それがあたしのあんたへの気持ち! いい加減、あたしがどう思ってるか気が付きなさいよね!」
と、ツンケンした態度で頬を何故か染めている胡桃。
空は彼女から視線を移し、もう一度袋の中を見る。
そこには真っ黒焦げのダークマターのようなクッキー。
もといクッキーのようなダークマターが入っていた。
しかも何故か目と鼻がすごく染みてくる……涙がでそうだ。
(胡桃の気持ち……僕を葬り去りたいってことかな)
けれど、ここで食べない選択肢はありえない。
それをすれば胡桃に失礼だし、彼女を傷つけてしまうかもしれない。
故に空はクッキーを一つ、口の中へ放り――。
「っ!?」
広がる苦味。
目を裏側から突き刺されるような酸っぱさ。
これは確実にクッキーではない!
「ね、ねぇ空? それ、どうかな……あたし、頑張って作ったんだけど」
と、なにやらもじもじしている胡桃。
空は全力でクッキーを一枚、二枚と食べながら彼女へと言う。
「お、おいしい! こんなにおいしいクッキー初めてだよ! ほら、思わず涙が……」
「な、なに空のバカ! えへへ……でも、空に褒められるの嬉しいな……くーう♪」
「オイシイ! オイシイ! コノクッキーオイシイ!」
「~~~~♪」
と、胡桃の鼻歌が死神の鼻歌に聞こえ始めたその時。
『全校集会を行います。全校集会を行います。生徒の皆さん、教師の皆さんは校庭へと集まってください。繰り返します――』
スピーカーからそんな声が聞こえて来たのだった。




