第二百四十一話 空とリーシャと危ない出来事③
「ちょ……な、なにしてるの!?」
「…………」
リーシャは言葉を返す代わりとでも言うつもりか、余計に空の身体をきゅっとしてくる。
となれば当然、衣越しにリーシャの温かさや柔らかさも感じでしまうわけで。
(り、リーシャさんのその……つつましやかなものが、しっかり当たっちゃってるんですけど、これはどうすれば……)
一男子高校生には刺激が強すぎる。
とりあえずどうにかして、この場を切り抜けなければ空の思考回路はやばい。
などなど、ああでもないこうでもない考えていると。
「クウ様……」
と、空の胸板におでこをくっつけ、背中に腕を回しながら言ってくるリーシャ。
彼女は「絶対に離さない」とでもいうかのように、そのまま言葉を続けてくる。
「お伝えしたいことがあります、とても大事なことです……聞いていただけますか?」
「き、聞くけど。一旦離れた方が――」
「わたしは聖女としてではなく、ただのリーシャとしてクウ様を大切に思っています」
「えっと……」
リーシャが言っているのはつまり、人として好きということに違いない。
それならばと、空はリーシャへと己が考えを伝える。
「僕もリーシャのことが好きだよ。一緒に居て落ち着くし、まだ短い付き合いだけどこれからも大切な仲間として――」
「ちがいます!」
言葉とともに、よりつよく――少し痛みを感じるほど空を抱きしめてくるリーシャ。
彼女はまるで空の身体で照れ隠しするように、そのまま空へと続けてくる。
「クウ……くん、わたしはあなたのことを愛し――」
「大変です、リーシャ様! 至急王の間までお越しください!」
と、リーシャの声を遮り扉の向こうから聞こえてくる声。
別に悪いことをしていたわけではない……ないはずなのだが。
空とリーシャはどちらからともなく、距離をとるのだった。




