第二百三十八話 空とリーシャと技能書
あーでもないこーでもない。
リーシャと始めた技能書探しから、およそ一時間強。
現在、空はようやく――。
「よし、じゃあこれを褒美として買ってもらおうかな」
「よかったです! クウ様のお目当てが見つかったのですね!」
と、ぴょんぴょんと燥いでいる様子のリーシャ。
彼女は「ところで」と一言、空へと言葉を続けてくる。
「クウ様は最終的にどのような技能書を購入したのですか? もし嫌だったらいいのですが、教えてくださるととても嬉しいです!」
「うん、全然いいよ。リーシャが一緒に探してくれたから、見つけることが出来たんだし。えっと、僕が選んだのは――」
●剣技《斬鉄》
硬い物を両断することができる。鉄が切れるかどうかは、使い手の力量次第。相応の使い手が使うのならば、斬れない物はおおよそ存在しない。
●剣技《七閃》
高速の斬撃を同時に七回繰り出す魔技。
●剣技《断空》
斬れないものを斬る。
「《断空》! わたしが選んだ技能です!」
と、嬉しそうなリーシャ。
正直、空はこの技能の効果がよくわからなかったので、いらなかったのだが。
『クウ様! この技能、クウ様の名前と同じ発音です! なので、わたしはこれをお勧めします!』
以上、剣技《断空》を見つけた時のリーシャの言葉である。
あんな笑顔を向けられては、いくらなんでも断るわけにはいかない。
おまけに、あくまで空は買ってもらう立場なのだから――金を払うのは王様だが。
「嬉しいです! わたしはクウ様の力になれたのですね……なんという幸せでしょう」
と、空が考えている間にも、お祈りモードで言ってくるリーシャ。
空はそんな彼女を見て思うのだった。
(こんなに喜んでくれるなら、まぁよかったかな。それに《断空》もすごい強い技能かもしれないし……『斬れないものを斬る』っていうのが、よくわからないから検証が必要だけど)




