第二百三十五話 空とリーシャはお買い物してみる③
時はあれから数分後。
リーシャは思いのほか、すんなりと空を目的地へと案内してくれた。
「どうでしょうか? 満足していただけしょうか?」
と、自信なさそうに言ってくるリーシャ。
けれど、空から言わせてもらえば、彼女が自信なさそうにする理由など皆無だ。
なんせ――。
「予想以上だよ。っていうか、予想以上すぎて目当ての技能書探すのが大変そうなくらいだよ」
店内に入った直後、見えてきたのは前後左右にある棚――それを埋め尽くすおびただしい巻き物である。
当然、これらは全て技能書に違いない。
技能書専門店。
まさにそんな感じの内装である。
広い店内には技能書以外、他の品物は見当たらないのだから。
ところで、内装といえば気になることが一つある。
「ねぇ、リーシャ。なんだかこのお店ものすごくその、さ……」
店内の床は一面大理石らしきもの。
技能書が収まっている棚全て木製であるが、金細工が施されている。
(あの店員さんなんて、ビシッとしたタキシードみたいな服にモノクルつけてるし……おまけにピンっとした髭に乱れのないオールバック)
明らかにこの店は高い店だ。
となると空は困るのだ。
ぶっちゃけ、空にそんなに高い金で技能書を沢山買う金はないのだ。
などなど、そんな事を考えていると。
「大丈夫です、クウ様! ある程度ならば、この店の物はただで購入できますよ!」
と、空の考えを察したに違いないリーシャ。
彼女がそんなことを言ってくるのだった。




