第二百三十四話 空とリーシャはお買い物してみる②
「あ、あのクウ様」
くいくい。
と、空の裾を引っ張ってくるのはリーシャである。
彼女はおずおずとした様子で、空へと続けて言ってくる。
「難しい顔をされていますが、ひょっとして何か気に入らなかったのでしょうか?」
「いや、想像以上にここが大きかったから、少し驚いていただけだよ」
「つ、つまりその……クウ様はわたしが案内したここに満足していただけたのですね!」
「うん、こんなに広かったらきっといい技能書も見つかると思うし」
というか、ここでいい技能書がなければ、もう他のところでは見つからないに違いない。
それほどにこのセントラルマーケットは、店舗が充実していそうなのだから。
「クウ様! よろしければ、わたしが続けて案内をしたいのですが……」
と、控えめな様子で言ってくるリーシャ。
空にとって彼女の提案は、むしろ喜ばしいものだ。
目当ての物はあっても、場所がわからない今。
無作為に探していては、凄まじい時間がかかるに違いないのだから。
空がそんなことを考えながら、リーシャへ返事をすると。
彼女はぱぁっと表情を見るからに明るく輝かせ――。
「では、しっかりとクウ様を導いてみせます!」
言って、彼女は入り口付近にあった地図とにらめっこを始めてしまう。
しかも「うーん、これどうやって見るのでしょう」と、聞こえてきた気がする。
「…………」
空は聞こえてきた気がする言葉を、聞こえてこなかったことにする。
そして、ただただリーシャを信じるのだった。




