第二百二十二話 空と仲間達は連行されてみる②
「なんか来た! すっごい怖そうな奴が来たんだ!」
と、言ってくるシャーリィ。
その直後。
「貴様たち! こんなところで何をしている! 許可はとっているのか!」
声と共にやってくるのは、騎士甲冑を纏った団体である。
彼等は続けて言ってくる。
「民への治療は感謝する。だが、この様な行為を勝手にすることを許すわけには――」
「あ、あの!」
と、聞こえてくるリーシャの声。
彼女は空達の前へ一歩でると、騎士達へと言う。
「も、申し訳ありません! わたしが勝手にしたことで、クウ様たちには――」
「なっ!? せ、聖女様! どうしてこの様なところに……どうしてこの様な者達と一緒に居るのですか!? 騎士団長様はいったい――」
「撤回してください!」
と、響き渡るリーシャの声。
彼女はこれまで聞いてきた中で、もっとも大きく力強い声で騎士達へ続ける。
「この方たちは勇者様、その仲間の方たちです! 決して、この様な者……などではありません!」
「ゆ、勇者……では、まさか……ついに?」
「詳しくは後程説明します。わたし達を然るべき場所に、連れて行って欲しいのですが」
「は、はい! もちろんです! おい、貴様ら! 聖女様と勇者様たちをお連れしろ!」
と、指示を飛ばす騎士。
彼はすぐさま空の方へ向き直ると。
「勇者様、そしてその仲間の方々……先ほどの非礼どうかお許しいただきたい!」
「え、いや……そもそも怒ってないです、よ」
「なんと心が広い! さすが勇者様!」
と、いちいちオーバーリアクションな騎士。
彼は深く頭を下げたのち、周囲の対応をし始める。
(一時はどうなることかと思ったけど、たいしたことなくてよかったのかな)
治療行為をしていたから捕まった。
などとなっては、もはや笑えない――リーシャが居る以上それはないと思っていたが。
と、空がそんな事を考えていると。
「クウ様、クルミ様、シャーリィ様。騎士様たちに続きましょう、王様のもとに案内してくれるはずです!」
などと言って、騎士達のあとについて行ってしまうリーシャ。
…………。
………………。
……………………。
しばしの沈黙。
その後。
「ねぇ空……リーシャがさ」
と、言ってくるのは胡桃である。
彼女は空の横に並びながら続けてくる。
「王様がどうのって言ってたわよね?」
「うん、言ってたと思う」
「あ、あたし達これから王様に会うの?」
「うん、だと思う」
「あ、あたた、あたし……偉い人に会うの初めてなんだけど!」
「うん、僕も」
まずい、意識したら唐突に緊張してきた。
きっと、それは胡桃もに違いない――先ほどから様子がおかしいのだから。
さて、一方のシャーリィはと言うと。
「王様だ! きっとお礼を貰えるんだ! 食べたことないお菓子とか、たくさんもらえる! わーい、家族にもお土産ができる!」
まるで緊張していないに違いない。
一人ぴょこぴょこ純粋に喜んでいたのだった。




