第二百二十話 空とエクセリオン③
「あ、あはは……その、怒るのは昔から苦手なんです」
と、リーシャが言ったまさにその時。
突如周囲が騒がしくなる。
「あ、あれ……リーシャ様じゃないか?」
「どうしてこんなところに?」
「すごい、本物の聖女様だ!」
「俺はエクセリオンに来たのは初めてだから、初めて見た!」
などなど、聞こえてくる様々な声。
やはりリーシャは有名人なのだ。
と、空が考えたその時。
「リーシャ様! 息子にご加護を!」
「リーシャ様、夫が病気なんです! どうか治療を!」
リーシャ様。
リーシャ様と、押し寄せる人の波。
「ちょっ!?」
「く、クー!」
と、言ってくるのは胡桃とシャーリィである。
きっと、彼女達はあまりの人の量に危機感を覚えたに違いない。
同意だ――なんせ、空もこのままではまずいと思ったのだから。
だがしかし。
「み、みなさん! 落ち着いてください! 大丈夫、怪我をしている方はわたしがしっかりと治します!」
と、押し寄せる人々にはっきりと言うリーシャ。
彼女は人波に怯むことなく、順に回復魔法による治療を開始していくのだった。




