第二百十五話 空は聖女に癒されてみる②
「わかりました、わたしの勇者……クウ様」
と、思わず見惚れてしまいそう笑顔のリーシャ。
空が照れ隠しの意味も込め、彼女に何か言おうとしたその時。
「クーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
聞こえてくるシャーリィの声。
彼女は凄まじい速度で空に近づいてくると。
ガシ。
ぶんぶん。
ぶんぶんぶん。
以上、シャーリィが空の手を握り、尻尾を振りまくっている音だ。
シャーリィはよほど空を心配してくれたに違いない。
彼女は続けて言ってくる。
「クー! お腹の穴が塞がってる!」
「うん、リーシャが回復魔法を使ってくれたからね。そういうシャーリィは怪我とかない?」
「大丈夫だ! ちょっと擦りむいてたけど、リーシャが回復してくれた! リーシャは凄いんだ! なんでも治してくれる!」
「あ、ははは……なんでもは無理ですよ」
と、照れくさそうなリーシャ。
シャーリィもリーシャも、今回の件でますます仲良くなったに違いない。
実にいいことだ。
などなど、空はここでとある事に気がついてしまう。
そういえば、胡桃の姿をまだ見ていないので――。
「じ~~~~~~~~」
と、空の思考を断ち切る様に感じる視線。
胡桃だ……この視線は間違いなく胡桃のものだ。
しかも、何故か怒っている。
空が胡桃の視線を感じる方へ、自らの視線を向けると。
そこには胡桃が居た。
「ふーん……そう、あたしの心配は最後ってわけ? っていうか!」
胡桃は機嫌悪さ全開と言った様子で、空に近づいて来る。
そして、彼女は続けて言ってくるのであった。
「あんたこんな怪我してどういうつもりよ! 自分だけこんな! あんたが死んだら……このバカ!」




