第二百十四話 空は聖女に癒されてみる
「っ……」
気が付くと、空の身体を暖かな光が包んでいた。
まるで太陽の光に照らされているような、優しいその光。
(なんだ、これ……僕は確かエンシェントデーモンを倒した後……)
まったく思い出せない。
と、空がそんなことを考えていると。
「勇者様! 勇者様、気が付かれたのですね!」
聞こえてくるリーシャの声。
見ればリーシャがその腹部に手を翳し、何かをしている。
「いったい、なにを?」
「回復魔法です! わたしがまともに使える唯一の魔法」
と、言ってくるリーシャ。
空はそんな彼女へと言う。
「あぁ……どうりで、どんどん身体の痛みがなくなっていってると思った……」
「ようやく、ようやく勇者様のお力になれましたね」
「…………」
「勇者様?」
と、ひょこりと首をかしげるリーシャ。
空はそんな彼女へ、ずっと考えていた事を言う。
それは――。
「リーシャ、ありがとう……あと、僕のことを勇者様なんて呼ばなくていいよ」
「で、ですが――」
「僕達はもう仲間だよね? 一緒に冒険して、一緒に敵を倒して……役に立つとか立たないとか、勇者と聖女とか関係ない」
「!」
「日向空……僕はただのリーシャの仲間だよ」
と、空はリーシャを見てまっすぐに言う。
すると彼女はこくりと頷き、空へと言ってくるのだった。
「わかりました、わたしの勇者……クウ様」




