第二百六話 空と太古の魔物
「っ!」
突如盛り上がり、今にも爆発しそうな熱量を放つ地面。
このままではまずい。
胡桃とシャーリィはともかく、リーシャにとっては致命傷だ。
それならば。
「魔眼《王の左目》!」
直後、空の世界が緩やかにになる。
これならば安全かつ確実に、全員を助けられるに違いない。
空はすぐさま全員を迅速に、爆発圏外へと退避させていく。
そして、安全を確認した後、魔眼を解除すると。
今度こそ盛り上がる地面。
そこから巻き起こるのは半径四メートルを、優に超える爆炎。
「くっ」
離れていても感じる圧倒的熱量。
魔眼を使っていなければ、やはり危なかったに違いない。
「ねぇ、空。助けてくれたお礼を、言いたいところではあるんだけど」
と、言ってくるのは胡桃である。
けれど、空は胡桃の言葉の続きなど、言われる前からわかっている。
故に空は胡桃含め仲間達へと言う。
「全員、一瞬も気を抜かないで!」
その直後。
地面に空いた大穴から炎が這いだしてきた。
巨大な身体。
それに相応しい角と翼。
身体全体に炎を纏った、七メートルを超す魔物の正体は――。
「そ、そんな……エンシェントデーモン! 遥か昔に絶滅したはずです!」
と、聞こえてくるリーシャの声。
彼女は更に続けて言ってくる。
「ま、まさか……地下深くで眠っていた個体が、先日の聖天魔法の余波で――」
けれど、リーシャの言葉は途中で止まる。
理由は簡単だ。
空いた穴から更なる敵。
一メートルほどの小型のデーモンが、二十匹ほど這いだしてきたのだから。
故に空は――。
「胡桃、シャーリィ……ごめん、小さいやつの相手とリーシャの護衛を任せる!」
言って、エンシェントデーモンを睨み付ける。
そして、空は続けて言うのだった。
「僕はこいつを倒す」




