第二百三話 空は地下街道で休憩してみる③
ねりねり。
ねりねりねり。
「…………」
と、必死に作業しているのはリーシャである。
彼女が現在、『ねりねりねりねり』という知育菓子を作っている。
この知育菓子は、カップに粉と水を入れて混ぜるだけなのだが。
「…………」
聖女様、真剣である。
初めての知育菓子がよほど面白いに違いない。
リーシャはその後もしばらく、ねりねりを続け。
「っ! できました! 勇者様! ねりねりし終わりました!」
と、言ってカップの中身を見せてくるリーシャ。
その中には半ば個体にちかい、粘性のあるカラフルな液体が入っている。
彼女は更に続けて空へと言ってくる。
「勇者様! これはもう食べていいのですか?」
「うん、大丈夫。そのかき混ぜ棒で、中身を絡めとって食べるんだ」
「かき混ぜ棒で中身を……やってみます!」
と、何事にも真剣なリーシャ。
空はそんな彼女を見たのち、胡桃へと言う。
「どうして、知育菓子なんて持ってたの?」
「勘違いしないでよね! あたしの趣味じゃないんだからね!」
と、むっと頬を頬を膨らませる胡桃。
彼女はその後、『ねりねりねりねり』の空袋をひらひらさせながら、空へと言ってくる。
「ほら、シャーリィが喜びそうじゃない? リーシャを見ててやっぱりって思ったけど、この世界ってこういうお菓子ないでしょ?」
「まぁね、ポテトチップスがないくらいだし」
「だから、今度シャーリィにあげようと思って、事前に買っておい――」
「え!?」
と、狐耳と狐尻尾を立てるシャーリィ。
彼女は胡桃へと言うのだった。
「あのお菓子、シャーリィのだったのか!?」




