第二話 最弱の少年、ゴブリンと戦う
「はぁっ!」
空はゴブリンめがけ、全力で剣を振り下ろす。
けれど。
「ぐげげげげげげげげげっ!」
と、ゴブリンは持っているこん棒で、空の攻撃を防いでくる。
小さな体格ながら、かなりの筋力である。
(っ……僕の力だって、冒険者になったことで上がっているのに!)
冒険者。
それはこの異世界『ファルネール』の花形職業である。
冒険者になれば、レベルという概念が取得できる。
なったばかりはレベル1だが、レベルなしとの身体能力の差はでかい。
(なのに……決めきれない!)
原因は明白だ。
いくら身体能力が上がっても、空が戦い慣れていないのだ。
(日本の学校では風紀委員として、喧嘩なれはしているつもりだったけど)
ゴブリン。
いわゆる魔物相手では、勝手が違い過ぎる。
「ぐげっ!」
と、空の思考を遮るように聞こえてくるゴブリンの声。
ゴブリンがこん棒を振りかざし、彼の方へと駆けて来たのだ。
狙いどころだ。
ここで勝負が決まる。
(ゴブリンの攻撃をカウンター気味に合わせて、後の先を取る……この身体能力ならできるはずだ!)
肝心なのは見極め。
距離が近づき、ゴブリンが攻撃に移ろうとバランスが崩れる瞬間。
そこを狙い――。
「ご主人様に手を出すな!」
と、突如聞こえてくる少女の声。
それと同時、飛来してくる小石。
その石は見事、ゴブリンの頭部に命中し。
「げげっ!?」
(予定と違ったけど、ゴブリンが体勢を崩した……今だ!)
空は全力で地面を蹴る。
そして、そのまま無防備なゴブリンを間合いに捉えると。
「剣技《一閃》!」
すれ違い様に、高速の横方向斬撃を放つスキルを発動。
ゴブリンを打倒するのだった。