第十八話 空は狐娘に異世界転移されてみる
「すごい! クーのにおいがたくさんするぞ!」
と、ベッドにコロコロ転がっているのは狐娘――シャーリィである。
彼女はしっぽをふりふり、ご満悦といった様子で空の枕を抱きかかえている。
その光景は異世界ならば、特に珍しいものでもない。
しかし、ここは日本である。
(違和感ありまくりなのは置いておくとして、どうしてシャーリィが日本に来れたんだ?)
と言っても、シャーリィが日本に来た方法はわかっている。
空の異能《道具箱》が作りだすゲートを通ったのだ。
故に問題は――。
「クー! どうしてさっきから黙ってるんだ!」
と、空の思考を断ち切るように言ってくるシャーリィ。
彼女はなおも枕をもふもふしながら続けてくる。
「せっかくシャーリィが居るのに遊ばないのか? あっ……そ、それとも……いきなり来たのは迷惑だったか?」
「いや、迷惑ではない……けど」
「けど? けどなんだ! シャーリィは気になる! クーの質問になら、どんなことでも答えるぞ!」
「シャーリィは……ここがどこかわかってる?」
「わかる! ここはクーの家だ!」
と、簡単に答えてくるシャーリィ。
だが、空の質問の本質は理解していないに違いない。
(となると、少し説明してあげたほうがいいか)
「シャーリィ、驚かないでよーく聞いてね」
「なんだ? シャーリィはクーの声も大好きだ! だから、しっかり聞く!」
と、シャーリィはぴょこんっと、ベッドの上に正座をする。
空はそんな彼女に説明を始めるのだった。