第十一話 空はスキルを買ってみる③
「クー! こんなのはどうだ? まずは拳技の《技能書》!」
と、シャーリィが持ってきたのは日本でいうところの巻物だ。
そこに記されていたのは。
●拳技《穿》
衝撃は鎧などを貫通し、内部まで到達する。甲殻を持つ魔物に効果絶大。
「へぇ~! いいな、これ。やっぱり素手の技能って、剣で相手にしにくい奴を意識したのが多いの?」
「基本的にはそうだな! こういうのもあるぞ!」
と、シャーリィは更に続けて《技能書》見せてきてくれる。
それは。
●拳技《破砕》
纏った鎧を破壊し、対象の防御力を下げることができる。ただし、鎧・外殻を再生できる魔物には、効果はないので注意。
「……ふむ」
(一見すると、効果が似通ってるけど、状況に応じて使い分けられる技能を、上手いこと選択してくれてるな)
拳技《破砕》が効く奴は、一度鎧を破壊すれば後は通常攻撃でダメージをいれられる。
それができない奴には、拳技《穿》でダメージを与えていけばいい。
(やっぱり、魔物と戦いが日常茶飯事なこの世界だと、戦闘センスが磨かれるんだな。シャーリィと一緒に技能を選びに来てよかった)
となれば、残る魔法技能もシャーリィに選んでもらった方が無難に違いない。
しかし、空はここでとある問題点に気が付く。
「ところでシャーリィ、この《技能書》って値段いくら? 効果を聞いている限り、かなり強そうだから、値段も……」
「それなら大丈夫だ!」
と、もふもふ狐尻尾をふりふりシャーリィ。
彼女は更に狐耳をぴこぴこさせながら、言ってくる。
「さっきの技能は全部初期技能だ! 例えば《穿》だったら、《穿・二連》みたいな派生があるんだ! そっちは高いけど、クーに勧めた方は安いぞ!」
「…………」
シャーリィは完璧なアドバイス狐娘だった。
となれば、もう迷いはない。
「シャーリィ、あと魔法技能もなるべく安くて、使い勝手いい奴を頼んでいい?」
「任せろ! シャーリィはクーのために、精一杯がんばるぞ!」
と、シャーリィはさっそく店内を探し回ってくれるのだった。
それから数十分後。
空は結局以下の技能を買ったのだった。
●拳技《穿》
●拳技《破砕》
そして。
●魔法 《ファイア》
火球を飛ばすことができる。オーソドックスで、とても使い勝手がいい。