第十話 空はスキルを買ってみる②
「クー! どんな技能が欲しいんだ?」
場所は変わらず怪しい店内。
言ってくるのは、狐尻尾をふりふりシャーリィである。
空はそんな彼女へと言う。
「今持ってるの技能は剣技《一閃》。剣を使った技能だから、剣を使わない技能がいいかな」
「魔法とかだな!」
「魔法ももちろんだけど、素手で発動できる技能もいくつか欲しいんだ」
「素手? クーは剣主体で戦うんじゃないのか? 魔法と剣の技能を同時に取得していくのは、それなりにいるみただけど……剣と素手を同時に取得していくのは、あんまり聞かないぞ!」
「ん~……ほら、例えば剣が敵に弾き飛ばされたときとかさ」
「剣を拾うまでの間、素手の技能で戦うんだな!」
と、そんなシャーリィの言葉。
空はそれにとりあえず頷いて置く。
だが。
(ごめん、シャーリィ。本当は素手の技能とっておきたい理由は、そもそもが全く別なんだ)
これは大前提だが。
空の将来の夢はプロヒーローである。
(ヒーローは武器を使わないのが基本。だから剣の技能は取っても、地球に帰ったときに使わないんだよな――そもそも、日本で剣なんて手に入るかわからないし)
だからこその素手と魔法スキルなのだ。
これらならば、この世界だけでなく地球でも普通に使うことができる。
(まぁ、剣の技能を買った時もそうだけど。地球で使わなくても、必要最低限のスキルは買ってはいくけど……基本は地球で使えるスキルメインだ)
と、空がそんなことを考えていると。
「クー! こんなのはどうだ? まずは拳技の《技能書》!」
シャーリィである。
空は彼女から《技能書》を受け取り、それに目を通すのだった。