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第5話:ゴブリンの誘いとお池の番人

キャミーとヌバタマとダイフクとユベシが家に遊びにきた。


ふと気がつくと、ヌバタマとダイフクがしきりにその小さな身体を動かしている。ユベシはシホに顎下あたりを掻いててもらってゴロゴロと喉を鳴らしている。それを見たダイフクもまた喉をゴロゴロと鳴らしてバタバタと羽ばたく真似をする。サムはふと感じることがあり、キャミーに 「もしかして、ヌバタマとダイフクの方は僕に何か用があるのでは?」 と尋ねると。 「あ、そうそう、それでサムが来るのを待たずに、こちらにお邪魔したわけなの。なんでも、人語を話すゴブリンが家に来たそうなの。」 「え、何ですかそれ、皆さん無事なので?って実際に行ってみたほうが早いか、シホ、ごめんちょっと早いけど行ってくるよ。」 「はーい。」 とシホはユベシに夢中になっている。サム達は副業部屋へと向かい、部屋はシホとユベシのみが残される。



副業部屋に到着すると、すぐさま視野の右上に言語が表示され、小さき者達の声が理解できるようになる。 「_サム様、大変でございます。」 サムは急いでバーチェアに座り、キーボードを叩く、 「_ゴブリンが家に来たって?一体何があったんだい?そして危険は無いのかい?」 ヌバタマはアワアワと体を動かすと、 「_続きは無為の家にてお話しましょう。」 と言うと、ヌバタマとダイフクは副業部屋の扉の横の壁に描かれた小さな鳥居をくぐっていく、それを見送ると、バーチェアから見る景色が徐々に変わり、無為の家の中へと移る。すると既にユベシ以外の家人が皆揃っていた。 「_皆さん、こんばんわ。ゴブリンがこの家に来た時のことを教えてもらえますか?」 「_サム様、わたくしが。」 とヌバタマが話し始める。「_あれはデルタグループを追い払い、サム様がその、、、一旦お隠れになった後のことでございます。その後、一度チャーリーグループとも交戦し、無為の家に帰った頃にございました。時は5の刻限を少し過ぎた頃でしたでしょうか。家に来客がありまして、最初は扉を静かに叩くので村の者が来たのかと、皆そう思って、母上が扉を開けました。するとそこには1匹の年老いたゴブリンが立っていたのであります。」



「_その者がいかに静かにしていたとて、ゴブリンが扉一枚を隔てて立っていれば、普通ならば気が付きます。ただ、その時はわたくしめはおろかお爺様すら、気がつきませんで。ただ、ユベシだけが唸りをあげておりました。」 と萩ノ、 「_はい、母上が言うように、それはゴブリンの気配を持たぬゴブリンだったのでございます。」 「_、、、もしかしてそれは、警戒ラインに掛かっても分からないものかい?」 「_いえ、警戒ラインの者達には、獣と人型の全ての者を警告対象と定めておりますので、ラインにかかればわかりますが、おそらく人かゴブリンかの判断まではつけられないかと。それに、、、」  「_それに?」 「_はい、その後そのゴブリンは、家の中までは入ってきませんでしたが、首飾りと杖を一つずつ置くと 『_お主らの主人に渡せ、これは招待状じゃ、時が満ちたら来ると良い。』 というと森の中へと言葉通り消えて行きました。」 「_森に消えるまえにの。」 とヌバタマの話を受けて雲龍が話し始める。続けて 



「_森に消える前にの、 『_不思議な気配を持つ者よ、お主は何者じゃ?』 とワシが聞いたんじゃ、するとの、 『_ghost.』 とだけ名乗って消えてしもた。何じゃろうの、不思議と気品を感じさせる者じゃったよ。」 「_ghost、ですか。それ以降は?」 「_それ以降は警戒ラインにも、現在作成中の注意ラインにも何も反応がなく。。。」 「_ラインにかからないか、その名前の通り、ghostのようだね。ゴブリンライダー、ゴブリンメイジ、そしてゴブリンghost、また厄介なものが現れたものだね。」 「_ご主人様、これがそのゴブリンが置いていった、首飾りと杖になります。」 とダイフクがそれをサムに差し出す。



その首飾りは、アフリカか東南アジアのどこかの部族が作っていたような、おそらくはゴブリンの生首で作った首飾りに見えた。サムは、確かあれは頭蓋骨を抜いて、茹でて、乾燥させてを繰り返して作るものだったと記憶していた。そしてこの首飾りも同じ製法のように見えた。ならば、ゴブリン達は火も使えると言うことなのだろう。そして杖の方はカラカラに乾いた、ゴブリンの腕のように見える。これは腕の燻製なのだろうか「 うーん、彼らは文明レベルが低いだけで人間並みの知能があるのかもしれないね。」 とひとりごちる。そして 「_ダイフク、ありがとう、でもこれは普段から身につけるにはちょっと抵抗があるね…。時が満ちるまで、この家のどこかに保管しておいて。あぁそうだghostの件、むらかみ様達に伝えるかどうか。。。」 と悩んでいると 「_あやつからは、どこかワシに似た雰囲気を感じた、おそらく人に危害を加えるようなことはすまい。」 「_どうしてそう思われるので?」 「_これも推測じゃが、あやつはワシには及ばんとしても相当に歳を経ておるように見えた。まぁそういう者は得てして、人に危害は加えぬものなのじゃよ。」 「_?、ではghostが直接人に危害を加えることはないと?」 「_そうじゃの、森の奥にでも行かぬ限り会うこともないじゃろ。」 サムがそれを受けてどうしようかと考えていると、 「_ご主人様、まさか爺様めの言葉、信じるわけではないでしょうな。警戒ラインにもかからぬゴブリンが居るということは、この家やさらには村にとっても、危険極まりないことでございます。」 とダイフク。 「_うん、それももっともだね……、とりあえず、次回のむらかみ様への報告時までの宿題にしよう。それまでにはどうするか決めるから、今しばらくは、報告は待っていておくれ、フク。」 「_はい、承知、致しました。」



「_さて、ghostの件は、以上かな。次はゴブリン狩りの件だ、今朝のむらかみ様との話は、ご隠居達にしてくれてるかい?タマ。」 「_はい、今朝方の話は全て、しております。」 「_そうか、ありがとう。」 「_また、面倒な約束をしたものじゃの、サム。もしもの時はどうするつもりなんじゃ?」 「_もしもの時は、、、申し訳ないですがご隠居や、萩ノさんにお力を借りるかもしれません。まぁ、でもそうならないように努力するつもりですよ。その為にも」 とサムはヌバタマとダイフクを見つめてからまた話し出す。 「_タマ、フク、明日からの予定だけど、まず、警戒ラインに掛かったゴブリンを追うのは最優先事項なのはこれまでと変わらない。警戒ラインにかからない場合は、北のアルファグループから順に、その集落を探すことにする。僕が在る時には指示をだすし、無い時、自動操縦の時には、タマとフクの意思で探して欲しい、と言っても、虱潰しに探すには些か森が広すぎるからね。この、ゴブリン生息予測円の中心付近を回るようにしてくれ、そして僕が無い時に集落を見つけたら、僕に集落の様子を描かせるように指示を出してくれ。また、集落付近にはゴブリンライダーやメイジがいる事が予想されるから十分に注意するように頼むよ。」 「「_はい。」」 「_さて今日は以上だ。」




6月17日、日曜日、四時起床、冷凍庫にあるマフィンとタンブラーに入れたコーヒーを持って副業部屋へと向かう。するとその最も陽当たりの良いところに、ユベシが丸くなっている。この部屋は三つので窓の中の少なくとも一つは昼間なので、日向ぼっこにはめっぽう向いている。いい場所を見つけたものだと思いながら、荷物をテーブルの上に置き、一撫でする。そして、いまは夜となっている側の窓にあるサボテンと、昨日届いたアデニウム・アラビカムを日当たりの良い側の出窓に置く。凍ったままのマフィンはしっとりとした食感はないもののスコーンを食べているようなザクザク感がありこれはこれで美味しい。冷たくなった口の中に熱いコーヒーを流し込む。体が温まったところで、Log Inする。



周りを見まわすと、仮の庵のハンモックに揺られていた。目の前にはヌバタマ、右肩にはダイフクがとまっている。サムは目をつむり、朝靄の中の空気を胸いっぱいに吸い込む。すると木々の緑の香りや、土の香り、そして霧に濡れた森の香りがした。そうして一息つくと、式たちにおはようと言って簡単な状況説明を聞く。そうして早速アルファグループの集落を探すことにする。アルファグループの生活域は村の北東部から北部とその他のグループと比較しても広い為、捜索は難航すると思われる。それに、今日は霧が深く立ち込めており視界も悪いが、サムは大蜘蛛化したヌバタマにまたがると、集落予測地点に向かって樹上を静かに進む。樹上を歩くたびに、木の葉についた靄の水滴が地面に落ち、まるでサム達が通ったところに雨が降るかのようであった。



途中ゴブリン達を樹上で何匹かやり過ごしながら、当初想定していた集落予測地点に向かう。 「タマ、今のところ、どこかの警戒ラインに掛かるゴブリンはいないかい?」 「_はい、静かなものです。この霧のせいかもしれませんね。」 「_そうか、やっぱり、この霧の中、闇雲に探すというのは難しいね。この辺で休みつつ、霧が収まるのを待とうか。」 霧に濡れた葉の上を進んできたので、サムを包む衣は濡れそぼっている。特に濡れている箇所を簡単に絞る、絞るとその水滴が下に落ちるが、今度は地面に落ちる音ではなく、水面に水が落ちる音がする。不思議に思って下を見ると、小さな池があるのに気がつく。 「_あれ、さっきまで池なんてあったっけ?、まぁいいか、ついでだから水筒の水でも入れ替えようか。」 と木から降りるサム達。池の淵に降り立つと、樹上からの水滴で、その池にはいくつもの波紋が重なりあっていた。少し覗くと、水は透き通ってはいるが底までは見えなかった。「_かなり、、深いようだね。」「_そのようですね。そういえば、この森で、池を見るのは初めてですね。」とヌバタマが言う。「…確かに、池も川も見たことなかったね。」とサムとヌバタマが話していると、突然ーー。



「_こんな森深くに、人の子とは、珍しいことだよ。」 と話しかけられる。サム達はびくりとして辺りを見回すが、何者の姿も見えない、 「タマ、フク、何か見えるかい?」 「_サム様、姿は見えませぬが、微かに神通力を感じます。どこかに何かいるようですね。。。」 「_みんな、警戒をーーー」 「_いや、警戒する必要はないよ、危害を与えるつもりはないよ。」 「_、、、失礼ですが、お姿を見せていただいても?」 「_いや、隠しているつもりもないよ。ここじゃ、ここじゃ、よーく見るのじゃよ。」 と、再び辺りを見回す一同、すると 「_ご主人様、あの小岩の上、ご覧ください、跳ねるカエルが1匹、、、ゴクリ。」 「_カエル?、あ、あぁいるね。話しているのはあなたですか?」 



「_左様、吾輩じゃよ、、、これそこの小鳥、吾輩はお前の餌になる気はないからよ?」



「_フク、飛べないように人型になっておこうか。」 「じゅるり、は!、申し訳ない。」 とポンと音を立てて童子の姿になるダイフク。 「_さ、ご安心ください。それであなた様は何者で?」 「_名乗る名もないが、強いて言えば、この漂う池の番人というところかよ。」 「_漂う池?」 「_そうじゃよ、この池はこの森の中をまるで生き物のように動く、そしてこの池に立ち入ったものをこの神域に閉じ込めてしまうのじゃよ。あぁ、お前らはまだ池の水に触っていないから、閉じ込められることはない、今のところはよ。」サムは少し空気が変わるのを感じ、小声でタマとフクにいつでも逃げられる準備をと囁く。そして、 「_今のところは、というと?」



「_吾輩の願いを聞いてくれるなら、自由に立ち去ってくれて良いよ。」



「_。。。」 「_まぁ、そう警戒するなよ。吾輩の願い聞くだけ聞いてくれよ。ちょっと困っておるんじゃよ。」 餌にされてしまうのではと考えてしまうサムは保険にと、ヌバタマにいつでも雲龍を呼び出せるようにと注文を出しておく。そしてその準備が完了すると。 「_分かりました。その願いとは?」 「_吾輩はのちょっとこの池での生活に潤いが欲しいのじゃよ、まぁ、正直言うたら暇なのじゃよ。」 「_まさか、僕たちに残れとか、交代しろというのじゃぁないですよね?」 「_ふふ、ふふははは!!」 「_!」 「_ふふふー、まぁその手もあるっちゃぁあるがよ。悲しいかな所詮この姿では遠くには行けぬ。行けたとしても何者かの餌になるのが関の山じゃよ。それでじゃ、たまに吾輩を外に連れ出して欲しいのじゃよ。」 「_外に?でもそれだと、毎度漂う池を探さねばならなくないですか?」 「_いや、お前が吾輩と縁を結んでくれればよいよ。」 「_と言うと?」 「_吾輩に名を付けてくれ、そうしたらお前のその水筒の水とこの池を繋げることが出来てよ、吾輩はいつでも其方に移ることができるようになるのじゃよ。」 「…、タマ、フク、どう思う?」 「_ご主人様、この者の神通力はさほどでもありませぬ、もしご主人様に危害を加えようとするならば、このダイフクめがあやつめを平らげて見せましょう、ゴクリ。」 「_はい、フクの言う通りにございます。危険は少ないかと思います。それに、すでにひい爺様には接続を完了しておりますので、ひいお爺様から力を借りることはかのうでございます。」 「_そうか。」 「_相談はおわったかよ?」



「ええ、それでは名前をつけさせていただきますね。ではでは、小さきカエル、《ガマ》よ、僕、サムと縁を御結び下さい。」 「うん、じゃよ。恩にきるよ。」



【世界の古きガマが再び人の神になった】

【神域《漂う池》と連結した】



「_ちょ、ちょガマさん、古き神ってなんですか!?」 「_ん?昔も昔、大昔の話じゃよ、今じゃ誰も信奉しておらんからよ、人型にすらなれん、ただのしゃべるカエルじゃよ。」 と言って、サムの右肩にとまるガマ、よく見ると頭には小さな笠と顎に白い髭が蓄えられていて、不思議とよく似合っていた。 「さ、行くのじゃよ。久しぶりの外じゃよ、楽しみじゃよ。」 とガマはノリノリだった。サムは心の中で、三回、しょうがない、と唱えて、池を後にすることにする。 「_はぁ、では、ガマさー、んーガマ仙人。これからよろしくお願いしますね。」 「_了解じゃよ。」 と右手を高々と上げる、ガマ仙人と心なしか肩を落とすサムであった。



「_そうだ、ガマ仙人、僕たちの自己紹介もしておきますね。僕は先ほど名乗りました通り、サムです。人間です。こちらの黒衣に長身の青年はヌバタマ、僕の蜘蛛の式です。そしてこちらの白衣の童子はダイフク、僕の鳥の式です。」 「_おう、よろしく頼むじゃよ。……これ、ダイフクよ吾輩は餌ではないぞ。」 「_ゴクリ、気、気をつけまする…。」 「_まぁ、分かれば良いよ。って本当に分かっておるのかよ、、、して、サムよ、お前らはどうしてまたこんな森の中に居ったんじゃ。」 「_はい、この辺にあるはずのゴブリンの集落を探していたのです。。。」 「_ゴブリンの集落?んー、そういえば、お前らに会う前に、ゴブリンを数匹池が飲み込んどったぞ。」 「!、それはどの辺りですか?」 と新しき神の出現、というかまたもやの一千万の収入に気持ちここにあらずだったサムは、今の話を聞いて本来の目的を思い出した。 「_あれはたしか、ここからEAST側じゃったよ。」 「_ありがとうございます。ガマ仙人、タマまた乗せてくれるかい?」 とサムが言うと、ヌバタマは大蜘蛛化し、フクは小鳥化し、サムの肩にとまろうとして、一瞬迷って、ガマ仙人とは逆の方の左肩にとまる。そしてサム達は樹上をEAST方向へと進んでいく。その頃になると霧もだいぶおさまり、視界が晴れていていた。



霧の中をEastに20分程進んだ頃だろうか、少し開けた土地が見えてくる。ヌバタマは警戒を強め、これまでよりもより静かにそしてゆっくりと、歩を進める。十匹以上のゴブリンが見えるようになったところでその進みをやめて、静かに木の葉のカーテンを作り始める。そしてその様子を見て不思議に思ったのか、小声でガマ仙人が話しはじめる。 「_なんじゃ、お前達、一網打尽にゴブリンを狩るのかと思って、楽しみにしていたのじゃが、そう言うわけではないのかよ?」 「_ええ、人に危害を加えない限り、狩るつもりはありません。じゃあ何しに来たのかというと、ただ観察にきたのです。」 「_観察ぅ?変なやつじゃのお前。」 「_変ですかね?まぁこの世界の常識を持っていないとは言えるかもしれませんね。」 「_サム様、あまり話されては、ゴブリンどもに気づかれてしまいます。」 「_あぁ、そうだね。では、ガマ仙人も一緒に黙って観察してみましょう。」 と言うとサムは集落の様子を見て取っていく。



まず気づくのはブラボーグループと異なり、石組みの住居のようなものは見えないこと、アルファグループの住居は太い木の枝を三角に立て木の葉をかけたテント状の住居だった。そしてその数は、、、ざっとみてもブラボーグループよりも多くみえる。いま集落にいるものだけで70〜80はいそうなので、その規模は200弱といったところだろうか、アルファグループの生息域は、北に大きく広がっている分、他のグループと比べて、その領域が広く、生息域の広さと全匹数は比例するのかもしれない。そしてそれは栄養状況にも影響があるのか、割と大きい個体が多く見受けられる。あと、ブラボーグループと異なる点は、ゴブリンライダーが少ない点だろうか、もしかしたら、石組みの柵でもないと、イノシシを管理するのが難しいのかもしれない。ゴブリンメイジに関しては、見た目の判別がつかない為、割合は見て取れない。何か判別する方法がないかと考えていると、集落の方で騒ぎが起きる。最初はこちらの存在がばれたかとおもったが、そうではないようだ、というのも、集落の特に大きな個体同士が急に争い始めたからだ。



二匹は手に木の大きな棒を持ち、互いに殴り合いを始める。その個体同士は当然のこと、まわりのゴブリン達もギャーギャーと大声を飛ばしている。リーダー争いだろうかと見ていると。次は別の個体同士が争いを始める。今度のゴブリン達はさっきのと比べても体は小さく細い木の枝で争いを始める。彼らの方は正直リーダー争いには見えないなと思いつつ見ていると、突如その小さい争いの中心に風が巻き起こる。周囲の砂や木の枝を巻き込み風はさらに大きくなる。風の中心は拮抗しているかのように見えたが、右側の個体にその中心が徐々に移っていく。そしてあっという間に、右側の個体がその大きな風に巻き込まれて飛ばされていく。そして地面を何度か跳ねた後、気絶したのか力尽きたのか、もう動かなくなった。



すると周りの歓声はさらに大きくなる。



そして、勝った個体が勝ち名乗りを上げているのだろうか両手を高々とあげている。小さな個体同士の争いが終わった時、大きな個体同士の戦いも、終盤に入っていた。双方代わる代わる殴り合っていたが、左側の個体の足元がおぼつかなくなってきた。それを見て取ったもう一方の固体は大きく振りかぶると、ふらつくゴブリンの頭をめがけて棍棒を振り下ろす。一際大きなズドンという音を立てると、それをくらったゴブリンは地面にそのまま倒れて動かなくなった。そしてまた大きな歓声が上がり、勝ったゴブリンは高々と天に腕を伸ばす。すると不思議なことが起こる。共に勝った方のゴブリンが両方とも一回り体が大きくなったのだ。サムは見間違いかと思い、式達にきいてみる。 「_今、勝った方、体が大きくならなかったかい?」 「_いんや、戦いに夢中で見ておらんかったよ。」 「_ご主人様ダイフクめも、気付きませんでした。」 「_サム様、わたくしも、体の大きさの差にはきづきませんでした。ただ……。」 「_ただ?」 「_はい、間違いでなければ、勝った方の神通力が増したように見えました。」 「_神通力が、増した?」 「_ええ、負けた方から、勝った方に力が移った様に感じました。」 「_。。。。」 ゴブリン達は互いに勝った方のゴブリンを讃えているように見える。それ以降争いは発生しなかったので、集落の様子と、戦った個体の絵を描き、この時間は一旦無為の家まで帰ることにする。


今朝は興味深い発見が多かった。と思いながら右肩に乗るガマ仙人をちらりと見る。これは無為の家に戻ったらキャミーがいるかもしれないなぁと感じるサム。ただ名前を付けただけのつもりが、いまやこの右肩には一千万円が乗っかっているのと変わらないのだ。サムは、本業と副業の違いってなんだっけと考えてしまう。勤務時間の長さだろうか、それとも収入の大きさだろうか。


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