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第3話:サムと村の思惑

最近 Log In していなかったらキャミーが家にやってきた。

6月16日(土)

「最近、Log Inしていないようね。」 とキャミー 「_あぁ、ゴブリンの観察をし始めたんですけどね、何分やり方が分からなくて、本を読んで調べていたんです。」 「来ていないのが問題ではないの、会話、出来ている?」 「_会話?」 「そう、最近あなたは何をしているの?」 「_ですから観察を。」 「どうして?」 「_どうして、でしょうね。ちょっと待ってください、考えをまとめますね…。そうですね。現在、むらかみ様よりゴブリン狩りを依頼されているわけなんですけど、、思っていたより彼らに知能があることが分かりまして、、、流石に会話は無理でしょうが、殺さずとも生活域の棲み分けができないものかと考えているんです。」



「それを彼らに話した?」 そこまで話して、サムはようやくキャミーが来ている理由を察する。 「_会話。そうですね。式の皆さんにも、むらかみ様、村主様にも、僕の目的を話していなかったですね。まずいですね。」 「そう、彼らはサムの世界で言えば同僚や部下にあたるわけよ、それをサムが何の意思表明もないまま、動かれてごらんなさい?部下はただ従うだけかもしれないけど、それは良好な関係とは言えないわ。」 「_ですよね。」 とサムはゆっくりと無為の家の面々を見つめ。皆さんすいませんと頭を下げ言う。



「皆さん、何も言わないのに付き合ってくれててありがとう。まずこれまでの協力に感謝します。そしてこれからの方針についてご説明したいと思います。ただ、これはむらかみ様や村主様にも聞いてもらいたいので、お手数ですが皆さん、村までついてきてもらっても良いですか。」 「_ふふ、所信表明と言うわけか、楽しみじゃがワシと萩ノは遠慮しておくよ。ワシらクラスが村に行くと、そこのむらかみの結界を壊してしまうことになるからの、村での説明が終わったら、ヌバタマから聞くとしよう」とご隠居が言いながらサムとヌバタマを見つめる 「_心して聞いてこいよ、ヌバタマよ。」 ヌバタマは直立不動で 「_はい、ひいおじいさま」 と答えれば、蛍雪が 「_蛍雪も、いかない、蛍雪、家、照らすだけ。」 とサムに言う。 「_そうですか、でも気になったらいつでも聞いてくださいね。」 と三人を見回し 「_フク、すまないが村まで行ってこれから行くと伝えてもらえるかい。」 「_はい、すぐに行ってきます。」 と答えるとダイフクは元の鳥に戻って村の方へ飛んでいく。「_さて、キャミーさん、タマ、向かおうか。」



外に出てみると、空にはまだ月が上がっておりいつもより断然明るい。今日は霧も出ていない。サムは星空を眺める、美しいが初めて見た時程の感動はない、月明かりのせいが、ただ見慣れてしまったのか、早いもので副業を初めて、サイドラインに来るようになって二ヶ月がたっている。ノドカもこの二ヶ月で立ち上がるようになった、サムは早朝の軽食で少し太った、この世界のことも少しずつだが分かってきたし、様々なものとの関わりも増えてきた。もう受け身で動く時は終わったのかもしれない、その事に気付かせてくれたキャミーにサムは感謝の念を覚える。村への道は、いつもと変わらぬ一本道、途中ダイフクが戻ってきて、サムの肩に留まるのでお礼も兼ねて頭を掻いてやる。月を背景に村が見え、その村から一筋の煙が上がっているのが見える。サムは一週間前もその煙を見たことを思い出し、 「_フク、あの煙はなんだろう」 と聞くと、それまでサムの指に頭を押し付けていたダイフクはちらりと見るとその首を傾げて 「_さて、なんでございましょう。」 と答えれば、ヌバタマが 「_そういえば最近は毎日煙が上がっていたように思います。」 答える。 「_そうか、じゃあ話が終わったらついでに聞く事にしようか」 とサムが言うとまた静かに村まで歩くのだった。



村に着き、村主の屋敷まで人影のない静かな道を進む。屋敷から離れた南東の方角、煙が上がっている。サムはあの辺はまだ立ち入ったことのない場所であるなと思ったのと、あの煙の匂いだろうか、うっすらの村の中を、いつもと違う香りが漂っているのを感じた。村主の屋敷につくと敷地の一段上がっている所に、むらかみが座り、煙を見上げていた。むらかみは視線はそのままにサムに話しかける 「_ウボシがの、死んで天に上がっているのだ。人の命は短いの、ついこの間生まれたと思っておったのに、すぐに年老いて死んでいく。まぁウボシは長くいきた方かの。」 「_、、、そうですか、あの煙は葬儀の煙なのですか。ウボシさん、お会いしたことはありませんが、ご愁傷様です。」 「_ウボシが天に上がりきるまでにはまだ時間がある、この後にでも、会ってくると良い。」 サムはこの言葉の意味をはかりかねたがキャミーが 「_サム、この世界の葬儀はあなたの世界とはまた違ったやり方なの、後で聞いてみると良いわ。」 と言うので。 「_そうですか、そうします。」 とだけ答える。むらかみは立ち上がるとさて行くかと言って、サム達の先を歩く、屋敷の入り口は開いていて、その横にツバサが佇んでおり、そのまま屋敷の奥の間へと進む。奥の座敷には村主が座っており、さらにその奥一段高くなっている板の間に、むらかみが座る。



「_して、何用じゃ、マレヒトガミよ。」 とむらかみが聞く 「_はい、まずは本日は僕のためにお集まり頂きありがとうございます。今日は僕の事を話しに参りました。」

 「_お主の事?お主はザイシヤクの街から来た、薬師見習いの男という事以外に何かあると言うことか?」 と村主が怪訝な声で聞き返す。サムは、はい。とだけ答えると、話を続ける。 「_まず、僕は、むらかみ様が言うようにマレヒトガミ、客人神でございます。要はここよりも別の世界から来たものになります。」 「「「「_別の世界?」」」」 とキャミーとむらかみ以外は聞き返す。 「_はい全く別の世界、ここよりも一部は進み、また一部は進んでいない世界です。と言っても意味がわからないのが現実でしょうがまずはお聞きください、僕はおそらくはむらかみ様より上位の神によって、この世界の緩やかな発展を申し使っておりますし、またその力を持たされていました。」 といってチラリとキャミーを見るサムは続けて 「_その為、僕の行動というのは、何を持ってもこの世界に人に影響を及ぼしてしまいます。ですから、まずは皆様に今後の僕の行動方針について、お話しさせて頂こうと、今日はお時間をとらせていただきました。」 と言い終わると、村主が話をしようと口を開けるがむらかみが 「_シュウよ。面白そうじゃ、まずはマレヒトガミの話を聞いてみろ。」というので、口を閉じてこちらをみる村主。サムはありがとうございますと言うと一呼吸置いて話し始める。



「_まず、大方針から、僕は先ほど言った僕の世界からの技術や文化でこの世界を変えようとは、全く思っていません。それは僕がこの世界に来て、まだ二ヶ月ですが、式や村の人々の生活を見て誰一人として変化を望んではいないと感じたからです。そしてそれは僕も同じです。僕はこの世界の今ある姿を尊重します。ですから僕の目的は、この世界の日常の発展ではなく日常の維持であるということ。ですが、この世界の者たちが日常の延長線上として協力を望むならば、僕が得たこの世界の知識で持って、客人神としてではなく、ただのサムとして協力は惜しみません。」 「_自分は人ではなく神だと言っておいて、結局その力は使わずに、人として動くということか?」 と薄っすらと笑みを湛えながら言うむらかみ。 「_ふふ、そうですね。先程は世界を変える力を持つと言いましたが、訳あって今はその力を持っていません。なので僕自身の力はもはや常人と同じです。ですが式の協力を得られる立場という所だけが、他の大多数の方とは違う所でしょうか。」 と答えるサムに続けてむらかみは 「_では今、マレヒトガミに依頼しているゴブリン狩りはどうするのかの?というか神通力も使わずどのように今回ゴブリン狩りを行うつもりなのかの?」 と言うと、村主も少々厳しい顔をしてサムの方を見てくる。



「_はい。村の人にとって第1の問題はゴブリン狩りのことですね。まずはそこから話しましょうか。まず僕は積極的にゴブリンを狩るつもりはありませんーー」 とサムが言うと 「なんだと!」 と村主が割り込んでくる。だがサムはにこりと微笑んで続ける。 「_僕は最初にこの世界の今ある姿を尊重すると言いました。それはゴブリンもまた含まれます。」 「お主はゴブリンの味方をすると言うのか!」 「_味方はしません。僕の家人や村の方やその財産に危険があるならば迷わず狩りましょう、だがその危険がないならば彼らをむやみに殺すことはしません。」 「_お主は何を言っているのだ!こちらはゴブリンを狩ることを条件に食料を出しているし、何より村人に危険があってからでは遅いのだぞ!」 と激昂する村主、サムはその様子をみても焦ることなく、やはりゆったりと余裕をもって会話を続ける、 「_まぁ落ち着いてください。タマ、例の物を」 と言うと、タマが大きなリュックから何枚もの木の板を取り出し並べていく。



「_むらかみ様、村主様、そしてキャミーさん、こちらは村のEAST域の地図とゴブリンの生息図になっております。黒い線は土地の高低を四つの赤い丸はゴブリンの生息範囲予測円になっております。黒いバツ印は村と無為の家、仮の拠点となっております。また、赤いバツ印はゴブリンの集落になります。今は1点のみですが、おそらくあと3箇所はそれぞれの赤丸内のどこかにあると思われます。」 ほう、と面白そうに眺めるキャミーとむらかみ、初めて見る描き方の地図に戸惑いを見せるがよく見てその精度に気付き息を呑む村主、そして聞く 「_ゴブリンの集落とはなんだ?」 「_言葉の通りでございます。ゴブリン達がこの村のように、群れをなして住んでおります。むらかみ様、村主様、森の奥この辺りに過去の人の集落跡があったりはしませんか?」 「_拙僧は聞いたことがない、むらかみ様はどうでしょう?」 「_ふむ、場所も時も覚えておらんがの、森に没した集落はいくつかあったはずじゃ、ワシからも聞いて構わんかの?、ゴブリンどもの生息予測円といったかの、それはどうして4つなのじゃ、ゴブリンどもは一塊ではないのかの?」



「_はい、予測円の重なっているところをご覧ください。ここでは過去何度かゴブリン同士争っているところを目撃しました。大抵は痛めつける程度で終わりますが、時に殺しあうこともありました。ですからゴブリンは一塊では無く、少なくとも村周辺には4つの塊、群れがある様なのです。それは、むらかみ様や村主様から聞いていた話、ゴブリンが大挙して押し寄せてくるという話とは異なります。」 「_4つも…」 と村主は呟く、 「_はい、4つです。ですが、悪い事だけではないのです。少なくとも彼らは、SouthNorthへの移動をそれぞれ群れで潰し合う為、SouthNorthへの広がりは今以上には広がらないのです。なので、EASTの方向、村の方向にやってくるゴブリンのみを追い払えば良いのです。」



そこでキャミーが割って入る。 「でもそれって、ゴブリン達の群れの数に寄らず、広範囲を抑えないといけないのは変わらないんじゃない?」 「_ええ、そうです。大変ではありますが、こなせないことはないです。それに、僕たちがゴブリン追いを始めてからというもの、村方向への進行回数も日に日に減っていますし、未だにむらかみ様の結界に到達していないのは確かなのです。」 「_それで?いずれ村に近づくゴブリンを0に出来ると?それはすこし楽観的じゃない?」 「_はい、完全に0に出来るとは思っていませんし、不確定要素もあります。」 「_不確定要素って?」 「_はい、既にむらかみ様、村主様にはフクを通じて伝えましたが、イノシシを駆るゴブリンライダーと風の神通力を使うゴブリンメイジの件でございます。彼らの機動力、攻撃力はとても楽観視できるものではございません。ただ、」 「_ただ?」 「_はい、その恐るるに値するゴブリンライダーとゴブリンメイジですが、不思議と集落の外では見ないのです。それに、むらかみ様や村主様も直接は見たことが無いとの事、正直、それらのゴブリン達が村に攻めてくるようなら、狩るしかないとは考えているのですが、なぜだか。。。」 「_攻めて来ぬ、か。」 とむらかみ。



「_はい。なので、ゴブリンの生態とは謎が多く、今後我々は彼らから身を守って行く為には知識が足らないということが分かっています。」 とサムが言うと村主は 「では、分からないからと言って、少しのゴブリンを追い払うのみで、奴らの行動が分かるまで様子を見ているということか!」 と怒気をはらんで返す。サムは暫し考えた風を見せたのち、こともなげに 「_はい、そうです。」 と言うとそれには 「_なっ」 と言葉を失う村主。 「_当然危険があれば狩ることは惜しみませんが、少なくとも、次の3つのことは確かめたいと考えています。1つ、村への接近がどうして例年よりも4ヶ月も早いのか。2つ、どうしてゴブリンライダーやゴブリンメイジが集落外に出てこないのか、3つ、ゴブリンと村人との住み分けは可能か。です。これらが分かれば、今年以降ゴブリンによる被害は減らせるはずですし進行速度が早まった理由がわかれば、逆に遅らせることも可能になるかもしれません。ですから。。」 と終始落ち着いて話すサムにむらかみはため息を1つつくと 「_こちらが強く言っても聞かなそうじゃの、、まぁ、こちらもマレヒトガミに頼らねばならぬ身、それにマレヒトガミの確かめたい事の結果が分かれば、、分かればの話じゃが得もある。」 「_むらかみ様、まさかこの者の言うことをお許しになると?」 「_うむ、条件付きでの。」 「_条件とは?」 とサムが聞くと。



「_ワシの結界にゴブリンを触れさせぬこと、村人の被害が無い事、週に1度は状況報告する事。もしいずれかを守れぬ場合は、マレヒトガミとその式の総力をもってゴブリンどもを殲滅させる事、そして、その後は、今与えている小屋から出て行ってもらう。」 と言う。サムがしばらく黙っていると、むらかみが続けて 「_マレヒトガミの式の強さであればゴブリンの殲滅が容易いということは分かっておるよ。」と言うと、次は村主が 「_なっ、であればすぐにでもやらせればーー。」



「_それはなりません。彼らもまた村の生態系の一部、それをいたずらに無くしてしまっては、一体何を産み出すか、、、こう考えてください。現在村のEAST側にはおそらくは500前後のゴブリンが生息しているはずです。ということは彼らの食物となるものも存在し、彼らを支えています。その環境から、ゴブリンだけが消えたらどうなるでしょう。一時的には村も、彼らの食物になっていたものも平和になりますが、その後は、イノシシなどが増え作物への影響が出てくるかもしれませんし、ゴブリン達を潤してきた食料豊富な森の資源を狙って、未だ立ち入っていない森の奥からさらなる何かが現れるかもしれません。そしてそれはゴブリンよりも村に危険を及ぼすものかもしれません。それに、、、」 ちらりとむらかみと村主を見るとサムはさらに続ける。 「_それに、はたして、式の力を使ってゴブリンのみを殲滅させることができるかどうか、、、ことによっては、EASTの森そのものが、消えて無くなってしまうかもしれません。それはきっと村の人にとっても問題でしょう。なのでゴブリンの殲滅はこの村にとって未知の危険をはらんでいるのです。ですから、これは村全体のことを考えればこその行動とお考えください。ということでーーーむらかみ様の言うゴブリンの殲滅についてはのめませんね。」



しばし見つめ合う、サムとむらかみ、 「_、、、、、わかった、わかった、殲滅はやめておこう、だがしかし、結界に触れた場合と村人の被害が出た場合には、村に近づくゴブリンは全て刈り取ってもらうぞ。その後に出て行ってもらう、村に危険を及ぼすものを近くには置いて居れぬからの。」 「_はい、それでしたら構いません。お受けいたしましょう。村主様も、構いませんか?」 「……」 と沈黙を続ける村主にむらかみが 「_シュウよ諦めい、この者達は、その気になれば、何処へでも行ける。我らの人手も足りぬ中、ゴブリンを追っ払ってくれるのじゃ、それにもしもの場合はーー。」 「_もしもがあってからでは遅いのです!よいか、サム、拙僧は村人に被害がでることは許さぬ!」 「_もとより出すつもりはありませんが。はい、承知しました。その条件でお受けいたしました。」



しばらく、緊張した空気が辺りを包み、だれも言葉を発さない時間が流れる。するとその時、村の話は以上かしらとキャミーが話し始める。 「_サム、村とゴブリンの件は約束を違えない様にね、これは私からもお願いよ。そして話を大分戻させてもらうわね。あなたはこの世界を発展させず、維持に務めるという件よ。」 サムはキャミーの目を見て頷くと、視線をむらかみと村主に移す。 「むらかみ様、村主様、この村に対して、何か望みはありますか?」 むらかみは 「_今まで通りで良い。」 と村主は 「_拙僧の望みはまずゴブリンの被害が出ぬこと、そして村人が息災であることと、あとは親から受け継いだこの村が息子、孫、その子と終わりなく受け継がれていけば良い。」 ホッとしてニッコリと微笑むサム 「_むらかみ様、村主様、僕はこの村の近くでこの世界を始められて良かったと心から思います。」 続けてキャミーを見つめ 「_キャミーさん、僕はこの世界に対して何もしないというわけではないのです。まぁ、自発的に影響を与えるつもりがないという点では同じですが、ただ、人々が望む事を僕が見つけ、それをその人々と共有しつつ、望むものをこの世界にあるもので協力して創り出していきたいのです。それが、僕が考える、この世界の発展になります。」 とゆったりとした微笑を浮かべて話すと 「_サム、あなたの方針は分かったわ、私もあなたを選んで良かったと思うわ。ただ、一言だけ言わせてね。いい、私が言うのも何だけど、この世界はあなたが思っている程甘くはない。あなたのやり方だと痛い目を見ることもあると思う。そしてもし痛い目を見ると先に分かっていたとしても私は介入しない、いえするつもりが無いわ。」 「_はい、心得ておきます。」 と二人で微笑み合う。サムはそこから視線を移し、そこまで空気を読んで黙っていた、ヌバタマとダイフクに話しかける。 「_先ほど言ったこの世界の人々の中には、当然タマとフクたち式も含まれている。式達とは一方的に協力するのではなく、僕からも協力して日々を過ごしていきたいと考えている。だから何か協力してほしい事、共有したい事があれば何でも言ってほしい。最初に僕は別の世界から来たと言ったね。そのことについては家に帰ってから、話すことにするよ。」



「_サム様。」 「_ご主人様。」 と二人の目が心なしか潤んで見える。すると。久しぶりに聞く声が頭に響いてくる。



【式ヌバタマが《異世界出張》の権能を得た】

【式ダイフクが《異世界出張》の権能を得た】

【式ユベシが《異世界出張》の権能を得た】



「_この声も久しぶりね。早速だけど新たな権能の説明よ。《異世界出張》の権能を持つものは、サムの世界に、厳密にはあなたの家まで、出張が可能になるわ、でも出張時にはその神通力は殆ど失われる制限があるから、ヌバタマもダイフクも元の蜘蛛と小鳥の姿になるわ。これはあなた達の“信頼関係”が構築された場合に発現する権能なの、サムがこれからやろうとしていることは、これまで以上にあなた達の連携が必要になるはずよ、だからこの権能を役立ててちょうだい。」 「_ちなみに雲龍と萩ノは神通力が強すぎてこの権能は持てない、だから蛍雪とは今後の付き合い次第よ。ユベシは、、なんでしょうね。なんで同じタイミングで“信頼関係”が構築されたのかしら、木の精なのに猫だし、元の姿になったら木だし、どうやって出張するのかしら、、、私にはわからないわ。あなた達で確かめてちょうだい。」 「_はい、ユベシの件はそうします。タマにフク、これからもますます宜しく!」 「「_はい!」」



「_ではむらかみ様、村主様、今日はお時間を頂き、ありがとうございました。先ほどのお約束必ず、遵守すると誓います。それでは今日のところは失礼しようかと思いますが、かまいませんでしょうか。」と立ち去ろうとすると、むらかみが引き止める。「_まあ待て、マレヒトガミよ。帰りにウボシに会っていけ、この世界の葬儀、見てみるが良い。ツバサよ頼む。」



ツバサに案内されて出て行くサム達をその場に座したまま見送る、むらかみと村主、 「_して、どうだったかの、あのマレヒトガミは」 「_そうですね。今のところ毒では無さそうですが、、ゴブリンにまで慈悲をかけるとは、今後何か問題に繋がるかもしれませんな。だがこちらもゴブリンに手を出す余裕が無いことも確か、忌々しいですが今は様子を見守るしか無いですな。」 「_そうだの、だが毒になられても困るでの、保険が欲しいところじゃ。シュウよ。あの男の知り合いを増やすのが良いかの?」 「_そうですな。以前から話していた通り、保険としてあやつとの縁を持つものをこの村に増やすべきでしょうな。取り急ぎうちの倅、ヨナンをやるのが良いでしょうな。ヨナン!、聞いておったか!」 と声を張る村主、すると村主の坐したる場所のほど近くの扉が開き年の頃十歳くらいの少年がその頭を下げて座っていた、ヨナンと呼ばれたその少年は「_はい、聞いておりました。以前からの申し付け通り、奴らとの縁を結んでまいりましょう。それでは行ってまいります。」 「_うむ頼んだぞ。」 と駆け出していくヨナン。さらにそれを見送ると、 「_さらに念の為、やはり町から狩人を連れてきた方が良いようですね。」 「_そうじゃの、マレヒトガミ達が協力せねばならんと思わせるように崖崩れが起きた、と嘘をついたが、、、村に近づく全てのゴブリンを狩ってくれぬ以上は、こちらでも武力を持っておく必要がある。あやつらにバレぬように呼べるかの?」 「_は、必ずそうします。」



とサムの思惑と村の思惑が、天に高く伸びる煙の元、交わって行くのだった。


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