第5話:絵描き、議論する
エノグは酒場からの帰り道、まるで狐につままれたような心持ちで歩いていた。 《貴方達の目的は知っている》 とそうあの店員は言っていたが、一体何者なのだろうか。その後も短い会話をしたが、本当に分かっているようで、でも何か只の新手の宗教の勧誘のようにも感じられ、どうにもこうにもまた悩みの種が生まれてしまったとそう思えた。あの場での会話では、 《貴方は貴方の家で、貴方が成すべきことをしなさい、ただし家の中には貴方の真の仲間と真の敵がいるから心を開きつつも、油断はしない事、でもその中でも真の仲間を見定めなさい》 と 《これ以上はまた次の機会に》 のそれだけだった。的を射ているような、なんなような。だが、自分がこれから行う事は店員の言ったことによらず変わらないと考え直すと、先の事を考えながら、兄姫村の外垣を一周ぐるりと回るようにして、東門から村へと入る。
村の目抜き通りを歩いていると、薬師のミケが店頭でおばあさんと話しているのを見かける。ミケもそれに気が付いたが、目線はおばあさんにすぐに戻す。何の気なしにエノグも立ち止まり、店頭を眺める、様々な草が並んでおりどうやらここは薬屋のようだとぼんやり考えていると、 「_なんだい? あんたもこやつと同じで毒草を欲しいってのかい?」 「_いえ、ですから、ランゾの根は確かに毒ですが、極少量であれば痛みを和らげる薬となるのです。」 とおばあさんとミケの会話に巻き込まれる。どうやら、ランゾの根をこの薬屋のおばあさんから調達しようとしているらしい、だが 「_なんだい? そんな話は聞いたことが無いね。それにこの店は薬屋であって毒屋じゃない、そもそもそんなものの取り扱いがないんだよ。」 「_では、サインの根はどうです。もしかしたら、そこに紛れ込んでいるかも、、、」 「_あんた、このババアの目が節穴だってのかい?」 とどうやら騒ぎになり始めてしまっている。エノグはここで助け舟を出すつもりで、 「_ミケさん、もういいだ、おらの怪我の心配をしてくれてありがとう、ばあさま、このミケさんはね、おらの為に痛み止めを処方してくれようとしていたんだ。だからあまり悪く言わないでほしいだ。」 「_ん、なんだあんた怪我してんのかい? それなら毒じゃなくてちゃんとした薬草を出してやるよ。」 とおばあさんはミケを睨みながら、エノグへ語りかける 「_ああ、おら、うんと昔に膝を怪我しちまってね。怪我自体は治って普段は問題ないだが、冬になると痛んでね。痛み止めになる薬は無いかね?」 「_ああ、それなら、これだね。」 と一度家の中に入って、木の枝を数本持って出てくる 「_これはゼパムの枝でね、これを煮出してとった汁を飲むといい。」 「_へぇそうか、ありがとう。試してみるだ。」 とエノグは言いながら、ミケへと視線を送り肩をかるく叩き、一緒に立ち去ることにする。そうして店からしばらく離れると
「_エノグさん、どうして邪魔をした?」 そう言うミケの目は血走り、目の下は隈で黒く、冬だというのに脂は浮かび、痩せた青ざめた顔をしている。エノグはその様子に多少押されながら 「_ミケさん、まずは落ち着くだ、あそこであれ以上やれば、おら達の存在が悪い意味で目立っちまう。」 と言うが続けて 「_しかし、ランゾの根が無いとーー」 と感情が高ぶりやや大きくなった声でミケは話し始めたため、慌てて口元に指を当てると、 「_しっ、声が大きいだ。よっく考えてもみろ、おら達の仕事はここじゃぁ口外禁止だ、って事はこの村に内緒ということだ、考えるに、、、おら達のやることはこの村にとって害になりかねると思うだ。だからもし、おら達が何かしら良からぬことをしそうと噂でも立つと、村人達からの妨害を受けるかもしれん。それはきっと仕事への悪影響になるだ。焦る気持ちも分からんではないが、もっと落ち着いて行動を取るべきだ。それにその顔色、ちゃんと飯は食っているだか? 本当に酷い顔をしているぞ、そんな顔じゃあのばあさまも、もし草の根を持っていたとしても売ろうとはすまい。」 「_落ち着け!? あんた俺に落ち着けっていうのか!!? 逆になんであんたは落ち着いていられるんだ? あんたは心配じゃないのか? 俺には妻と今にも生まれそうな子供が居るんだぞ!! 他の奴らとは違うんだ!! それにあんたのその目、あんたのその目はキジシロ達と同じ目をしている、どうせあんたも俺たちを駒の様にしか見ていないのだろう!!」 と激昂し掴みかかってくるミケに対しエノグは 『ドスッ』 と鳩尾に一発拳を叩きこむ。そうして力なく倒れ込むミケをエノグは相手の肩を持つようにして 「_やれやれ、結局力で何とかしちまうのはおらの悪い癖だな。しっかし、ミケさんには痛い所つかれたかもなぁ。」 と呟きながら、足早に家路にへとつくのだった。
夕食の時間、部屋の中には大きなテーブルが四つあり、その三つにハンターたちが座っている。エノグはミケの隣が開いているのを見つける、先程の詫びをする為に向かうがミケは皿をもって外に出て行ってしまう、これは相当嫌われたらしい。しばしその場で立ち止まり、しょうがなく、エノグはハンターが誰も座っていないテーブルに向かう、ここはメホソのみが席についているテーブルで、そしてそのメホソに目が合うと 「_やあ、エノグさん、今日もこちらのテーブルですか? どこかのテーブルに交じってもらってもいいのに。」 と言われてしまう。 エノグは 「_いんや、誰かの席を取ってしまうのは心もとないからな。」 と言うと、ハンターたちが座っているテーブルを眺める。席順は昨日と同じ、変わった点はミケが席についていないというところだ、エノグはこのテーブルの席順から、ある程度ハンターたちの派閥が形成されているのだろうなと考える。現に今朝会ったクロとパステルは同じテーブルについているし、村の外の集会所で見かけたシロとアメショも別の同じテーブルに付いている。ミケは、一人離れた席についていたので、そのテーブルの面々はどの派閥にも属していないのかもしれない。エノグはさて自分はどの派閥に入るべきか、それとも入らないべきかを考える。
テーブルはそれぞれ6人掛けで、テーブルAには盗賊のクロ、女史のパステル、生物ハンターのサバトラ、医者のチャトラ、テーブルBには動物学者のシロ、商人のアメショ、法師のサビとグレー、テーブルCには薬師のミケ、法師のチャシロ、弓使いのトビ、そしてテーブルDにはメホソとエノグだった、キジシロとハチワレはおそらくだがテーブルAD以外に座っていたのだろうと推測する。
そうして食事が一段落する頃をみはからって、エノグは 「_メホソさん、聞きたいことがあるだが。」 とメホソに言うと、周囲の全ての者の目と耳がこちらに向くのを感じる。そうして注目が集まるのを確認してから、ゆっくりと話し始める。 「_今日、村の外を一人で回っていたらだな、集会所を見つけただ、それでそこで森の中を案内できるものが居るかを聞いたんだがね、一人適任が居るらしくてな。今聞きたいことはだなそういう外部の者の力を借りても良いのか? ということなんだ。」 それにはメホソは少し困ったような表情をして 「_、、、ここに地図があります、それだけでは足りませんか?」 とエノグを見つめる。 「_地図は昨日見せてもらっただがな、あれはどう頑張っても三、四日はかかる距離だ。となると雨風をしのげる休息場所も必要だが、そんなものを見つけながら行くのは何度森に入っても足りん。」 「_それなら休息をとれる場所だけ教えてもらえば良いのでは?」 「_いや、あんな目印も何もないような地図に、休息場所を書き込んでくれだなんて無理な話だよ、それにあの地図だと森の奥の谷の形状くらいでしかDの居場所を判別できないだ。」 「_うーん、一応精確に書かれているとのことなんですがね。」 「_もし空でも飛べれば、この地図で分かるかも知れんが、おら達は地を這って行くしか能がないからな。」 「_、、、そうですか、ならしょうがないですね。ですが外部の者を帯同していいのはDが絶対に見聞きできない範囲までです。もし帯同者にDを見られた場合は僕に報告してくださいね。」 とメホソは言うとにこりと微笑む。 エノグはその笑顔の裏を想像し、首を軽く横に振ると 「_、、、分かっただ、絶対に見聞きできないところまでで帰ってもらうだ。」 とメホソに誓う。 「_それで、いつから行かれますか?」 「_そうだな、早ければ明後日の早朝だろうかな。」 「_早速ですね。」 「_そうだな、善は急げだ、、、で、そういえばなんだがDの幼生体確保の決行日はいつなんだ?」 「_? あぁ、そういえば言っていませんでしたね。すみません。それは次の満月の日、なのでだいたい一月後ですね。」 とメホソは軽く言うが、家の中はたった一月後とかなりざわつく、
エノグは 「_メホソさん、それはかなり大事なことだぞ。」 と言いながら、ハンターたちの反応を見て取る。 するとそのうちの一人、パステルが 「_メホソさん一月後ってなぜそんなに早く、、、そんなに急ぎならもっと早くに詳細を教えて頂かないと!」 と半狂乱になって騒ぐ、それには賛同者も複数人いて、皆でメホソを責めたてる。 しかしメホソは悪びれる様子もなく 「_いやいや、キジシロさんとハチワレさんの顔色を窺うばかりで何も行動しようともしなかった皆さんも悪いんですよ?」 と言ってのける。辺りは一瞬黙り込んでしまうが皆一様に不安そうで、メホソを責めるような表情は変わらない。メホソはやはりそれにかまうようなそぶりも見せず、そしてさも今気が付いたかのように 「_そういえば、キジシロさんとハチワレさんはどうしたんでしょうね? まさか本当に町に仲間を探しに行ったのですかね? 誰か知りませんか?」 と薄ら笑いを浮かべながら問い、それにはクロがテーブルBのアメショ達を見つめながら 「_あいつらの事は知らんが、居なくなってせいせいしている。あいつらがいてはどうせまともな議論は出来なかっただろうからな。しかしいつ戻るかも知らんからな、今の内に決めるべきことは決めておこう。」 と自然に答える。そのクロの視線の動きにエノグはアメショ達とキジシロ達が同じグループであったのだろうと判断する。
それを受けてアメショが 「_我々だって好きでキジシロ達と行動を共にしていたわけではない! あいつたちに従わなければどうなるか、それは皆分かっていたことだろう?」 と返せば、パステルが 「_まって、今はそんなことどうだっていい、決行日が一月後なのよ? 今はそれについて議論すべきだわ!」 と叫ぶ、一同が静まり返る中、エノグは静かに 「_仕事の決行日が約一月後ってのは、ずらせないものなのか?」 と問う、メホソはその口元に湛えた笑みをそのままに 「_ええ、変えられません。」 と返すが、ここはエノグも引き下がらず、 「_それはどういう理由からだ?」 「_それ以上たってしまうと生まれたDの幼生体が大きくなりすぎて手に負えなくなってしまうんです。荷物は軽い方が成功率は高くなりますし、それに誰だって餌になんかなりたくないでしょう?」 「_、、、、、そうか。それではしょうがないようだな。」 とあたりを見回すエノグ、こうなってくると自身のウリョシ町での時間の浪費が悔やまれる。
すると動物学者のシロが声を上げ、メホソに問う 「_Dの雛だがな、もし仮に親から引き離すのが成功したとして、運搬中に餌をやらなくても問題ない物か? エノグさんが言うには行きにも三、四日掛かるのだろう? 帰りにも同じだけかさらに時間が掛かることを考えると、その間に弱ってしまわないものなのか?」 それにメホソは 「_、、、皆目見当も付きません、その辺はシロさん、パステルさん、サバトラさん、何か知見はありませんか?」 と問いで返す。するとパステルは 「_Dはその存在のみで神性を持っているので食べなくても平気だとか、それとは逆に一回の食事にクジラ一頭丸まる食べただとか、という伝承はあるわ。でも伝承にあるのは成体の話のみで、幼生体の話は殆ど無いのが現状なの、でも心配なら何か餌を上げた方が良いんじゃないかしら?」 それを受けて動物学者のシロは 「_うむ、鳥の雛の話なのでDの幼生体と混同してよいものかというのはあるが、一部の鳥の雛は親が餌を運ばなくなるとその日のうちに餓死してしまうという種もある。ここは念には念を入れて毎日食事を与えるのが良いかと思う。」 と答えをだす。サバトラは無言だった。エノグは 「_ならば、、、運搬中に狩りを行うか、、、いや現実的でないだな、、、運搬経路上に前もって餌となる物を置いておく必要があるだな。。。って何食べるんだ?」 と、そのような議論で夜は更けていく。
次の日朝食を食べてエノグが集会所に行こうとすると、メホソに話しかけられる。 「_そうだそうだ、エノグさん、一昨日も昨日も言い忘れましたが、村での行動は原則二名以上での行動をお願いしています。だから出かける場合には、他のだれかを連れて行ってください。」 「_そうだっただか、、、では、、」 「_では私が行こう。」 とサビが名乗りでる。 「_今はミケの護衛が任務ではあるがな、あの森は殆ど獣やモンスターは出ない、法師は二人も必要あるまい。」 「_そうだか、ではよろしく頼むだ。」 とサビと連れだって集会所を目指すことにする。道の途中でサビが 「_いや、ちょうど良かったよ、俺達はずっとキジシロ達と行動していてね。それで大きい顔をしていたつもりはないが、あいつらが居なくなるとあの家の中じゃ、少し肩身が狭くてね。」 と話しかけてくる。 「_そうか、いろいろ大変だったんだな。」 「_ああ、皆はどう思っているか知らないがね、あいつらにはこのまま戻ってきてほしくないよ。。。」 「_、、、であれば、今の内に家の中の面々の垣根を取り払わないとだな。」 「_そうだな、しかしエノグが来てくれたおかげで何とかまとまるんじゃないかと思えて来たよ。」 「_ははは、それはありがたいことだ。」 「_それで、これから何処へ向かうんだ?」 「_ああ、昨日いった村の外の集会所に行こうと思っている。」 「_ああ、あそこか、、、」 と気が進まない表情を見せるサビ、エノグはそれが気になってどうしたのか問うと 「_うん、あの場所はな感覚が狂うんだ。なんといえばいいかな、、、法師という者はだな、その修行により、他の人にはない神通力視というようなものをもっているんだがね。あの場所に行くとそれが一切利かなくなるんだ。法師以外の人で例えるならば、視覚や聴覚が突然利かなくなるという感じなんだ。」 「_? それは他の法師、グレーさんやチャシロさんも同様なのか?」 「_チャシロには聞いたことはないが、グレーもそうだと言っていた。共にこんなことは初めてでね、だから正直あの場所には行きたくはないんだ。」 「_そうか、では、離れたところで待っているといいだ。用事が終ればすぐに戻るから、そのくらいならばメホソさんも目くじら立てまい。」 「_ああ、そうさせてもらう。」
集会所に着くとカウンターには既にあの女性店員が居り、座って編み物をしている。エノグは店員の方へと向かう。店員は 「_あら、おはよう、今日も一人なのね? 大丈夫なのかしら?」 となにやらこちらの規律に詳しそうな様子を見せる。エノグは集会所の外に座っているサビに目を向けると 「_一人ではないさ、ただ少し離れているだけだ。」 と特に驚きも見せずに答え、早速と本題に入る。 「_それで昨日話した森に詳しい者の事だがな、明日の早朝からでもお願いできるものか?」 と話を目的の方へと向けてしまう。「_それは急ね。でも貴方運がいいわ、あの子今日にはこの屋敷に来る予定だから、話しておくわ。」 「_そうか、それは良かっただ。」 「_それで、今日はお酒は飲むのかしら?」 「_いんや、今日はやめておこう。」 とエノグは言うと依頼板のほうに向かい、依頼表に目を通す。そうして一通り見終えると再度店員に言葉を向ける。 「_ここではランゾとかサインとかの根の採集依頼を出して対応してくれる者は居るかね?」 「_毒草と薬草とじゃ、だいぶ違うけど、欲しいのはどちらかしら?」 「_毒の方といったら断られるか?」 「_いえ、依頼を受ける者がいれば、わたくしめは別にかまわないわよ。ただ、今はそういう依頼を受ける方が不在でね。もしあと半月待ってもらえるなら、取って来られるとおもうわ。」 「_そうか!? ちなみにその者が採集できる確率はどの位だ?」 「_100%よ。」 「_凄い自信だな。」 「_えぇ、我らが神に無理なことはないわ。」 「_、、、」 とまた神の話が出たなと身構えていると、 「_ちなみにその神から貴方に伝言、 ”先方に話が出来るか確認しておく” だそうよ。」 と言う言葉が投げかけられる。 「_先方?」 「_そ、先方。」 エノグは思考を巡らせるが、理解は及ばない。そうしていると集会所にシロとアメショがやってくる。すると店員が二人にも聞こえるように 「_森の中への案内の件、ランゾの根の採集の件、双方お受けしたわ。」 と大きな声で話すので思考を中断し 「_そうか、では依頼料だ。」 と言って財布ごと渡すと 「_まいどあり。」 と言いながら少しのお金だけを受け取って残りを返してくる店員。思ったより多く返ってきたお金にエノグは 「_いやに良心的な値段だな?」 と言うが、「_これは村の為でもあるから。」 との小声で返事が返ってくる。本当にこの者は自分たちをどこまで把握しているのだろうかと半ば面白く感じつつあるエノグは微笑を浮かべながら 「_そうか、ではよろしく」 というとサビと共に村へと帰っていく。
家に戻ると、少し怯えたようにこちらをみるミケに対して、「_半月後であれば集会所の方で準備できるそうだ。」 と告げ、続けて 「_それで調合の方は問題ないだろうか。」 と問うと、「_問題ない。」 とそっけない回答が返ってくる。するとメホソがどこからともなくやって来て 「_いやいや、流石エノグさん作業がはやいですね。」 「_いや、これも集会所にお願いしただけだ。」 「_、、、その集会所、大丈夫ですか? 毒草の根など依頼して変な噂はたちませんか?」 「_、、、その分依頼料ははずんでおいた。たぶん黙っていてくれるだろ。」 「_本当かなぁ、、、次なにかを外部に依頼するときは僕に事前に行っておいてくださいね。」 「_ああ、これからは気を付けるだ。」 と会話する。それにはパステルとクロが不安げな目線を送ってくるので、話を切り上げてそちらへと向かうエノグが 「_どうかしただか?」 と小声で問う。 「_いえ、貴方は着々と役に立つことをこなしていて、、、私たちは、、それが出来ていないから、、、不安なの。このままじゃ、、」 「_そうだぜ、このままじゃあんたの一人勝ちだ。。。」 「_、、、そうか、それはすまないな。では今後は何かある時は、皆に作業をそれとなく振ることにしよう。差し当たっては、明日の森に入る件、クロさん付いてくるだか?」 「_!? 俺か?」 「_そうだ、一人行動は禁止らしいしな、それに、しばらくしてから他に参加者がいないかみんなの前で聞いてくれると助かるだ。それとおら達が言っている間はパステルさんは文献を調べてDを確実に捕獲する方法がないか皆で議論をしておいてほしいだ。あとは、、、そうだな、Dの幼生体を連れて村まで戻れたとして、村への搬入経路も決めておいてほしいだ。」 「_、、、ああ、分かった。恩に着るぜ。」 「_ええ、議論の件はわかったわ。」 と会話すると、エノグは二人から離れてぶらぶらとしだす。
そうして示し合わせたように会話を始める 「_おい、エノグの旦那、明日の森の探索だがな、俺も連れて行ってはくれないか?」 「_あ、そうだっただ、一人行動は禁止だったな。クロさんも来てくれると心強いだ。」 すると 「_すまん、オレも連れて行ってはくれないか。」 とサビも言い出す。その後辺りを見回すが、さらについてくると言う者はいなかったので、明日からの行動のメンバーが決まる。その後はその二人と共に森に入る荷物の準備を終えると、今度はクロと共に集会所に行き、店員に森の案内人のヨモギと言う青年を紹介してもらい一日を終える。
そして森に入る当日、森へは村の東門の近くから入ることにする。案内役のヨモギはまだ来ていない、これ幸いとクロが辺りを見回しながら話しかけてくる。 「_なあ、エノグの旦那、いっちょお願い事なんだがな。俺はここからは別行動を取らせてもらおうと思うんだが、良いか?」 「_? それはまたどうして?」 「_あぁ、旦那たちが森に入っている間にちょっと隣町までいって、ひとつ依頼を出してきたいんだ。」 それにはサビが 「_! クロ、もしや人質救出の依頼を出すのでは!?」 と勘を働かせる 「_へへへ、俺が元居たギルドの支部は隣町にもあってね、、どうだい、もし俺を行かせてくれるならば、エノグとサビの旦那の人質救出の依頼も出してやれんことはないぞ。」 「_、、、」 とのクロの提案に思案するエノグだが 「_いや、おらの所は遠すぎてその依頼は達成されまい、だが、サビさんがそれを望むならば、、」 「_いや、それはやめた方がいい。」 とサビは首を振りながら静かに言う。 「_! サビの旦那、それは一体どうしてだい?」 「_うむ、エノグ、地図を持っているか?」 「_ああ、ここにある。」 「_クロこの地図を見てみろ、普段我々が使う地図とは違うと思わんか?」 「_ん? とくにそうは思わんが、、、」 「_いや違うんだ、普通このような目的の場所にたどり着くための地図には目印を書き連ねていって、最後の目的地が示されるはずなんだ、だがこれには最後の目的地以外の目印の記載がない。」 「_それがどうしたってんだ?」 「_多分なんだが、この地図は空より見て書いたものなんだと思う。」 「_ん、空から?」 「_ああ、そうだ、神通力の種類には遠隔透視というものがあって、、、まぁそれのやり方は様々あるんだがその話は省くとして、、、その遠隔透視を使うとこのような、空から見たような地図を作製することができるんだ。」 「_おう、そうなのか、、、で? それと俺が隣町に行かないほうがいいって話にどうつながるんだ?」 「_それはだなつまり、メホソの仲間には遠隔透視の神通力を持つ者がいるってことになる。ということは、その力で隣町に向かう姿を捕捉されかねないということだ。ともすれば今ここも見られているかもしれない。バレる可能性は相当高いぞ?」 とサビが言うと、クロは咄嗟に辺りを見回す。 「_この話も聴かれているかもってことかい?」 「_それはどうだろうな、遠隔透視と盗聴の両方の能力をもっているのはかなり高度な法師クラスに限られる。しかしそれぞれの力を持つ二者がいれば楽に可能だろう。。。まぁどちらにせよクロが町に行くことで俺やエノグの人質が危険にさらされる確率は相当に高い、だから、クロには我々に付いて来てもらう。」 「_ちっ、そうか、当てが外れたな、、」 「_神通力か、、、不可思議なものだな、だが今の話で一つ謎が解けただ。」 「_ん? エノグの旦那、なんだいその謎ってのは?」 「_ああ、メホソさん達がどうやってDの存在を知ったのかが良く分からなかったんだ、だが遠隔透視なるものがあれば見つけるのは容易いのかもしれんと思ってね。」 それに、集会所の店員がどうやってこちらの状況を知れたのかも分かって納得する。 「_ちなみに、遠隔透視や盗聴されているとして、それに気が付く方法ってのはあるんだか?」 「_エノグには前にも言ったが、神通力視を持つ者なら、透視や盗聴が間近で行われていれば気付けるだろうが、もし空の高みから見下ろされていた場合は距離があって、いかな強い神通力視を持つ者でも判別は難しいだろう。」 とのサビの言葉に、クロは空を眺めながら、 「_しかしやっかいな力だな、神通力ってのは。そんな力が無ければこんな依頼も発生しなかっただろうに、、、法師とは厄介な、、、ってすまねぇサビの旦那。」 とため息をついていると、南の方から青年が一人歩いてくる、ヨモギだろう。エノグ達はそれまでの会話をやめて一度静かになり。そうしてヨモギと合流すると冷たい冬枯れの森へと足を踏み分けていくのだった。




