表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/70

第3話:絵描き、議論の場を整える

エノグとハチワレの戦いは、その家の庭で行われることになった。家の中に残った細目の男は 「_あまり目立つことはしてほしくないのになぁ。」 と小声で嘆いている。しかし、こうなってしまったものはしょうがない、エノグ自身は望んだことではないが、押し売りされた喧嘩を買わない手段が見つからなかったのだから。いや本当はただ戦いたかっただけだと自分自身に突っ込みをいれる。ハチワレは肩で風を切るようにのっしのっしと庭の真ん中まで進む、エノグはその動きを目で追いながら相手の強さを類推する。2メートル近い身長にバランスよく筋肉と脂肪がついた体からはきっと力強い線が描かれることだろう。さて、自分はどのような線を描くべきか、それにしてもあの旅に出た日から数か月ぶりの実戦だ。買わされた喧嘩だが、心は躍る。



そしてふと気が付く、庭の地面に真四角の線が描かれていて、それにその地面の土の上には乾いた血のようなものもこびり付いている。ふと後ろを見るとキジシロの後に続く面々の内には明らかに怪我をしているものが何人かいて、キジシロ達はどんなものであれ、この儀式を強いているようだった。可哀そうにと思っていると、ハチワレが地面の四角の線の一つの頂点で立ち止まるので、それに合わせるように対角の頂点に向かうエノグ。



「_んで、ここからどうするだか? おまえさんは何か獲物を使うのか?」 「_獲物? そんなもの使ったらお前を殺しちまう。」 とハチワレが鼻で笑いながら言うと拳を体の正面に持ち上げて、右腕を真っ直ぐにエノグの方に伸ばしてくる。 「_素手、か、、、足は使っても?」 「_、、、好きにしろ。もしそんな暇があるならな。」 「_ではそうさせてもらうだ。」 と使えるものも決まったところで、キジシロが 「_よっし、準備はいいな、これからお前らにはこの四角の中だけで、参ったというまで戦ってもらう。共に俺に力を見せろ。」 とルール説明をする。 そしてすぐに、「_はじめだ!」 と戦いの火ぶたは切って落とされる。



開始の合図とともに、ハチワレは両手は体の前面にそして少し猫背の姿勢をとって、猛然と走り込んで来る、対してエノグは両の手をだらりとしてぶらぶらとさせている。攻撃の間合いには長身のハチワレが先に入り、そのまま右腕を引くと、真っ直ぐにその拳を突き出してくる。 『ズドンッ』 と音が響き、誰しもがハチワレの勝利を疑わなかった。人によってはその音を聞く前から目を瞑っている者もいた程だ、が、結果は違った、なぜかエノグはハチワレの右側に立っており、更になぜかハチワレが膝をついている。



「_雑な線だ、そんなんじゃ、せっかくのその体格を活かせられんぞ?」 とエノグが呟くように言う。 ハチワレは頭を振るとゆっくりと立ち上がり、エノグを睨みつけ、 「_てめぇ、、」 と頭に血管を浮かび上がらせて言うと今度は相手の様子を窺いながらゆっくりと向かってくる。 「_おまえさん、足に来ているだろ? もう少し休んだらどうだ?」 「_うるせぇ!」 またもハチワレの拳が伸びる 『ブンッ、ブオンッ』 しかしそれは空を切る。これまでの、エノグが来訪するまでのハチワレと他のハンター達との戦いとは違う様子に、目を白黒させるハンター達、目の前の男は足は動かさずに上半身の動きだけでハチワレの拳を全て躱している。その内にハチワレの呼吸音が辺りに響き始め、その様子にキジシロが声を上げる 「_おい、ハチワレ何やってやがんだ! さっさと当てねぇか。」 エノグは相手の攻撃の最中、キジシロをちらりと見て、次はハチワレを見て 「_どうだ? 当たりそうか?」 と声を掛け 「_いんや、この距離ではもう当たらねぇ」 と自分で返事を返す。そしてハンターたちの目の前で、更に一歩二歩と距離をつめる。それには顔を真っ赤にして 「_うおおおぉおぉ!」 と全身を振るようにして拳を振るうハチワレだったが、それもむなしく空を切るだけだったし、なんならその振りの直後視界からエノグが消えていた。急いで周囲を見回そうとしたとき、するりと何かが首に巻きつくのを感じる、咄嗟に振りほどこうとするが、それは強く首に巻きつくとハチワレから呼吸を奪う、そしてたまらず膝をつくと、視界が外側からどんどん暗くなっていくのを感じる、首に巻きついた何かは一向にはがすことが出来ない、、、とここでハチワレの意識は途切れる。



「_うん、まぁこの位だとこんな感じだろ。」 とハチワレの首に巻き付けていた腕を外すと手をパンパンと叩いてキジシロを見つめるエノグ。 「_どうだろうか、お眼鏡にはかなっただか?」 「_貴様!」 と腰に付けた剣を引き抜いてエノグに向かって行くキジシロ、だったが、その刹那に自身の喉元に刃が付きつけられているのに気が付く。 「_刃傷沙汰は困るなぁ。」 と小さい冷たい声が響く、それはいつの間にやら家から出てきて、キジシロの後ろに回り込み、腕を巻き込むように喉元にナイフを突きつけている細目の男だった。 「_キジシロさん、あなたの仕事は別にお山の大将になることじゃぁ無いんですよ? 忘れましたか?」 と言うとナイフを少し動かして薄くではあるが実際にキジシロの首を切って見せる、それに恐れをなしたか手に持った剣を地面に下し、 「_あ、あぁ、わ、分かった、すまねぇ、もうやらなぇ。」 という言葉が発せられる、それに満足したか細目の男は 「_なら、いいんですよ。」 と言いながら、笑顔でキジシロの両肩をポンポンと叩く、そして 「_エノグさん、お見事でした。。。いやー、助かりました、使えそうな人が来てくれて。」 「_、、、」 



「_別にハンターってのは、格闘の強さだけを求めるもんでも無かろう? 強さにもいろんな尺度がある。おらはそれが分かって貰えればだれがリーダーでも構わんよ。」 とキジシロを眺めるエノグ。「_いや、まさにそれを言ってのける人が欲しかったんですよ。それじゃぁ皆さん家に入ってください。依頼の説明をしますから。」 「_ハチワレさんはどうするかね?」 「_んー、、、やれやれ、全く面倒ですね、誰かそいつの顔に水でもかけて起こしてやってください。」 「_まぁまぁ、ほうっておけばそのうち目を覚ます。それよりおらで集められた奴は最後なんだろう? どうだいこの時間で自己紹介でもしあわねぇかい?」



「_自己紹介?」 「_ああ、詳細は知らねぇが、大変な依頼を受けるんだ、一緒にやる相手の名前すら知らんでは、上手くはいかんだろ。おらはエノグ、ここからはちょっとばかし遠い、アトル町から来ただ。これまでは主に、、、何だろうな、画材の材料になる物の収集なんて依頼をこなすことが多かっただな。あぁあとさっきの格闘技は趣味みないなもんだ、べっつに自慢するつもりはないし、それでもってここのリーダーになろうとも思っていないから安心してくれ。」 「_はぁ、始めちゃった。。まぁいいか、それでは僕も、」 と細目の男が話し始める。 「_僕の事は、、、メホソ、とでも呼んでください。いい名前でしょう? 僕の仕事は皆さんのの住む所や食料の確保等、一言でいえば後方支援ですね。あとで依頼内容の詳細でも話させてもらいますが、僕がやるのはそれだけで他の仕事はしませんのであしからず。」 とメホソが言うと、掌をキジシロへと向ける。それを見たキジシロは苦々しそうに 「_チッ、俺はキジシロだ、そこで寝てるハチワレと一緒にヒガシノ大都市から来た、専門はならず者をぶっ倒す賞金稼ぎだ、一つ言っておくが、ハチワレが武器を持っていればお前になんか負けなかったぞ。」 と言うと、エノグを睨みつける。 エノグは「_それでかまわねぇだ、おまえさん達は腕に自信があるってこったな。」 それからはキジシロから時計回りで自己紹介を始める。彼らは元盗賊のクロ、動物学者のシロ、狩人で弓使いのトビ、生物ハンターのサバトラ、薬師のミケ、医者のチャトラ、商人のアメショ、法師のサビ、法師のグレー、法師のチャシロ、女史のパステルとのことだった。



「_ほうほう、様々な職業の方が集められたもんだな。。。キジシロさん、この人たちを力で従わせるだなんて、おまえさんどうかしてるぞ? 怪我をしてる人までいて、、、」 と喋っていると、ハチワレが目を覚まし、エノグを視界にとらえるや否や襲い掛かってくる、止めようともしないキジシロを横目で見て、エノグはやれやれと思う。 「_もう終わった戦いなんだけっども、、、」 と言いながら伸ばされる腕を掻い潜り、鳩尾に左掌底を、わき腹に右拳を突き刺す、それでハチワレは膝をついてしまうが、エノグを睨みつけるのはやめない。 「_別にもっと痛くもできるだぞ? ってこれではおらもキジシロさんを責められんな。。。しっかしこれでは話がちぃとも進められん。キジシロさんこのハチワレさんを下がらせてくれるだか?」 するとキジシロもエノグを睨みつけながら 「_、、、、、ハチワレ、下がれ。」 と呟くように言う。エノグはこれは今後も一悶着ありそうだと思いながら、メホソに視線を移し、「_自己紹介も終わったし、ハチワレさんも目覚めた、これで依頼の詳細を話してくれるだか?」 「_ええ、やっと説明できるようで僕も嬉しいです。」 



「_それでは依頼内容の詳細について説明させていただきますね。」 とメホソが語り、黒板に書いたことは、簡単には次のようなことだった。

 ① これからドラゴンの事はDと呼称する。

 ② Dに気付かれず近づく方法を見つける

 ③ 地図をもとにDの居場所を確認する

 ④ Dの幼生体の数を確認する

 ⑤ Dの鼻を無効化する香りを調合書をもとに調合する

 ⑥ 親Dを無効化する

 ⑦ その隙にDの幼生体を確保し村に連れ込む

 ⑧ Dの幼生体を馬車に乗せ連れ出す



「_、、、です。皆さん分かりましたか?」 「_だいぶ、ざっくりだなぁ。」 とエノグが言うと部屋は静かになる。なにかもっと議論に発展すると思ったが他の者は何も疑問に思わないのだろうかと思いながら周囲を見回すとメホソと目が合う。 「_、、、しょうがないなぁ、キジシロさん、ハチワレさん、一度外に出てもらえませんか? あなた方がそうやって皆を睨みつけていると大事な話が出来ないんですよ。」 「_なんだと! メホソ貴様!! さっきは油断したが別に俺は負けたなんて思ってはいないぞ?」 「_だから勝ち負けじゃないんですよ。そこを分かっていただかないと、、、」 「_それになんだ! まどろっこしい計画なんぞ企ておって、ドラゴンなんぞ俺がこの剣でぶった切ってやる!! それで幼生体とやらを奪ってやればいい。」 と言うと部屋の中が静寂で満たされる。 



「_うんうん、そうかぁ、おまえさん達はDって奴を倒したいんだな? 目的はそれで名を上げたいってどこだか?」 「_そうだ、俺達は伝説のドラゴンスレイヤーってもんに成りたいのよ。その為には強いもんがもっと必要なんだ、なんなら俺が集めて来てやってもいい。」 「_ちなみに、メホソさん、今の計画だと⑥の親Dの無効化とあっただけだったが、倒すのは問題ないだか?」 「_親Dの方に興味はありません。好きにしてください。」 「_じゃぁ、⑥と⑦の間に、”親Dと戦う”を追加するか。」 「_エノグさん? 本気ですか?」 とメホソが言うとエノグは 「_おらは戦わんよ。だがやりたい奴がやるのは自由かと思う。それにもし成功すれば⑦以降が楽になるだろ。」 と言う。 それにはキジシロが 「_けっ、意気地のない奴らだ!」 と言い、ハチワレが鼻で笑う。 「_おらはそれでも構わんよ。だがその機会は与えてやるから、他はみんなで決めさせてもらうだよ。それで良いか?」 「_ふん、どうせ意気地なしと弱いもん達の集まりだ、俺達の邪魔をしなければ好きにしろ。」 「_じゃぁ、これをやるだから、どこぞで酒でもやっててくれ。」 とさっと懐から金をだして投げて渡すエノグ、「_お、気がきくじゃねぇか、おい、行くぞハチワレ。」 というと家から出ていく、キジシロとハチワレ。



「_さって、これでどうだ? 正直おらはメホソさんの説明だけではこの仕事をこなせる気がしない。もっと情報が欲しいと思うんだが、、、おそらくここに集められたのは各種専門家の人たちだと思っている。おらは皆の意見を聞きたいだ。」 と再度全員を見回すエノグに、「_薬師のミケだ、まずはいけ好かない奴達をやっつけてくれてスカッとしたぜ、ありがとう。それでだな⑤の香りの調合のことだが、必要な素材はそろっているのか?」 「_商人のアメショだ、それなら、一つを除き全て揃っている。ここに来るまでに集めてきたからな、だがあと一つはどうやらこの村近くじゃないと無い物のようでね、それは採集する必要がある。」 「_それは何だ?」 「_ランゾという草の根だ。」 「_毒草か、だがこの時期は枯れちまって見つけるのに手間が掛かりそうだな、、、」 エノグは 「_では⑤の香りの調合にランゾの根の確保を加えよう、対応はミケさんお願いしていいだか?」 「_ああ、動いてみよう、ただ、もしモンスターや獣が出た場合に自分ひとりじゃ対応ができない、誰かに一緒に来てもらいたい。」 「_法師のサビとグレーだ、それならば、我らが手伝おう。」 「_サビさんにグレーさん助かるだ。あとは、、、」 「_動物学者のシロだ、Dに近づく方法は分からんが、伝説上ではコボルト以上に鼻が利き、さらには神通力を捉える眼も持ち合わせているようだ。少なくとも神通力を持つ者が近寄れば見つかる恐れがある。」 「_そうだか、じゃあ法師は近付けないだな。。。狩人のトビさん、何か鼻の利く獣に近づく方法を知らねぇだか? 」 「_うーん、狩人が獣の中に身を隠す方法として、獣の血と泥を混ぜたものを全身に纏いその上から獣の皮を着込むという方法があるが、、、なんだかそれだと、Dに獲物として認識されそうだな。まぁ泥だけでもいいかも知れん。」 「_それは確かめてみるより他はないか、、、あとトビさん、⑤のDの鼻を無効化する香りを矢で飛ばすとすると、大体何メートル位の距離から狙えそうだ?」 「_200がいいところだと思う。」 「_そうか、だが出来るならば更に距離を伸ばせると嬉しいだ、ちょっと矢の先に軽い荷物を載せた状態で森の中で練習して精度を上げてもらえるだか? 護衛として、法師のチャシロさん、お願いできるか?」 「_ああ、承った。」 「_あとは、、、元盗賊のクロさんに女史のパステルさんはなにかあるだか?」 「_クロだ、そうだね、俺ができることは森の中で気配を消す方法を知っていることくらいかね、これでも色んなところに入ったり逃げたりしたからね。」 「_それは教えてもらいたいだな。」 「_パステルよ。私はDの研究者をしているの、でもあくまでも伝承の研究なので、有象無象の話を知りすぎていて何が真実か分からないってところが難点かしら、でも一つ言えるとすれば、成体のDは只の人が叶うようなモノではないはずよ。」 「_そうか、その有象無象の話を聞かせてもらえるだか? なにかヒントになることが有るかもしれん。」 「_いいわよ。」 「_ではクロさんとパステルさんには講習会でも開いてもらおう。」 と再度計画表を見直して、疑問に思ったことをメホソに聞く 「_Dの幼生体を運ぶ馬車はメホソさんが準備してくれるのか?」 「_いえ、それは商人のアメショさんに依頼しています。」 「_そうか、、、」 「_どうかしましたか?」 「_いんやなんでもない。皆さんは他になにか質問はあるだか?」 「_、、、」 沈黙を見て取るとメホソが 「_とりあえず、最初の議論としては成功ですかね。質問は何時してもらっても構わないので、いつでもお声がけください。いや、エノグさんが来てくれて助かりました、、、正直あのままだったらどうなっていたか、、、あ、今話した内容は黒板にまとめましたので、いつでも確認してください。それではこれから夕食の準備をするので一旦解散としましょう。」



 ① これからドラゴンの事はDと呼称する。

 ①-a 森での気配の消し方を学ぶ

 ①-b Dの事を知る

 ② Dに気付かれず近づく方法を見つける

 ②-a 弓の精度を上げる。

 ③ 地図をもとにDの居場所を確認する

 ③-a 泥を被って200メートル付近まで近づいてみる

 ④ Dの幼生体の数を確認する

 ⑤ Dの鼻を無効化する香りを調合書をもとに調合する

 ⑤-a ランゾの根を採集する

 ⑥ 親Dを無効化する

 ⑥-a 親Dと戦う

 ⑦ その隙にDの幼生体を確保し村に連れ込む

 ⑧ Dの幼生体を馬車に乗せ連れ出す

 ⑧-a 馬車は商人が準備する。



夜、エノグは目覚め家の外にでると、今日の出来事を思い返しながら何かに備えるように体の各所を伸ばしていく、そうして村からもでて、村の外側の石垣と森に囲まれた道をゆっくりと歩き始める。空気は冷たく、呼吸の度に体温が下がるのを感じる。 「_さって、おかしいことだらけだ。一体何からどうしていったものだか、、、。」 と空の高みで光る星を眺めながら、独り言をつぶやく、すると 「_なーに、そんなものすぐに気にならなくなる。」 と突然森の中から声が聞こえたと思うと、エノグに向かって大きな剣が振り下ろされる。すんでのところで躱すと躱した先に、手斧が飛んでくる。更に躱すとまた大剣が横に薙ぎ払われる。そこで一気に距離をとり 「_、、、道理で、賞金稼ぎにしては弱すぎると思ってたら、、、闇討ち専門だっただか。」 と、森から出てきた二人組に話しかける。 「_ふん、躱しやがったか、いけ好かない奴だ。」 とキジシロが剣を抜き、地面に刺さった手斧を手に取りながら話しかけてくる。 「_いや、あんまり露骨な殺気だったからな、、、何をするにしても他の奴みたいにもっと上手くやるべきだと思うだぞ?」 「_? 何をいってやがる?」 「_分からなければいい、、、さっさと終わらせるだ。」 「_ちっ、その余裕が気に入らねぇなっ!!」 というとエノグの頭部を狙って手斧を投げてくるキジシロ、そしてそのままエノグの右側に、ハチワレは左側に周り込み剣と大剣とを振り下ろす。エノグは後方に下がりながら手斧の柄を握り受け止めると、後ろに下がり攻撃を躱す。すると大剣による突きが心臓をめがけて伸びてきて、それをキジシロの居ない側によけると、大剣が軌道を変えて薙ぎ払いの形でエノグの首を狙ってくる。それをしゃがんで躱すとそこを狙ってキジシロの剣が振り下ろされ、手斧で受ける。 『キンッ』 と静かな夜に金属のぶつかり合う高い音が響く。そこからは迫りくる大剣と剣を何度も手斧でうけるのが続く、何度目かの受けで手斧の柄が折れてしまう。 「_はは、わりーな、丈夫な斧じゃなくてよ。」 と言いながらキジシロの剣とハチワレの大剣がそろって振り下ろされ 『ズドドッ、ドサッ』 と地面を叩く音と何かが倒れる音が響く。キジシロはその音に一瞬安堵するが、倒れているのがハチワレだと気付いた時には自分の首筋が熱くなっているのに気が付く、不審に思って手を当てると、ぬめぬめとした液体がとめどなく流れてくる、それが自身の血液だと判断する前にキジシロの意識は途絶え、終る。



「_すまんね。邪魔しちまって、ちょいと昔の血が騒いじまってね。」 「_クロさんか、、、出てくる瞬間まで本当に全く気配がしなかっただ。」 「_へへ、本当、それだけが自慢でね。。。それにしてもエノグさんは相当な場数を踏んでらっしゃる。。。昼間の戦いもそれは素晴らしかったし、特に最初の蹴りは目をかっぴらいて見ていなけりゃ見逃しちまう代物だった。。。それでね、その腕を見込んで相談なんだがね。あんたこの依頼どう思う?」 「_、、、」 「_なぁエノグさんや腹わって話そうぜ?」 「_、、、うん、うん。ああいうのは十中八九、たとえ依頼が無事に済んだとて、消されちまうってやつだろうな。」 「_へへへ、同感だ。どうだい、俺達と同盟を組まないかい?」 「_俺達、か。そうだね、まずはこいつらを片付けてから話を聞かせて貰おうかね。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ