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第17話:動き出す歯車

「_え、オモカゲ喋られるの!?」 「_そうだ、オレ喋られる。」 「_、、、ごめん、ちょっと待ってね、オモカゲ、、、ちょ、タマ、式にした時の神通力量の増加量って式によって異なるのかい? 皆一緒に式にして、オモカゲだけ喋られるようになったのはどうしてなんだろう?」 「_そうですね。。。式と言うのは法師と式との契約ですから、本来は、法師がこの位の神通力を渡すから式になってくれないか、と問うて、式がそれならば、と受けて成立するものです。ただ、サム様の神通力はひいお爺様に移譲なさっていますので、式の希望がない限り、その辺りはひいお爺様のさじ加減になります。」 「_そうなのか、、、これまでに式の方から希望があったことはあるのかい?」 「_はい、その辺は割とあります。実を言えばコボルト以外でサム様が名を与えた式は皆希望を出しています。 ち、ちなみにわたくしは多すぎるのでもっと少なくて良いです。と希望を出しました。」 「_ダイフクめはご主人様のお傍に仕える為に人型になるのに必要なだけ希望をだしましたぞ。」 「_そうか、そんなこと全然知らなかった。なんだか細やかなことをしてくれていたんだね、雲龍さん。」 「_それでフブキや今回のコボルト達になりますと、これまでサム様が出会われたコボルトはキナコの様に既に神通力を持つ個体も居るには居ましたが、おそらく”神通力”という力そのものを認識している個体はいなかったいなかったのではないのかと思われます。ですので、ひいお爺様から、基本的には多少の神通力が一律で与えられのかと。」 「_そういう言い方をするという事は、オモカゲは”神通力”を既にもしくは最初から認識していた、だから、人と喋られるだけの神通力を契約時に希望したということかい?」 



「_そうだ、オレは多くの力を望んだ。だが、オレが望むほどは貰えなかったようだ。残念。」 「_オモカゲ、君はどのくらいの力を望んだんだい?」 「_オレは村を開放し母上達の復讐をして母上を救う、それに足る力を望んだ。」 「_、、、母の復讐が先で、救うのが後なのかい?」 「_そうだ、母上は既に死んだ、だがまだ動いている。そこから救ってやりたい。」 「_、、、何から聞いたものだろうね。。。まず、村とはどこの村になるのかな?」 「_、、、村は村だ。」 「_、、、一つの村にしかいたことがないという事か、、僕も兄姫村の名前を知ったのはこちらに来てから大分時間が経ってからだったからね。なんかそれは分かるよ。 じゃあ、次はオモカゲの母親は何者だろう?」 



「_オレの母上は村の一番式、ハズメだ。」 「_ご主人様、一番式とはその村の中の式で最も強いものを指しまする。」 「_一番式、、、母親が式だから、神通力の事も知っていておかしくはないのか。。。あれ? そもそも僕たちが来たのって、村を襲うコボルトの群れをどうにかしてくれっていうのが依頼内容じゃなかったっけ?」 「_そうですね。。。クウヤも最初に”コボルトをどうにかしてくれればよい”と言っておりましたね。。。」 「_とても今更だけど、何かがおかしいね。」 「_ダイフクめもそう思います。。。それに、こちらの兄将薬村ですか、そこでのしきたりの話を聞いていて思ったのですが、とても閉鎖的な生活を強いている割には、我らをよく招き入れたものだな。と最初に違和感を感じはしましたな。」 「_確かに割とすんなり入れてくれたよね。。。クウヤさんなら知ってそうなものだけど、今やどこにいるかも分からないからなぁ、もう一度屋敷に行って様子を見てみるか。。。あ、そうだ、オモカゲ、クウヤという名前に聞き覚えはあるかい?」 「_、、、いや、ない。」 「_クウヤさんって何者なんだろ。。。って言うか今はオモカゲの話か。」



「_オモカゲ、君はどこかの村の式の子供だった、、、それで、君の居た村に何が起きたんだい?」 「_詳しくは知らない、まだオレも小さかったからな、、、ただ、 ”私達は閉じ込められた” というのが母上の言葉だった。」 「_閉じ込められた、、、何か檻のようなものかい?それとも家やお屋敷かい?」 「_分からない。 ”閉じ込められた” と言われた時の前もその後も、オレの行動範囲はほとんど変わらなかった。」 「_オモカゲ達は屋敷、村主が住まう建物にいた?」 「_違う、と思う。」 とここからはサムとの質問とのやり取りとなるが、判明したのは、ハズメ達コボルトはどこかの村に式として使役されていたという事と、ハズメ達はどこかに閉じ込められたのち食料がなくなったという事。ハズメの力でオモカゲとそのほか一部のコボルト達は村の外に逃げ出せたが、ハズメを含め残りのコボルト達は村の中に残されたままになってしまった事。その後も村の周囲で村の様子を窺っていたが、直にそのコボルトの数が増え、周囲から餌がなくなってしまい飢えた個体だらけになり、共食いを始める個体まで出してしまったとの事だった。



「_そうか、、、オモカゲ達はつらい思いをしてきたんだね。。。」 と涙を流しながら、オモカゲの事を撫でてやる。「_サム、なぜ泣く。」 「_人は家族がつらい思いをしていたなら泣くものだよ。」 「_家族?」 「_そうだ、僕は契約はしたけれども、君たちを使おうとは思っていない。一緒の時間を過ごさせてくれるだけでいいんだ。それに、家族がつらい目に会っていたというのに、そのままにするつもりはない。僕たちは君に全面的に協力する。オモカゲ、君は最初に望んだほどは力を得られなかったといったね。それは僕達が加わっても足りないものだろうか。」 「_サム達がオレの望み、叶えてくれるのか?」 「_ああ、そうだ、まぁ復讐のやり方くらいは口を出させてもらうかもしれないけどね。それ以外では君の希望を全力でかなえられるように努力するよ。。」 「_そうか、、、式となって力を得た後はここを去ろうと思っていたが、、、ヌバタマとダイフクと言ったか、オマエ達の神通力は高い。心強い。」 「_あら。」 「_これ、オモカゲめよ、我らの力はご主人様あってのものぞ、それに我らはご主人様をないがしろにするものに協力はせぬぞ。」 「_そうだ、我らはサム様の式であってオモカゲの式ではないぞ、サム様はこれしきの事で怒りはせぬだろうが、以後注意するのだな。」 「_、、、そうか、すまん。サム。」 「_いいよいいよ、堅いことは言いっこなしだよ。」



「_それじゃあ、行動を起こすためにも喫緊のことを決めないとね。まずフク、フクはここからNorthEastにあるだろう村の様子を空から見て来てもらえるかい? 多分そこがオモカゲの住んでいた村だと思うんだ。危険があるといけないからね、十分に距離をとるように。」 「_はい、すぐにでも行ってまいります。」 「_ありがとうよろしく頼む。そしてオモカゲ、君にはクウヤさんを探してもらう。」 「_なぜだ、オレも村に行く!」 「_ダメだ、まだ状況も良く分かっていないからね。どんな相手がいるかも分からないのに危険は冒せない。。。大丈夫。オモカゲの村には絶対に行くことになる。今少し辛抱してくれ、それにクウヤさんを見つけられれば、村にたどり着く近道になるかもしれないんだ。これにはコボルトの嗅覚が必要なんだよ。」 「_、、、わかった。」 「_ありがとう、絶対に村には連れて行くから。 そしてタマ、タマには申し訳ないが、ここで他のコボルト達と待機していてくれ。」 「_わたくしも動きたいところではありますが、現状を考えるとそうなりますな。」 「_すまないね。。。あともし可能ならでいいんだけど、雲龍さんとフブキたちとで神通力量を増やせないか相談して欲しいんだ。目的としては、フブキたちで今いる新規コボルト達の世話をできるようにならないかと思ってね。。。もしかすると現状の神通力量でも可能なのかもしれないけど、その辺も含めて試行してもらえないだろうか。」 「_承知しました。」 「_それじゃ、僕はオモカゲと共にまずはクウヤさんのアジトに向かう。フクは村の様子を見たらここに戻って来ておくれ。」 「_分かりました。」



こうして、オモカゲの話からサム達とと兄将村群の歯車は大きく回り始める。サムは一旦Log Outして自動操縦に任せてオモカゲとクウヤの屋敷へ、ダイフクは北東の村の様子を見に行く、ヌバタマはコボルト達との意思の疎通を取り始める。



ダイフクは途中までサム達と共に進み、その後村の探索に飛び立つ。この日の空は高く天気もよい、ダイフクは冬毛のふくふくとした羽毛と立派な翼を纏い数回羽ばたくと空の高くへと舞い上がる。ダイフクはゴブリンの怪腕の力を飛翔の際に使用していたのたのだが、丁度ウシオの騒動時に多くの神通力を渡されて、ザイヤクシの町と兄姫村との往復をやってのけて、その道中に飛翔している際にいつの間にやらゴブリンの怪腕は形状を変え、さらには名前も”ダイフクの飛翔翼”となり、ダイフクと同化していた。最初はサムに申し訳ないと謝ったものだが、当のサムは一向に気にした様子もなく、丁度いいと言う始末だった、たしかにこの飛翔翼は軽い力で高く遠くまで飛べるし、更には飛翔時に風の防護膜を発生させるという権能も付き、それはダイフクに外敵を恐れずに空の好きなところを飛べる自由さも与えていた。ちなみにダイフクの必殺技、”地走り風”に至っては、元は地面に落ちている小石や枯木や落ち葉を相手にぶつけるだけの力であったのが、本気を出すと大木を真っ二つにしてしまう程の威力になってしまい。非常に使いどころの限られる力になってしまっていた。そんなダイフクである為、北東の村はすぐに視界に収まるようになる。



東北の村は遠目に見る分には普通の集落に見えるが、近づくにつれ不自然さが際立つ様になる。ダイフクはその違和感に最初気付かずにいたが、一度木々に止まりじっくり観察してみてその違和感の正体に気が付く、村には動くものが一切存在しないのだ、人や何かの生き物がいないだけではなく、この日は少しの風が吹いていたが、風が吹いても村の中には蠢くものが何もない、そう、草木の一本も生えていないので風で揺れるものが何もないのだ。さらに異様なのは家々の屋根や壁すら存在せずただ石造りの基礎部分があるのみで、まるで遠い過去の遺跡、いや、まだ過去の遺跡の方が木々にのまれるなどして木々のざわめきがあるが、その村には石の転がる地を風が抜ける音しかしないのだった。



ダイフクは更に目を凝らして村を見るが、本来村の周囲に在るはずの結界もなく、微弱でも何か神通力を持つ者の存在すらなかった。それに、オモカゲが言っていたようなコボルトを閉じ込められるような施設すら見当たらない。ダイフクはもしかしたら、サムが言っていた村はこの村ではないのかもしれないと、ここはただの過去の集落跡なのではと思い、更に北東へと進むことにする。



ところ変わって、サムとオモカゲ、サムはシホとノドカとの朝食を終えて再Log Inしていた、業務延長の対価は夕ご飯とその後の食器洗いで賄う予定である。オモカゲはクウヤの屋敷の匂いを嗅いで回っている。 「_サム、クウヤと言う者はコボルトを連れていたか?」 「_、、、いや、クウヤさん達はコボルトは連れていなかったよ。でもフブキもこの屋敷に来たことがあるし、僕もオモカゲ達と過ごすようになってから一度来ているから、その残り香ってことは無い?」 「_いや、これはオレ達の誰とも違う匂いだ。」 「_そうか、じゃあ、僕たちが気付かなかっただけでクウヤさん達も連れていたのかもしれない。」 「_、、、だがしかしこれは奇妙な匂いだ、人の匂いも、コボルトの匂いも両方する。」 「_両方? 人によく飼われたコボルトがいたとか?」 「_、、、分からん、だが特徴のある匂いだ、追えるだろう。」 「_そうか、それは良かった。それじゃぁ、、、」 「_こっちだ、ついて来い。」 と言うと、南へとオモカゲは進みだす。 「_あれ、こっちなんだ?」 「_ああ、この屋敷に来る前も変な匂いがすると思っていたが、、、まさかこの匂いの持ち主がクウヤという者とはな、時間の無駄をした。急ぐぞ。」 「_ほいほい。」 とサム達は今度は引き返すように南へと駆けていくのだった。


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