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第16話:新たな式と驚き

ダイフクがサムと合流して述べたことは、クウヤのアジトの北のある場所に瓦礫の山ができており、そこに神通力を持った真っ黒な何かがうねくりまわる生き物に群がっていて、激しい動きを見せていることと、それを見てサムの事が心配になり、アジトに来てみれば誰もおらず、心配になったという事だった。



「_なので、ご無事で何よりでした。」 「_それは心配をかけて悪かったね。それにしても、、、僕の知らない所で何かが起きてそうだね。。。ここから北に瓦礫の山と言ったよね、他にここから北に何か建物は見なかったかい?」 「_?、、、特に建物に見えるようなものはございませんでしたが、、、森の上を飛んできて、木の葉が生い茂り地面が見えない場所はございました。もしかしたらそこに何かありましたかもしれませんが、、、」 アジトの北、以前まで拠点にしていた関所の辺りは木々が開けており、上空から見えないという事は無いだろう、ならば、ダイフクがみた瓦礫の山というのは関所の事だろうか、それに、、、「_瓦礫の山に神通力を持つ真っ黒な群れか、、、上空から見て正体が何か分かりそうだったかい?」 「_いえ、それが、、、昼間に現れた新月の晩のように、いやそれよりもさらに暗い闇色をしておりまして、じっくり見ているとまるで吸い込まれそうになりそうだったので避けるように飛んできた次第です。」 「_ちなみに、それって近づくと危ないかな?」 「_いやいや、あれは近付くけるとかそういう類の者ではございません。ただ遠くから見るだけでも危険なように感じました。それにこの場所もあそこからほど近いですし、危ない可能性があります。」 「_、、、そうか、それは大変だったね。いやよく来てくれた。無事に合流できてよかったよ。」 「_はい、ご主人様は南から来られましたが、今はこのアジトを拠点にしているわけではないのですか?」 「_ああ、ちょっと色々あってね。 今の拠点に向かいながら話すとしよう。」



サム達はこれまで来た道を引き返して森の中をまた歩き、そしてダイフクと別れてからの話をし始める。今見て分かるようにコボルトが増えたこと、それにともない拠点をアジトの北の関所に移したこと、そしてそこがおそらくはダイフクの見た瓦礫の山であろうこと、ただし、サム達はコボルトの導きで瓦礫の山になる前に拠点をアジトから遠く南に移していたこと、そしてさらにコボルトを増やしたことを簡単に話す。するとダイフクが 「_ご主人様は、今いるコボルトめ達を皆、式になさいましたので?」 「_いや、式はフブキだけだよ。」 「_そうなのですか? それにしては皆神通力を持っているようですが、、、」 「_ああ、それはね。フクも見ただろ、兄将薬村でみた神通力を持ったトカゲ、あれを餌としてあげていたから、彼らは微量でも神通力を持つに至ったんだよ。」 「_、、、むぅ。いつもながらmご主人様は思い切ったことをなされますな。。。」 「_え、そうかな? いっぱいいるし少しくらいいいかなと思ったんだけどね。。。でも関所が瓦礫の山になっているという事はトカゲ側の者に居場所とトカゲを食べていることがばれたのかもね。 何かが起きる前に移動できてよかったよ。」 と言うと、いったん立ち止まりありがとうと言いながらコボルト達を撫でて周るサム。 



その様子を見ながらダイフクは 「_ご主人様、本当にこのコボルト達は式ではないので? どうも彼らの方は式にして貰いたがっているように見えますが、、、」 と述べる。 「_え、そうなの? んー、皆は僕の式になりたいのかい?」 とサムがやさしく問うと、各頭がそれぞれ 『ワン』 と、ゴカホウ、アベカワ、シンゲンはかわいく 『キャン』 と答えが返ってくる。その答えにサムは再度皆を撫でて周り 「_いや、今すごく嬉しい。いいことを教えてくれた、ありがとうフク。」 「_いえ、ダイフクめは見たままを言ったのみですので。」 と言いながら、頭をぐりぐりと押してくる小鳥のダイフクにサムは懐から手作りの小さい孫の手を取り出して頭を掻いてやる。これはダイフクの為に自動操縦ではなく、サムがLog Inしている時に作ったもので、やっと活躍させることができて、しかもダイフクも悪くないといった様子で、これもまた嬉しいことであった。そしてひとしきり、掻き終えると。



「_式の件は、タマのところまで戻ってから話すとして、そっちは、、、カゲトキとサクラの方はどんな感じだい?」 「_あの2人ですか、サクラめの方は美容薬作りに励んでおり、固定客が付いたようなのと、その噂を聞いてか行商人の方にもまとめ売りに成功したそうで、あとウッドめの協力もあり、それなりに成果を上げているようです。」 「_おぉ、流石サクラとサクラ派だね。」 「_で、カゲトキめは、、、飲食店で働きながら情報収集をしているそうですが、毎晩酒を飲んで帰ってくる始末。。儲けを出しているのかどうか、さらには借金など作ってやしまいか怪しい次第でございます。」 「_あらー、カゲトキらしいというか、なんというか、、、それはフクもサクラも大変だったね。。。」 「_ええ、夜は部屋が酒臭くなって堪りませんでした。」 「_そんな自堕落な生活しているなら、もうこっちに来てもら茶おうかな。」 「_ほう、それはサクラめも喜ぶことでしょう、カゲトキは知りませんが。。。」 「_まぁまぁ、彼は彼で僕は嫌いじゃないよ。それにお酒って美味しいからね。ある程度はしょうがないよ。ただ彼には適量も覚えてほしいところだね。」



等と話していると、森の拠点に近づいてきたせいか遠くから森の木々の隙間を抜けて、コボルト達の唸り声が聞こえてくる。それにはダイフクも 「_やや、コボルトの群れでございましょうか、応戦いたしますか? まずはダイフクめが偵察に行ってまいります。」 「_いやフク、行かなくて大丈夫、きっと拠点にいるコボルト達だろう、昨日捕まえてきたばっかりでね。まだ逃げたがっているし、ヌバタマにも敵意むき出しだからね、いや、まだ距離があるのにこんな所にまで声が届くのか、、」 「_! そうでございましたか、捕まえているというのであれば、安心いたしました。が、、、これは相当な声ですな。」 「_ははは、そうなんだよ。でも彼らにはこんなことで少ない体力を使ってほしくはないのだけれどね。まぁこちらもしょうがないというところだろう。。。ん?」 「_ご主人様どうなされました?」 サムは小声になりダイフクに言う。



「_し、フク、どうやら近くに獲物がいるみたいだ。コボルト達を見てごらん、辺りの匂いを嗅いでいるだろう?」 それにはダイフクも小声で返す。「_そうですね。より高い所の匂いと低いところの匂いを両方嗅いでいるようですね。」 「_フブキ。行かい?」 と問うと、フブキたちはアイコンタクトでサムに返事をするので、サムは静かにコボルト達の綱を外してやる。すると、今回は五頭と五頭に分かれて狩りに入っていく、静かに進むグループと、この場で待機するグループなのはこれまで同様、そしてこちらにいたグループが吠え始めると、ガサガサという音と、 『ブヒッ、ブヒヒ』 という声が響く、これはイノシシだろうか、鹿の時とはことなり、コボルト達が苦戦しているように感じる。しかし、数の有利はコボルトにある、しばらくすると、遠く拠点の方から聞こえるコボルトの声のみが聞こえるようになる。決着はついたようだ、サムはこれまでイノシシらしきものの声がしていたほうに歩みを進めていく。



そこには鼻と喉と首の後ろから血を流した大きな、それは大きなイノシシが横たわっていた、もうすでに呼吸はしていない、もしかしたら、前回鹿を仕留めたサムの仕草を真似して、完全に息の根を止めてきたのかもしれない。サムは皆に 「_よくやった、さあ、食べて良いよ。」 と言うが、誰も食事を始めようとはしない、それにはサムも不思議に思いしばらく待つが、やはり動きはない、戯れで狩ったわけでもないだろう 「_? どうした? 、、、拠点まで行って食べる?」 返事はない、サムは怪訝に思いながらも、遠くから聞こえてくるコボルト達の声を聴きながらふと思いいたることがあり、 「_こいつを彼らに、昨日捕まえてきたコボルト達に与えるつもりかい?」 と問うと、フブキとオモカゲから 『ワン』 と返事が返ってくる。 「_そうか、君たちはやさしいね。助け合いの精神を持っているんだね。」 というと、全員の頭を撫でてやってから、ダッフルバックからロープを取り出すと、イノシシの脚を縛り、それをコボルト達の綱に繋いでコボルトが引き、サムが押して拠点に向かう。最初はヌバタマに運んでもらおうかとも考えたのだが、なにかそれだと彼らの手柄をとってしまうようだし、新規コボルト達も先住コボルトにではなくヌバタマに感謝するようになってしまうような気がしたので、大変だがそんな手法を選んだ。



なんとか拠点まで運び終わると、飢えたコボルト達の唸り声と視線を痛いほど感じる。サムは簡単にヌバタマに挨拶をすると、まずは、先住コボルト達にイノシシを狩ったこととここまで運んできたことを労い、丁寧に撫でながら褒めてやる、すると、コボルト達が少しずつ本当に少しずつ、もう本当に形だけイノシシに口を付けて行く、それを見終えると、大木に括らている新規コボルト達の綱を長めにしてやって、さらに口の綱を解いて回って、皆が届くところにヌバタマにイノシシを投げてもらう。すると新規コボルト達が、一斉にイノシシに飛び掛かる。サムはそれを見ながら、ヌバタマにダイフクと合流してからの事を説明し始めるのだった。



「_そうですか、あの関所がそんなことに、、、それは彼らに救われましたな。」 「_ああ、感謝してもしきれないよ。。。それに、フクが言うには彼らは僕の式になりたいようなのだけど、それはヌバタマも感じるかい?」 「_彼らの思いまでは分かりかねますが、そうですね。特に契約はしておりませんが、彼らの振る舞いはもはや我ら式と変わらぬようには感じます。」 「_そうか、彼らを労ううえでもそれがいいか。。。じゃあまた力を貸してくれるかい? タマ。」 「_はい、今ひいお爺様に繋ぎまする。」 サムはゆっくりとコボルト達を見渡すと、一頭ずつやさしく顔を掴んでそれぞれの顔を覗きながら「_オモカゲ、ヨノウメ、シンリョク、ソラノ、ハチミツ、コウチャ、シロミソ、クロマメ、キナコ、ゴカホウ、アベカワ、シンゲン、皆、僕の式になってくれるかい?」 と問いかけると、 『ワンワン、キャンキャン』 と返事が返ってくる。



  【新たな式 《オモカゲ》 を得た】

  【新たな式 《ヨノウメ》 を得た】

  【新たな式 《シンリョク》を得た】

  【新たな式 《ソラノ》  を得た】

  【新たな式 《ハチミツ》 を得た】

  【新たな式 《コウチャ》 を得た】

  【新たな式 《シロミソ》 を得た】

  【新たな式 《クロマメ》 を得た】

  【新たな式 《キナコ》  を得た】

  【新たな式 《ゴカホウ》 を得た】

  【新たな式 《アベカワ》 を得た】

  【新たな式 《シンゲン》 を得た】



「_式の契約がなされました、、、一気に式の数が倍以上になりましたな。サム様。」 「_いやいや、大所帯になったものだね。 みんな、これからもよろしく頼むよ。」 というと皆がサムのもとに集まり 『ワンワン』『キャンキャン』 と返事が返ってくる。そんな和気あいあいとした空気の中、突如 「_オレ、サム、感謝する。」 と言う声も聞こえてくる。サムは一瞬何が起こったのだろうと辺りを見回すが、式たち以外にはイノシシを食べているコボルト達のみで他には誰も居ない。すると今のは式の誰が話したのだろうか、というか式が話したのか? と思いながら、停止する思考を何とか動かして、コボルト達の顔を見回す、するとやけにぴんと背筋の伸橋て座っている、オモカゲと目が合う。 「_オモカゲ、今話したのは君かい?」 「_ああ、そうだ、オモカゲが話したぞ、サム。」 そしてやっぱり思考が停止するサム。 それにはヌバタマが助け舟をだす。 「_サム様、オモカゲですが、式にしたことで神通力の総量がかなり増しました。ここまで増えると、話し始めるのも納得がいく量ではあります。」 いや驚いた。と思うサムであった。


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