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第13話:各所の動き

時は遡り、まだサムとヌバタマが関所にて未知の気配について話し合っていた頃、サムはあることに気が付き、ヌバタマをそばに呼んで小声で話し始める。「_タマ、この関所に件の気配はあるかい?」 それにはヌバタマも小声で 「_関所については最初にここに来た時に調べましたが気配はありませんでした。」 「_じゃあ、”今”はどうだい?」 「_”今”ですか? 少々お待ちください、、、、、、、、!? サム様!」 と言うとサムに向かってうなずきを返す。未知の勢力はサム達が関所を拠点としたことをどうやってか知って、その後にそこに住まう者に見つからないように式を配置したようだ。未知の勢力は確実に情報を取得する方法があることは間違いない。。。さて、どうしたものかとサムは思う。気配の主が何者であっても見張られているのはいい気はしない、拠点を移すか、それとも何も知らないふりをしてここで過ごすか、もしくは気配の主との接触を図ってみるか、はてさてと考えあぐねていると、コボルト達がざわめき始める。しばらく鼻をスンスンと鳴らしていたが、今度は一斉に吠え始める、サムはヌバタマに 「_何か感じるかい?」 と問うが、ことさらに変わった気配は感じないとのこと。



それでもサムが西の門に行って様子を窺っていると、フブキがその足元へ飛び込んでくる。そうして 『ワンワンワン』 と何かを伝えようとしているかのように吠え始める。 「_タマ! 今も何も感じないかい?」 とサムに言われヌバタマは周囲を見回しながら 「_すぐ近くにはトカゲ以外の気配は感じませんが、、、」 と言うが、コボルト達の反応が尋常ではない、サムは念のため、オモカゲたちの綱を大木から外してやると、サムを引っ張るように皆一斉に西の門を目指す、「_うわっ。お前達、、、分かった行こう。タマ、キナコの子供たちをお願い!」 「_承知しました!」 そしてサム達は西の門をぬけ、コボルトに引っ張られるように南へと駆け抜ける。一体どうしたのだろう、コボルト達の表情をみると、何かに向かっているというよりは、後ろを警戒し、何者かから全力で逃げようとしているかのように感じられる。その様子に綱をを持つ手を離すとオモカゲを先頭にコボルト達が走り始め、しばらく走るとサム達を振り返るようにしてみて激しく吠える。サムは大蜘蛛化したヌバタマに乗りなおすと、コボルト達に負けない速度で緑の中を駆け始める。



一行は得体のしれぬ緊迫した空気の中、クウヤのアジトよりさらに南へと向かって一時間程走るとようやく止まる、もう大丈夫なのだろうか、その様子にサムはヌバタマから降りて折れて倒れた木に腰を掛ける。コボルト達は辺りを警戒しつつも一つの集団になり息を整えている。その姿を見てサムはヌバタマに口を開く、 「_さてさて、どうしようかね。関所にはいったい何が来たのか、、、どう思う、タマ?」 「_先ほどまで話していた未知の気配の勢力でしょうか、我々がその存在に気付いたため動いたとか?」 「_んー、どうなんだろう。。。しかしそんな早く動けるものかねぇ。」 「_では、ただのコボルトの別の群れですとか、、、それともさらに新勢力? あ、」 「_なにか思いついた?」 「_もしかするとトカゲ達の一派かもしれませぬ。」 「_え、トカゲ?」 「_はい、先程トカゲの権能の話をしましたが、蜘蛛族の警戒ラインと同様と考えれば、”人の動きを追う” 以外にも、”自己の存在の有無” を知らせる権能を持たされていたかもしれません。その権能があるなら、トカゲが消える場所から関所を割り出せるはずです。」 「_そうか、そんな権能も、、、まぁ、確かに関所周辺でトカゲを集めていたからね。割り出される可能性もあったのか、、、しかし、それならEastからではなく、Westから来ないものかい?」 「_そうですね。。。では挟み撃ちにしようとしたとか?」 「_それもあるかもだけど、、今は調べようがないね。。。タマ、今日の所はもう少しSouthに進んでコボルトも僕たちも落ち着ける場所を見つけて過ごしていてもらえるかい。こんな時に申し訳ないけど、僕は一旦抜けるから、、、」 「_はい、そう致します。いえいえ後のことはお任せを、、、」



一方、関所を倒壊させた薬村主はまだその場所で、何者かと戦っている。それは無数の長い腕を節の多いグネグネと蠢く腕の群れを持つ薬村主と、砕いても潰しても向かってくるまるで不死と思われる群れとの化け物同士の戦いだった。攻撃力では圧倒的に薬村主に利があるが、いかんせん相手は不死の群れであり戦いに終わりは見えない。 「_クッ、何だこやつらは潰しても潰しても向かって来よる。クソッ、忌々しい、、、」 だが薬村主は自分の優位性とイラつきから気が付いていなかった、その群れがどんどん増えていることに、、、だがしかしそれはしょうがないことだった、群れは潰されてぐちゃぐちゃの液状になりながらゆっくりと周囲を固めて、薬村主を喰らう瞬間がくるのを周囲が彼らの群れで満ちるのを窺っていたのだから。。。。



さらに他方、薬村主から逃げ出したクウヤ達は村の外のアジトに集まっていた。 「_、、、良し、全員戻ったな! なによりだ、、、してお前達、あの時何を感じた?」 「_とりあえず、薬村主の野郎が酷く怒っていやがったな、あの声には驚かされたぜ。それにあいつ、俺らも殺す気満々だっただろ。」 「_俺もそれを感じた、クウヤがどこまで黙ってついていくのかと思ったぜ。」 「_いやいや丁度いいタイミングだっただろう、でも薬村主の方は別にもういいんだ、それよりも他の得体のしれない気配があったろ?」 「_ああ、姿は見なかったが、何か腐ったような酷い匂いがしたな。」 「_俺もそれは感じたな。」 「_おまえら逃げ足が速いな、、、俺は気になったからな、見たぞ、何かおっかねぇ黒い影がぶっ壊れた関所を集まっていくのを、、、そいつらからさっき言った酷い匂いもしていたぜ。」 と言うのを受けてクウヤは 「_腐臭に黒い影か、、、何者なのか気になるところだが、薬村主の野郎を襲ってくれたなら良しとするか、多分それで俺らの事も追ってこなかったんだろうからな、しかし何にせよ俺らはあの野郎をほっぽって来ちまったからな、、、これでもう俺らの住処はもうここにはないぜ。」「_、、、で? どうすんだ? クウヤ、これから。」 「_、、、考えは、ねぇな。」 「_って、ねぇのかよ。」 「_とりあえず、、、逃げるか、、と言っても、Northは薬村主、Eastは飢えたコボルト、Westはトカゲ、なら、Southしかねぇな。おい、行くぞ、お前ら」 「_お前は何にも考えていねぇリーダーだな。」 「_おいおい、器が大きいと言ってほしいな、なーに、大抵のことは時間が解決してくれるし、いい考えを授けてくれるかもしれねぇ。ほれ、行くぞ行くぞ。」 



○ 3月1日:木曜日:20時、今日は本業の仕事を早めに切り上げて、サイドラインへと向かう。場所は深い森の中、焚火の音と木々のざわめきだけが聞こえる。サムはまずコボルト達の数を数えて一安心すると、ヌバタマと会話を始める。どうやら午前中以降は特に何者とも出会うこともなく、開けた場所を見つけると木の葉と蜘蛛の糸を使って陣を張ったとのこと。「_さて、タマ、これからの事なんだけど、、、今から話すことは関所を出る前から考えていたことなんだけどね。コボルト、増やそうかと考えているんだ。」 「_増やす? どこかから新たに捕獲して回るという事ですか?」 「_ ああ、トカゲを食べさせたせいか、もうみんな割と言う事を聞いてくれるだろ? この調子なら増やしても問題ないかなと思って。」 「_しかし、急ぎすぎではないですか? もう少しこの地が落ち着ける場所なのかどうか見極めてからでも良いのでは?」 「_うーん、確かにそれも考えたんだけど、コボルトの飢えっぷりが思ったより酷かったからさ、もうあまり時間がないんじゃないかと思ってね。」 



「_時間とは?」 「_彼らが共食いを始める時間さ。いや、最初見たときはオモカゲ達もキナコを襲おうとしていたからね、もうその時間は過ぎてしまったのかもしれないけど、仲間の死肉で飢えをつなぐだなんてそんな可哀そうなことは無いよ。。。だからね、どうにか元気がある個体は出来るだけ救ってやりたいんだ。」 「_、、、ふふふ、課題は沢山ありましょうが、理由が何ともサム様らしい。」 「_? そうかな?」 「_ええ、そうです。ではコボルトの捕獲の方はわたくしが行ってくるとして、、、サム様はどうされますか?」 「_ああ、僕たちは散歩がてら食料の調達だね。この辺にまだ獲物がいるといいけど、、、」 「_そうですか、まぁこれからさらに大所帯になるわけですし、彼らの腕を磨く必要はありましょうな。。。しかし、どのくらいの数を増やしますか? 出来るだけ増やすとなると大変では?」 「_、、、そうだね。一先ず5~15頭位を目安にしようか。」 「_承知しました。だいたい一つの群れを見つければ事足りそうですね。今から動かれますか?」 「_いや、明日からにしよう、今日は長距離の移動もあったし休むことにしよう。それじゃ、明日からよろしくね。」 「_はい。」



○ 3月2日:金曜日:5時起床、甘くしたコーヒーを飲んで頭を冴えさせると、急いでサイドラインへと向かう。ヌバタマに挨拶をするとサムは早速コボルト達に話しかける。 「_おはよう、みんな。いいかいこれから大事な話がある。よく聞いてくれ、これまでは僕やタマが餌を上げていたわけだけど、君たちはもう大分体格も良くなったし元気になったはずだ、だから今日からは君たちで餌をとって狩りをしてもらう。。。。いいかい? 狩りだ。これは君たちの本領のはずだ、期待しているよ。」 しかし、オモカゲ達は毛繕いの順番を決めようとワキワキしていたが、フブキの一吠えで皆黙り、フブキの顔を確かめるようにみる。フブキはそれを見ると、辺りの匂いを嗅ぎ始めもう一度 『ワン』 と吠えると、サムに動くように促す。サムは 「_、、、フブキには伝わったようだね。。。。他の子は大丈夫かな? みんな行くよ。ついておいで。」 といってタマの敷いた陣を抜けて南の方へと向かって森の中を歩き始める。 「_じゃあ行ってくるよタマ、捕獲の件はよろしくねー。」 「_はい、承知しました。」



ヌバタマは大蜘蛛化して緑の樹上を北へと向かおうとするが、一度立ち止まり振り返ると、昨晩張った陣の中の気配を探る。。。何者の気配もしないことを確かめると、北に進路をとる。しかし、そもそもなぜあれほど微弱な神通力を屋敷やアジトで感じることが出来たのか、そして関所ではなぜそれに気づけなかったのかと不思議に思う。気配の違和感とは違う何かを感じはするのだが、その正体までは分からない。しかし、もう見逃してはならない、そう何度も拠点を移していては落ち着かぬ。ヌバタマはその種族特性上、どうしても一か所に落ち着きたいという性質を持っている為そのように考えていたが、その種族の性質に気付かぬまま、コボルト探しを始めるのだった。



場所は関所、薬村主と不死の群れとの戦いは続いていた。薬村主はその高い神通力から疲れ知らずで時間も忘れて戦っている、最初こそは苛立ちを感じてはいたが、今は力を振るい続けられることに高揚感を感じ始めていた。その為時折笑みを見せるといった様子で、無数の節のある大小さまざまな無数の腕を振るいに振るっていた。今は不死の群れもただやれるのみであったがそれが、相手を油断させるためだとは薬村主は気が付いていなかった。もし薬村主が慎重な性格であれば、その周辺の神通力量がどんどん増えて行っていることに気が付いたはずであるが、そうはならなかった。そしてその正面に一際大きな不死の個体が現れると、薬村主は最も大きな腕をその個体に振り下ろす。しかしその刹那、その自慢の腕の中ほどに激痛が走る。村主は腕を何か黒い塊で挟まれていることに気が付くが、気が付いた時には猛烈な力で腕を薬村主の身体を引きずり込まんとする力を感じ、 「_くっ」 と一声つくと、自らその腕を引きちぎる。そしてちぎれた腕は黒い塊に飲み込まれていく。それは腕を飲み込み終えるとさらに大きな塊となって、薬村主の方を向くと 『ガアアァァァ』 と猛烈な声を上げて進みだす。その姿をみた薬村主は、丸い球形になると跳んで逃げ出すのがやっとで、薬村主は猛烈な痛みと怒りと恐怖の感情に支配されながら 「_くそ、くそっ、くそーー!」 と叫びながら村の方へと逃げ跳んでいった。 そしてその上空では、 「_くくく、これは良いものを見たぞ。」 という声があったが、誰も気が付くものはいなかった。



時同じくして別の場所では、「_あなた、やはり関所に仕掛けた式は消されてしまったみたいね。」 「_そうか、何か勘のいい奴がいたようだが、そのせいだろうか?」 「_直前の会話内容からするとその可能性もあるわね。」 「_そうか、、、それだと、また仕掛けなおしても同じ結果になってしまうか。。。今しばらくは少量とはいえ神通力の消費は避けたいからな、関所はこのまま放置でよいだろう、それに、会話内容からすると、直接我らの危機となるような者でもないのだろう?」 「_そうね、でもコボルトの味方というだけだから、私たちの味方になるか敵になるか。。。」 「_そうか、しかし既に周りは敵だらけだからな今更増えてもさして変わらぬか。。。すまないな、お前にはつらい生活をさせてしまって。。。」 「_いいえ大丈夫よ。私にはあなたがいるもの。」 「_ふふふ、そいつはいい言葉を聞かせてもらった、さて、また次の戦いに出ることにしよう。その他の勢力の動きの確認は頼んだ。」 「_はい。」


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