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第2話:初めての町

サム達は村を出ると北の街道へと向かう、一行はサム、カゲトキ、ヌバタマ、ダイフク、サクラ、ウッド、とリャマが2頭だ。街道は整備されており、雪道でも安心して歩くことが出来るが、ダイフクやサクラは雪道を歩くのが慣れていないらしく、見ていて危なっかしい、いよいよ危なくなったら、鳥型にでもなってもらおう。



「_ウッドさん、ウリョシ町まではどのくらいなので?」 「_町まではずっと下りだからな、だいたい4日~5日だな。」 「_町はやっぱり人が多いのですか?」 「_ああ、兄姫村に慣れていると驚くだろうな。人の多さもだが、店も多い。」 「_それは楽しみですね。そういえば、サクラも町出身ですよね。都会っ子ですね。」 「_おいおい、サム、町程度で都会だなんて、言いすぎだぜ、町の上には都市も大都市も首都もあるんだぜ!」 「_首都!、うーん、あんまりと言うか、そんな人の多そうなところには行きたくはないですねぇ。」 「_なんだなんだサム、出版に携わるものとして首都の王立図書館への図書の収蔵は夢なんだぜ。」 「_サムさま、サムさま、わたしはリクスとそのお父上にあたる町主様と一緒に首都には行ったことがありますが、それはそれは、美しく整備された街並みでしたわ。」 「_お、リクス嬢と首都へ?その話今度聞かせてくれよ、”リクス道中記”のネタになるぜ。」 「_ご主人様、ご主人様がもし首都に行きますならば、ダイフクめもついていきまする。」 「_うん、大丈夫行かないから。」 と笑顔で返すサムに少ししょんぼりするダイフク、そしてほっとしたように見えるヌバタマ。 「_タマは人込みは苦手かい?」 「_どうでしょうね。わたくしなぞ、人の村に初めて入ったのも最近の話なので、その村より人が多いとなると想像がつきませぬ。」 「_まぁ僕たちが行くのは町までだろうさ、、、ウッドさん、今回の旅ではしばらく町に滞在を?」 「_そうだな、今は町までの食糧しかないからな、その買い出しと、あとはお前たちの装備の準備とかだな。」 



「_ゴブリンとコボルトでは装備を変えたほうがよろしいので?」 「_ああ、ゴブリンは基本的に耐衝撃性の高い防具が良いが、コボルトだと爪と牙対策が必要になる。」

「_防刃性があればよいので?」 「_ああ、あとは奴らは顎が強い、噛まれても大丈夫なような硬い防具が良い。あとはすばしっこいからな、近距離系の小型の武器が必要になる。もしくは弓で遠方から狙うかだ。」 「_ほうほう、いろいろ揃える必要がありそうですね。うーん、道具を揃えるって、気持ちが高揚しますよねぇ。でそれらの道具代はカゲトキから出ると。いいことずくめですね。」 「_おいサム、何だって買ってやれるわけじゃないんだぜ。あんまり高いのは選ぶなよ。というか安い奴。安い奴を選べ。お前らは、お前らだけでゴブリンをどうにかしちまったんだろ、自力でうまいこと戦え、なんとかしろ。」 「_サム様、わたくしは防具は既にありますので、、、」 「_いやいや、全揃えするよ。」と言ったのち小声で、「_神具なんて装備していったら、村の人に怪しまれるかもだろ、少なくとも最初は様子見だからとっておきは温存しておこう。」 「_はい、承知しました。」



「_あれ、下り坂が急になってきました?」 「_ああ、この辺から緩やかに下りが強くなる、あと数時間も歩けば急峻な山道に入る。だからサクラ嬢におかれましては、お気を付けください。」 「_はい、ありがとうございます。ウッドさま。」 「”ウッドさま”、、、」 「_山道か、山道にはなにか魔物や獣が出たりするので?」 「_ああ、この辺だとゴブリンと鷲と鹿ってところだな。」 「_そうか、タマにサクラ、気を付けるんだよ。」 「「_はい!」」



旅の道行きも楽しいものだが、そのすべてをサイドラインで過ごすわけにもいかない、サムは、出発に合わせて再Log Inしていたが、ある程度情報も聞けたし、今日はこれで失礼することにする。小声で「_タマにフク、それじゃぁまた夜に。」というとLog Outするのだった。



副業部屋に戻ると、急いでリビングへと向かう。ノドカが部屋の中をどたどたと走り回っている。最近はジャンプも覚えたようで、大きくしゃがんでそのまま勢いよく足を延ばして、少しだけ跳ぶということも繰り返していた。元気が有り余っているのだ、「のどか、散歩いこうか。」とサムが言うと、ウンウンと大きくうなずいている。かわいい。「_シホはどうする?」 「_私は夜のご飯の準備をしておきたいから、二人で行ってきて。」 「_はい、了解ー。」




○2月4日:日曜日:4時半起床、一行は山道のはずれの広場になっているところで一夜を過ごしている。真ん中には焚火が焚かれていた、サムが辺りを見回していると、ヌバタマがこちらにやってくる。「_サム様、只今わたくしとサム様の見張りの時間となっています。」 「_そうか、まぁ、夜中にこんな山道を歩くわけにもいかないからね。それにしても、、、静かだね。」 「_ええ。」 「_ちょっと道の方を見てくるよ。」 と言うと立ち上がり歩き出すサム。 山は急峻だが、その中を何度も折り返すように、道が石で組まれている。これなら、気を付けさえすれば崖から落ちるという事はなさそうである。 「こういうのって、インカ道とかいうのかな?」と独り言を言うサム。辺りは静かで、遠くフクロウの鳴く声が聞こえる。更に耳を澄ますと土の上や中をうごめく者たちの音がするような気がしてくる。辺りは濃い土のにおいが立ち込めている。サムは深く一度深呼吸をすると、皆が仮眠をとる場所へと戻る。そして、焚火をぼんやりと眺めながら、でも耳に神経は集中させる。という事をしながら夜明けを待つ。囲炉裏の火もよいが、焚火の火も落ち着く。



そうして、しばらく無為の時間をすごしたのち、6時になって朝食の準備をしながら、みんなを起こす。朝食は穀物を薄く伸ばして焼いたパンに干し肉と細かく切った野菜を煮たスープだ、この度では水は水筒からいくらでも出るので、荷物が軽くすみ残量も気にせず使えるからありがたい。ガマ様様だ。朝食が済んでしばらくすると、また移動を開始する。急峻な下りが長く続くので慎重に行こうとウッドが先頭を進んでいく。



○2月5日:月曜日:今日も山道、この辺りから、気候が変わっていくので、風邪などを引かないように注意とのことだ。



○2月6日:火曜日:唐突に山道の終わりが訪れる。この辺りから樹木は一気に減り温かくなる。いや、木陰がなくなる分暑さすら感じる。ここで、皆の衣装を夏用のそれに変えるがそれでも暑い。布に水を含ませてそれを首に巻いて進む。



○2月7日:水曜日:まず、海が見えてくる。塩の香りを感じる気がしてくる。ウッド曰く、今晩には町に到着するだろうとのこと、心躍る。



○2月7日:水曜日:20時サイドラインへ、場所は、、、どうやら町の酒場らしい、ウッドがキャベジとヘパリの薬草と酒のカクテルの作り方を店長に教えて、商売をしようとしていた。ヌバタマとダイフクは慣れぬ町の空気にそわそわしていた。カゲトキは酒を飲んでいた。



「_いやいや、無事についてよかったですね。」 「_おう、ゴブリンのゴの字も見えなかったとウッドが驚いていたぞ。本当にお前たち、ゴブリンに何をしたんだ?」 「_僕たちは”ゴブリン生活新書”に書いたように棲み分けを徹底しただけです。」 「_あの広範囲な森をお前たちだけでか?」 「_僕は式を使えますので、彼らの手を借りて何とかやりましたよ。他の村でも式がなくとも人手さえあれば、ゴブリンは知能が高いですからある程度は棲み分けができるはずです。」 「_、、、まぁ、いいことにするか。」

「_そのウッドさんは商売の話ですか?」 「_ああ、サムの酒場でよく売れたカクテルを売り込んでいる、もし町でも人気がでれば、また村で薬草を集めれば一稼ぎできるからな、最初は安く情報を売ると言っていたぞ。。。。おい、カクテル百珍でも作るか? サム。」 「_カゲトキもウッドさんも商売上手なようで、、、」



「_おい、ウッドが帰ったと聞いてきた、ウッドはウッドはどこだ。」 「_おお、ズブロンか、会いたかったぞ。」 「_てめぇこの野郎、俺から金を借りておいて姿をくらますとはいい度胸じゃねぇか。」 「_落ち着けズブロン、返す金はあるし、、、」 と ウッドはズブロンの肩を抱いて小声で囁く 「_儲け話も持って帰ってきた、また仲良くやろうぜ、おい。」 「_なんだとてめぇ、、、、その話は本当なんだろうな。嘘だったら承知しねえぞ。」 「_もちろん本当さ、その金で俺たち狩人をこき使った奴がいてな、そいつが証人よ。それにそいつらはお前の店の客にもなる。恩を売ってさらに金を儲けるチャンスだぜズブロン。今日は前祝だパーッとやろうぜ、兄弟。」



この日はしこたま飲まされた。




○2月8日:木曜日:4時半起床、サイドラインへ、Log Inすると視界が歪む、これは、、二日酔いか、頭痛や胃の不快感がないのは幸いだが、視界が歪んで酔ってしまいそうだ。だが、前日にズブロンの知り合いからコボルトを見せてもらえることになったので、行かねばならない。足をふらつかせながら、宿屋の入り口まで向かうと、けろっとした、ウッドとズブロンが、そして路上で寝ているカゲトキがいる。宿屋にいないと思ったら、、「_みなさん、おはようございます。コボルトを見せて頂けるとのことで、助かります。」 「_いや、いいってことよ、昨日もあったがね。俺はズブロン、町で防具屋を営んでいる。コボルト用の防具が欲しいなら、実物をまず見るのがいいからな。」 「_それにしても、こんなに早朝からで良かったので?」 「_ああ、コボルトを連れての狩りは早朝から行うからな。その前に会わねぇと夜まであえねぇからな。」 



「_コボルトを連れた狩り?」 「_そうだ、歩きながら話そう。コボルトってのは基本森の中を走り回っていて人になんか懐かない奴なんだがな、小さいことから飼いならすことで人に懐いて言う事を聞くんだ、それで、町の狩人は大体2~3匹は連れてるんだ。」 「_へぇ、面白い話ですね。でも、この町から兄姫村に来た方々はどなたも連れてなかったようですが。」 ああ、それはとウッドが話を引き継ぐ「_コボルトを飼ってるやつらは、町周辺で十分に狩れるから、わざわざ山を登ってまで村には行かないんだ、だから村に行くのは、稼ぎの少ない奴やその日暮らしの奴ばっかりさ。」 「_ああ、それで、みんな町に帰らず、リクス様に付いて行ったり、村に残ったりしたんですね。」 「_ああ、俺みたいに町の奴に金を借りてるやつも少なくない。リクス嬢に付いて行った奴はみんな上手くやったのさ。」 「_おい、ウッド、お前やっぱり俺の金を返さないつもりだったんじゃないか!」 「_おうおう、それは昨日話したろ。」とそのまま町の外まででると、



数人の人だかりとその周りをうろつく小さい影が目に入るようになる。「_よう、ズブロン、ウッド、そのあんちゃんかい、コボルトを見たいって奴は。」 「_ああ、そうだ、特に強そうなやつを見せてやってくれ、」 「_じゃあうちの奴だな。」 と後ろから大きな弓とハンドアックスを持った、190はあろうかと言う大柄な初老の男性が出てくる。その手には編まれた皮ひもがぶら下がっており、その先には、、



「_これは、、、犬!」 「_犬?なんだそれは、こいつはイノシシだって狩っちまう、俺のとこの自慢のコボルト、ハヤテ号だぜ。」 正直驚いていた、サムはコボルトはただ牙と爪の長いゴブリンだと考えていたので、こんなかわいい犬が出てくるとは思っていなかったのだ。でも確かによく見ると、完全に犬と言うわけではない、その後ろ足は太く二足歩行しているし、前足は大きく、物を掴めるくらいには発達している。そして顎は強く発達しており、聞けば、イノシシやシカの脚であれば、噛み折ってしまうらしい、でも、犬なのだ、絶望的ににモッフモッフなのだ。 「まじか、これは狩れない、こんなかわいいの狩れない。」と独り言をつぶやくサム。そして丁寧にコボルトの姿を拝見させてもらうと、狩人達は狩りに出かけて行った。



ちょっとこれは計画を練らないといけない。


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