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一億円当たったから彼女とだらだらしてみる。  作者: 西順


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春うらら

 彼氏というのも中々苦労が多いものである。

 学生時代であれば彼我のカップルに違いは少なく、金銭的余裕に差も少なければ、別れる理由は性格の不一致ぐらいのものだろう。

 しかし社会人のカップルとなると、そこに収入という今生における絶対的価値観が割り込んできて、更には結婚の二文字が肩に重くのし掛かってくる。

 社会人のカップルというのはカードゲームに似ている。

 日常生活において互いに様々なカードを見せ合い、あるいはジョーカーとして隠し、ポーカーフェイスの裏を読み、結婚の二文字を何時、どうやって切り出すのか、その駆け引きがその後の人生に直結している。

 ある者は結婚し、またある者は別れる。その先が天国か地獄かは分からないが、時には人生を分ける程の決断が必要になってくる。

 太郎はそんな岐路に立たされていた。


「うぅむ……」


 春うらら、燦々と朝日が降り注ぐリビングで、太郎はこたつを前に腕組みしていた。

 ここ数日は暖かくなり、こたつにも随分と電気を入れていない。それはつまりこたつの仕舞い時というやつだ。

 おあつらえ向きに外は雲一つ無い青空だ。今日こたつ布団を干してから布団を仕舞ってしまいたい。

 だがそれを決断するには太郎の肩にのし掛かるものが重い。

 何故なら、太郎は花粉症だから!

 花粉症で外に出るのも躊躇われるというのに、大きなこたつ布団を干した日には、それを回収したらおそらくくしゃみ鼻水涙は止まらないだろう。

 干したというのに更に布団に掃除機を掛けるという二度手間だ。太郎の腰も重くなるというものだ。

 因みに普段洗濯物を干す時はどうしているのかというと、ドラム型乾燥機付き洗濯機で洗濯から乾燥までやってしまうので外に干す事が無い。

 太郎が一億円当たって一番嬉しかったのが、このドラム型乾燥機付き洗濯機を買えた事だということは、譲も真友も知らない事だった。


「はあ……」


 だが結局はやらないという選択肢は選べないので、太郎は渋々マスクを着けるとベランダの窓を開けた。

 直後に目が痒くなって涙が流れる。両手が布団で塞がれているので、擦る事も出来ず、太郎はなるべく素早く布団を干すと、直ぐにリビングに引き戻り窓を閉める。


「はあ……」


 と嘆息するが今度はくしゃみが止まらない。どうやら体に花粉がくっついてきてしまったようだ。

 太郎は玄関まで小型の掃除機を取りに行き、そこで掃除機に全身の花粉を取らせるが、どうやら時既に遅し、だったようだ。花粉が付いたままリビングから玄関まで移動した事で、太郎に付いていた花粉が家中に撒き散らされてしまったらしい。

 結局太郎は午前中家の掃除をして終わった。


 昼にカップ麺を食べて午後は仕事。作成中のホームページのユーザビリティを向上させていく。


 一息吐いたと思えばもう夕方である。こたつ布団を干していた事を思い出し憂鬱になる太郎。

 しかし決断というものは時に大胆に行わなければならない。

 太郎は先程の失敗を教訓に、先に掃除機、しかも自分用と布団用に二台用意してから、ベランダの窓を開け、一気にこたつ布団を取り込んだ。

 窓を閉めると素早く自身に掃除機を掛け、それが終わるとこたつ布団にも掃除機を掛けていく。

 涙と鼻水は免れなかったが、掃除機を掛け終わる頃にはそれも治まっていた。

 第二ラウンドは太郎の勝利といえよう。

 時に決断は大胆でなければならない。だがこの教訓が生きるのが一年後であり、その時には既に忘れている事を太郎はまだ知らなかった。

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