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一億円当たったから彼女とだらだらしてみる。  作者: 西順


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花粉症

 スギやヒノキ等の花粉によりくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみ、流涙等を引き起こすアレルギー疾患の一つ。

 狭義ではくしゃみ、鼻水、鼻詰まりは季節性アレルギー性鼻炎。目のかゆみ、流涙は季節性アレルギー性結膜炎とされる。

 季節性というのは花粉の季節にだけなるからで、ハウスダストや動物の毛などの一年を通して引き起こされるものは通年性と呼ぶ。


「へくちっ」


 何やら可愛いくしゃみだが、それをしたのが男となると、可愛いと取るかキモいと取るかは受け手による。

 譲は自分の彼氏のそんなくしゃみを可愛いと思う女だった。


「花粉?」

「うん。今日は多いみたい」


 窓は閉め切っているし、部屋は綺麗に掃除されているというのに、花粉の奴はどこぞからか侵入してきたらしい。

 譲の服に付いてきたんじゃないか? と思うかもしれないが、玄関にある小型の掃除機で太郎によって全身綺麗にされたので、その心配はなかった。

 三月も後半、桜前線とともに花粉前線も上昇中のみぎり、花粉症の太郎が外に出る訳もなく、二人は太郎宅にて格闘アクションゲームをプレイ中である。

 実力的には五分五分で、中々の熱戦を繰り広げているのだが、度々太郎がくしゃみをしてポカをするので、戦績的には譲がリードしていた。

 一端休憩にしよう、と言うことになり譲が勝手知ったる彼氏の家、と冷蔵庫からペットボトルのコーヒーを太郎と自分の分を注ぐ。太郎の分を水で薄めるのも忘れない。

 コーヒーを持ってまだまだ出しっぱなしのこたつに戻ってくると、丁度太郎のスマホにLINEが入った。


「誰から?」

「鈴木さん」


 テーブルにコーヒーを置いて何気なく太郎に尋ねると、日本で二番目に多い名字を出された。

 え、誰? 鈴木さんって私の知ってる鈴木さん? と困惑する譲が視界に映ったのか、太郎が言い直す。


「まっつんの彼女だよ。チェリー、チェリー」

「ああ、智恵理ちゃん!」


 そう言えばあの子鈴木って名字だったっけ、と思い出すとともに、何故真友くんの彼女が私の彼氏のLINEアドレスを知っていて、普通に連絡取り合っているのか、新たな疑問が生じた譲。

 とりあえず彼女である私に隠さずに報告するのだから、後ろ暗い所はないのだろう、と思いたい譲だった。


「なんだって、智恵理ちゃん」


 それでもさりげなく気になるLINEの中身を探る譲。顔は平静を装って、コーヒーなんぞを口にしている。


「ああ、ゲームの事だよ」

「ゲーム?」

「ウチに来て以来ゲームにハマったみたいでさあ、何かオススメがないかってちょくちょくLINEがくるんだよ」

「そんなの真友くんに訊けばよくない?」

「微妙に合わないらしい」

「ああ」


 納得してしまう譲。ゲームであれ何であれ、趣味嗜好が合う合わないは大きい。

 譲にも過去にゲームが趣味の友人がおり、やらせて貰った事があるが、訳が分からないうちにゲームオーバーになってしまい、つまらないなあ、と思ったものだ。

 それが太郎と付き合いだしたら、いつの間にやらゲーム三昧の毎日である。デートも、ゲームで一日潰すなんて日があるくらいである。

 だから誰がどんなゲームを薦めてくるのかは、ゲームが好きになるかどうか重要なファクターだと譲も感じていた。

 実際太郎は譲とやる以外にも色々なゲームに手を出しているが、おそらく合わないだろうと思われるゲームは薦めてこないし、気になって薦められていないゲームをやった事もあるが、太郎が薦めたもの程大ハマりはしなかった。

 ワインソムリエならぬ、ゲームソムリエである。

 どうやら太郎という人間はそういった感覚に優れているらしい。webデザイナーとしてホームページ作りをしているが、どうやら好評であると聞き及んでいる。きっちり要望を聞いて、それに合わせて結果を出す、それが太郎という人間なのだ。

 譲が長々そんな事を考えているうちにLINEは終わったらしい。


「なんて返したの」

「いや、今このゲームやってるって言ったら、じゃあ私もやるって」

「は?」


 とテレビ画面に『new challenger』の文字が現れる。


「ほう」


 細められる譲の眼。口角が片方上がっている。

 その日譲と智恵理の熱戦は夜まで続けられた。


「何にする?」

「ピザで」


 即答する太郎。外も暗くなり、ゲームも一段落ついた所で、出前を取る事にした二人。太郎の中ではピザ一択で決まっていたようだ。

 4つの味が楽しめるピザとコーラを頼み、待っている間、だら〜んと二人で二郎と三郎にもたれ掛かりながらテレビのバラエティーを見ていた。


「タロちゃん的にはさあ、智恵理ちゃんってどうなの?」

「どうなの? ああ…………よく長続きしてるなあって思うけど?」

「は? 何それ?」


 想定していた反応と違った。「いや、別に」とか「なんだよ急に」とか反ってくるかと思ったのだ。

 智恵理は胸元の開いた服とか、素足の出たミニスカートとか着ているので、譲から見ても女を全面に押し出している。今日もタートルネックのセーターに裏地あったかパンツスタイルの譲とは大違いである。

 太郎も自分にもっと女らしい格好を求めているかと思ったが、譲のあては外れた。


「まっつんの彼女だから顔には出さないけど、ぶっちゃけちゃうと苦手かなぁ」

「そうなんだ」


 顔には出さないように胸を撫で下ろす譲。


「まあ第一印象のせいもあるんだけど、俺あの子に初めて会った時に、上から下まで値踏みされるみたいに見られたんだよね」

「ああ、でも多分それは職業病じゃないかな」

「職業病って、鈴木さん何やってる人なの?」

「スマホの販売員」

「ああ〜、確かに足下見てそうだなぁ」


 納得する太郎だった。


 テレビを見ながら出ているタレント達を好きか嫌いか言い合っているうちに、ピザが届き、食べ終わったらまたごろ〜ん。またゲームを始めると『new challenger』の文字。今度は智恵理だけでなく真友まで参戦してきて、四人での対戦となった。

 ゲームは深夜まで続き、譲は太郎の家にお泊まりしていく事になった。

 太郎の部屋で布団にくるまれながら、譲はなんとも正しい土曜日の過ごし方をしたものだ、と思いつつ眠りに落ちたのだった。

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