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一億円当たったから彼女とだらだらしてみる。  作者: 西順


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14/29

 おかしい。

 私、日下 三智花は彼氏の山本 真樹と結婚式の打ち合わせに来ている。

 対面に座るウェディングプランナーの野中さんと、資料を挟んで横並びに座っているのだが、さっきからマーくんの様子がおかしい。

 午前も早々にここへやって来たから、この打ち合わせの後、街をブラつきがてら昼食でもしようと思っていたのに、先輩に誘われているから、と断られてしまった。

 先輩とは誰なのか? 日曜の昼から呼ぶなんて何の用なのか? 訊いてもはぐらかすばかりだ。

 決定的なのが貧乏揺すり。マーくん自身は気付いていないが、彼は嘘を吐く時貧乏揺すりをする。おそらく嘘がバレないかと気が気じゃないのだろう。

 では一体どんな嘘を吐いているのか。彼女に隠し事といったら『浮気』以外に考えられない。

 もうすぐ結婚だと言うのに浮気!? 最低だ。

 マーくんは今の世の中では珍しくなった学歴も会社も良い優良物件だ。

 群がる他の女共を押し退けてやっとの思いでゲットしたと言うのに、結婚直前で横取りされたらたまったもんじゃない。こんな優良物件、今後二度と手に入らないだろうから。

 絶対にその女を特定して排除しなければ!


「ではこのプランで進めていってよろしいでしょうか?」

「はい。お願いします」


 マーくんと声が揃っちゃった。

 それなのにマーくんはその事に気付きもしなかったのか、直ぐに立ち上がるとこの場を急いで後にしようとする。

 そのマーくんの腕をがっしり掴む私。


「マーくん。ちょっとだけお時間頂いてもいいかなあ?」


 おかしい、それと悟られないように笑顔のはずなのに、マーくんの顔がちょっと引きつっている。だが今は、浮気相手が誰なのか追及する方が先だ。


「で、日下が一緒に着いてきちゃった訳ね」


 太郎宅の玄関前で、言い訳をする真樹の姿があった。その腕には、がっしり三智花がしがみついている。

 その光景に嘆息する太郎。


「どこも一緒だな」


 そう言いながら太郎はリビングの方を振り返る。


「やった! 私いちばーん!」


 リビングから聞こえるのは真友の彼女、智恵理の声だ。


「もしかして真友さんも?」

「逃げ切れなかったみたい」


 男二人顔を見合せ嘆息するのだった。


「お邪魔しまーす」

「いらっしゃーい」


 リビングでは、こたつに入った譲、真友、智恵理が出迎えてくれた。

 譲が直ぐにこたつを出て「お茶煎れるね」とキッチンに向かう。その途中で「だから言ったでしょ」と太郎に小声で話し掛けいた。譲にはお見通しだったらしい。


「まあ、とりあえず座ってよ」


 嘆息しながらこたつを勧める太郎。真樹と三智花が来た事で、三面を2・2・2のカップルで座るような形になった。


「こたつなんてあるのね」

「日本人といったらこたつだろ」


 三智花に何故かドヤ顔をする太郎。


「それに結構綺麗にしてるのね」

「まあね」


 太郎の家は男所帯にしてはとても綺麗にされていた。


「譲も大変ね」

「何でジョーちゃんが大変なんだよ?」

「え? 枯石が掃除してる?」

「当たり前だろ」


 そう言われて三智花は改めてリビングを見渡すが、チリ一つ無く綺麗にされている。


「A型なの?」

「いや、Oだけど。まあ言いたい事は分かるよ。俺、ハウスダストアレルギーなんだよ。だから綺麗にしてんの」

「ああ、なるほどね」


 得心のいった三智花。がその斜向かいに座る真友がニヤニヤしている。それが太郎の目に留まる。


「なんだよまっつん」

「いやいや。別に」

「え? 他に何かあるの?」


 噂好きのおばちゃんのように話を聞きたがる三智花。それに嘆息する太郎。とさっきからすまなそうにしている真樹だった。


「実はこのマンション、ペット可なんだけどさ」

「へえ、そうなの? なら飼えばいいのに」

「太郎もそう思ってこのマンションを借りたんだよ。ところがいざペットショップに動物見に行って、可愛い仔猫を抱き上げた瞬間、くしゃみと鼻水、目のかゆみが止まらない」

「それって……」

「太郎は動物の毛アレルギーだったのです!」

「あっちゃー」


 言いながら太郎を満面の笑みで見る三智花。太郎は苦々し気な顔をしている。真樹の顔が更にすまなそうになる。


「誤算だったよ。動物なんて触れてこなかったからな。犬猫の代わりに爬虫類を飼おうかと思ったらジョーちゃんに止められるし」

「爬虫類は無理!」


 太郎の提言に全力で首を横に振るう譲だった。


「太郎って何気にアレルギー多いよな。花粉もそうだし、あとなんだっけ?」

「蛾」


 太郎の一言で口に含んだコーヒーを吐き出しそうになる三智花。それを無理矢理止めてむせてしまう。


「ちょ、蛾って、笑わせないでよ」

「いや、意外と多いらしいぞ、蛾アレルギー」

「ええ、嫌だなあ、医者に行ってあなたは蛾アレルギーですって言われるの」


 三智花の言に頷く真樹、譲、真友の三人。とここで、会話の輪に入らずさっきからずっとレースゲームをしていた智恵理が、


「私も蛾アレルギーですよ」


 と視線をテレビから逸らさずボソリ。


「ほらあ、いるんだよ、蛾アレルギー。略して蛾レルギー」

「枯石と同じ蛾レルギーだなんて、同情するわ」

「日下の中の俺ってどういう人間なんだ?」

「奇人変人の類ね」


 即答する三智花だった。


「しっかしさっきからずっとゲームしてるわね? 好きなの智恵理ちゃん?」


 テレビから目を逸らさない智恵理がさすがに気になり始めた三智花が尋ねる。


「いえ、初めてやったんですけど、どうやら私、このゲームの才能があったみたいです!」


 キリッと真剣な顔で答える智恵理だが、その視線はテレビ画面の中で、自キャラが操るレースマシンから離れていない。


「へえ~」


 言ってコントローラを取る三智花。30分後には女性陣三人でわーきゃー盛り上がってそのレースゲームをしていた。

 そしてその輪から弾き出される男性陣三人は、テレビとは反対側のリビングの片隅に。


「なんかすみません」

「俺もすまん」


 謝る真樹と真友に太郎は、


「いいよ。ウチもジョーちゃん来てるし。しかしどうしようか。集まってホワイトデーの事話そうと思ってたのに、出来なくなっちゃったな」


 男三人腕を組んで悩む事数刻、


「ま、それはまた今度で」


 と真友。


「またあの居酒屋でするか」


 と太郎。


「賛成」


 と真樹。

 その日は六人で夜までレースゲームで盛り上がった。

 その帰りに智恵理にせがまれ、ゲーム機ごとこのゲームを買わされた真友がいた事を追記しておく。

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