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一億円当たったから彼女とだらだらしてみる。  作者: 西順


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白くま

 譲は日曜の朝からボーッとしていた。


「ちょっと、早く食べちゃってよ」


 譲ママに言われてハッとした譲の前には、半分程食べたまま放置されていた朝食がある。パンにハムエッグにコーンスープ。譲の家の朝食は洋風だ。


「あ、うん」


 生返事で朝食を再開する譲の前に、譲ママが座る。リビングでは譲パパと也哉もテレビを見つつ耳を傾けていた。


「何よボーッとして、仕事? それとも彼氏?」


 心配そうに訪ねてくる譲ママに、


「何でもないよ」


 と返事をするのだが、


「その感じは彼氏ね。何、あの子まだ仕事したくな〜い。とか言ってるの?」


 としつこく食い下がってくる。


「そんな事ないよ。昨日行ったら仕事してたし」

「あら? もう仕事見つけたのね。なら………もしかしてブラックとか?」


 剣呑なのにどこか楽しそうな譲ママ。


「さあ。ブラックかどうかは分からないけど、個人受注みたい。在宅勤務みたいだし」

「ふ〜ん。何の仕事なの?」

「webデザイナー」

「ウェブデザイナー…………って何やるの?」


 嘆息する譲。パンを一口かじり話を続ける。


「色々あるけど、タロちゃんはどこかの会社のホームページ作ってるよ」

「ああ、そういう事やるのね。あの子、そういうのが得意な子だったのね」

「得意…………なんじゃない? 仕事がくるぐらいだし。本人は大学の時ちょっとかじった程度だって言ってたけど」

「何? 歯切れ悪いわね」


 譲の勿体ぶった言い方に譲ママが難癖つけ始めた。

 そしてまた嘆息する譲。スープを一口飲んでから話を続ける。


「いや、仕事が回ってきた理由が、タロちゃんが宝くじが当たったからなのよ」

「は?」

「ほら、高額当選者が作ったホームページなら、何か縁起が良いモノを呼び込みそうじゃない」

「ああ、確かに」


 と譲ママだけでなく譲パパに也哉まで納得しているので、太郎を選んだ人間は中々の慧眼だったのだろう、と譲は感じた。


「それで、何か問題あったの。あ! 一億円当たった事が周りにバレて面倒事が舞い込んできたって事?」

「いや、1000万円当たったって事にしてるみたい」

「そう。じゃあ何が問題なの?」


 譲ママはどうやっても聞き出したいらしい。

 三度目の嘆息をする譲。ハムエッグを食べながら話を終わらせに掛かる。


「いや、だから仕事してたタロちゃんの部屋のドアを、バーン! ってデッカイ音立てて入っていって、タロちゃんを驚かせちゃったの」


 それを聞いた譲ママは、無言で譲が食べ終わった食器を片し、キッチンで洗い物を始めるのだった。


 だがそれは譲と太郎にとっては大問題だ。太郎が仕事を始めた事ではなく、大きな音を立てて部屋に入った事がだ。

 それは太郎の嫌なトラウマを呼び起こすのに十分過ぎた。

 譲が入って来た瞬間、体を丸めるように恐がっていた太郎の姿が、1日経った今でも譲の脳裏に焼き付いている。太郎自身は大丈夫と言っていたが、あれを見せられた譲の方が大丈夫じゃなかった。

 とりあえずチーズケーキをホールで買って太郎の家まで来てみたものの、会ってくれるだろうか? と心配が先立つ譲。

 LINEで『今玄関。会える?』とメッセージを送って見ると、返信は直ぐに帰って来た。『どうぞ』

 合鍵で玄関のドアを開け、「お邪魔しま〜す」と何故か小声で呟き、ドアを開ける音も静かだ。

 リビングのドアも静かに開けると…………くまが居た。白くまがこたつに入りながらつぶらな瞳でこちらを見ている。


「いらっしゃい」


 白くまの斜向かいで太郎もこたつに入ってテレビを見ていた。

 状況が理解出来ず譲の視線は太郎と白くまを交互に往復し、そして太郎の肩が笑いを堪えるように揺れている事に気付いて理解した。


(あ、これどっきりだ)


 その瞬間その場に崩れ落ちる譲だった。


 譲の対面に白くまがいる。


「どうしたの? こんなデッカイ白くま」

「ネットで見つけてさ。その瞳が僕を買って、って訴えているようでついね」


 確かに、何かを訴えている感がこの白くまにはある。だがデカイ。私と身長代わらないんじゃないだろうか? マジマジと見てしまう譲に、ホールのチーズケーキを切り分けもせずそのままフォークで食べている太郎が、


「触ってみる?」


 と進めてきた。


「う、うん」


 太郎が譲と太郎の間にデカイ白くまを置いてくれる。

 触ると、ふわっふわである。


「おおお」


 思わず低い声が漏れる。

 更に抱きついてみる。大きいからだろう、白くまは優しく譲を受け止め、譲はふわっふわに包まれたのだった。


「ふおおおおお!」


 そのまま顔を白くまのお腹にすりすりする譲。


「うわあ!? 二郎が!?」

「タロちゃん! この子頂戴!」

「嫌だよ」

「えええ」


 その後も「欲しい」「あげない」の押し問答は続き、譲の家では置く場所に困る。となったのだか、譲が太郎の家に遊びに来た時には二郎を独占する日々が続き、結局、黒くまの三郎をお迎えする形で太郎はこの問題に終止符を打ったのだった。


 ドア? 何の事? 二人は今日も今日とて仲が良い。

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